【一章】第二十話

【ギルドホーム】

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「エッエエエエ…SランクとAランクを同時ですか?」

 モモレンとミカをダンジョンから連れてきたリキッドは、早速ギルドに登録する事にした



 Aランクは中々出ない、それがSランクまで同時に連れて帰って来るのは前代未聞だった


「まぁな?コッチのSランクはこのまま所有権を維持する」


「そっそうですよね?手放す訳ないですよね?……でっではこちらのAランクはギルドに移譲で良いんですか?」



「あぁ、そうだな但し、買い戻しだ、幾らになる?」



「買い戻し……そうか、リキッドの奴、ゴールドも近いからな」



 殆どしたのホールに探索者がいるので、上の階のギルドーカウンター周辺には他の探索者は余り多くはないがそれでも騒ついた



 買い戻しとは一旦奴隷の所有権を移譲するが、それを有償で支払う事を意味する



「そうですか…ちょっと待ってください?」


「現在のAランクは……大金貨7枚(約700万)になります」

「随分上がってるじゃないか?」


「最近Aランクはあんまり出ないんで、仕方ないんです?」


「分かった…カードで支払う、あっそれとレンタルのミ……鬼岩和泉だが、これも一緒に買い取る事にした」



「あっまたパーティに戻すんですね?」


「あぁナルミが居なくなったから前衛が必要なんだ」


「成る程……鬼岩和泉…Bランクですね、金貨6枚(60万)になりますよ?」


「分かった……じゃあそれもカードで頼む」



 ギルドカードをマジックバックから取り出すとリリーに手渡す


 探索者は他の街や国に移動する事も有るので、ギルドに預ける事も可能だが、自分で管理するのが一般的だ

 またキャッシュカードのような機能も持っているので、支払いにも利用可能だった



「はい、支払いは一括ですよ〜?」

(ローンなんて無いだろう?なに言ってんだ?)


変な顔で見られてる事に気がついたリリーが


「あ、最近奴隷街に出来たメイドカフェでそんなセリフがよく使われてるんですって?」


「へぇ…メイドカフェ?何だそれ?」

(それは…行かねばなるまい)



 探索者であるリキッドは惚けとぼけながら絶対に行こうと心に決めた



「なんでも…メイドさんの格好したお食事する所?って聞きました………良かったら今度…どうします?」



 チラチラと覗くようにこちらの顔をみるリリーに



「……あっああ、是非誘いたいなっいっ何時いつにする?」


 その瞬間に背中に何かが刺さったような気がしたリキッドだったが………どうにもならない

 最後のダンジョンに行く前の日リキッドとリリーは既に良い関係になっていたので、いきなり奴隷にだけ優しくして、王国民を裏切ったら、怪しまれるに決まっている



「そうですねえ…明後日なら1日空いてますよ?」


「分かった……じゃあ明後日にここの正面で待ち合わせしようか?」


「はい、じゃぁコレカード返しておきますねっ?」

(Sランクまで連れて来るなんて、もうゴールド待ったなしね、絶対に離さないんだから?)



 瞳の奥がギラギラしている事に、経験不足なキドは全く気が付かなかい



「それじゃ…お前……たち…も?」



 リキッドが振り返ると

 明かに不機嫌な2人の美女と楽しそうな顔する1人のチビっ子とオロオロするジジイが居た


 ミーコがフゥゥゥと大きく深呼吸してから、ツカツカと歩き始めると



「鬼岩和泉です」

「はい、28才のナルミさんの元お嫁さんの鬼岩さんですねぇ?」


 嫌味を存分に言いながらカードを確認させる


「なんでそんな事言うの?知ってるでしょう?……ボケてるの?」


 コメカミをヒクヒクさせながら最後に小さい声で刺をチクッと刺すミーコ


「いえいえ〜旦那さんが死んじゃったばかりなのにもう新しい人探すなんて私には出来ないなぁ〜って、同じ女として尊敬してますよ?例え奴隷だとしても?」


「っく……まぁ、いつもダンジョンで一緒にいれば……そういう気分になる事も有るかもね?」



 そういってリキッドの腕を抱きしめて挑発するミーコに



「ちょっっと?奴隷の癖に気安いんじゃない?そう思いません?リキッドさん?思いますよね?」



「あら?これくらい軽ーーーーーーいスキンシップですよね?リキッドさん?」



「え?え?え?………」



 どうしたら良いの?

振り返るがモモレンはなぜか冷たい笑顔で微笑むだけだし

ビリケンはもう帰りたそうだし、

チビっ子はお腹抱えて笑ってる



 必死にリキッドの過去を探した

どう見てもリキッドはキドよりモテモテだと思ったからだ

修羅場での対応もきっと何度かあった筈だとそう思って必死に記憶を探しに行った




 ………そこで見たものは…………数人の女性と器用に付き合い、修羅場など全くなく、

 そしてその中にはまたしても………今より若いミーコがいた




 ドサリ




「え?ちょっとリキッド?」


「リキッドさん?大丈夫ですか?」


「おっおい泡吹いてるぞ?水持ってこーい」


 まさか突然倒れるとは夢にも思わなかった女達と、後ろで待っていたビリケンたちも流石に慌てた






【宿屋】

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「う〜ん、う〜ん」



 ベッドで何かにうなされるようなリキッドを見て少しだけ心配そうにミーコが、モモレンに話しかけていた



「熱は無いみたいだけど…本当に後は任せて大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ?よく弟もこうやって面倒みてたし」



 大人しくベッドのそばに椅子を置いて座るモモレンが振り返って笑顔で伝えるとビリケンも



「そうか、すまんなぁ、俺もダンジョンから戻ったらなるべく家に早く帰らないとキミコが心配するんだよ、こないだのナルミの件もあったしなぁ…」



「私も…和美が寂しかってる筈だから…本当にごめんね」


「大丈夫大丈夫、ミカさんも訓練所に登録するんでしょ?目が覚めたらちゃんと伝えとくから安心してね?」

(因みにモモレンは予想以上に基本ステータスが高いので必要無いと判断された)



「私は別に……まぁ……あの受付嬢の様子を見ればその人がどれだけマシかってのはよーく分かったけど…」

(あの女、いつか絶対ぶっ飛ばしてやるわ…)



 リキッドが倒れた後ギルドカードの登録を済ませたミカは年齢詐称だと言われて、

 奴隷の身分の為強く言い返せなかったミカは魂からリリーを呪った



 リキッドは直ぐにギルドお抱えの治療師に診て貰ったが特に異常はないと言われ、

 常宿に運ばれた、所有権を持つ者に奴隷は一切の反逆行為ができないので介護も任される

 リリーはまだ仕事中のため、ギルドを離れられないのが悔しそうで、それを見たミーコは高笑いしていた



「それじゃぁ、私たちは行くから、後お願いね?」

「次のダンジョンは一旦色々話してからにしようって伝えて置いてくれな〜」

「私しも、直ぐに行けるようになってやるんだから、待ってなさいよ?」



 ぎゃあぎゃあ騒ぐ3人が部屋を出て行こうとした時に、ミーコだけが振り返えり、モモレンに何かを耳打ちすると



 モモレンの顔が真っ赤に染まり

「みっミーコちゃんっ!介護しかしないからっ!」


「あら?大人の介護したって良いんじゃ無い?」


「馬鹿っ知らない!」


「はいはい…キッドは奥手だと思うよ?なんせ………まぁ年上になった私の助言だから、じゃあね〜」




 何やら意味深なことを言い掛けたが、モモレンは既に聴こえていなかった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る