【一章】第十七話
テントの2人
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
モモと2人で寝るには広いテントの中でイズミは全く眠れていなかった
(………眠れない
一度に色々起こり過ぎだよ………5年も何にも無かったのに……
キッドがナルミでそれがリキッドさんになって…………オッさんはビリケンで……モモが突然召喚されて……ダンジョン攻略して解放する…………そりゃ嬉しいに決まってる…………でも混乱する………歳くっても………私は成長してないなぁ……)
「ミーコちゃん…起きてる?」
「えっ?うんっモモもまだ起きてたの?」
「……うん」
「まぁ、いきなり異世界召喚されたら中々ね…」
「……そうだね…………ねえミーコちゃん」
「なーに?」
「キッド君と何かあった?」
「なな、なっ何にも無いよ!」
慌てて否定したがキッドとは本当に何も無いので、そう伝えるが、モモの顔は全く信用して無いとわかる
「……………」
「本当だって、キッドとは何にも無いからっ!」
「そう…なの?」
「あいつがこっち来てまだ数日だよ?私は人妻だったんだし…何にもある訳無いじゃない」
「………でも…その…1日だけキッド君だったんでしょ?」
「だから何にも無いって…気が付いたら居間で寝てたから、布団に入れただけっ!本当だよ?」
「そっか…そっかあ……ごめんね…変な事聞いて」
「いいよ、さっさと寝ないと…交代の時間来ちゃうから…もう寝よ?」
「うん……おやすみ……………………」
(…………はぁ……困った…此処に来る途中…こっち見てた…絶対見てた…………余計な事……思い出したり………………してないよね?)
安心して眠るモモを見ながら誰にも言えない秘密を
どうやって墓まで持って行こうか悩み続けるミーコは結局、交代の時間まで眠れなかった
【テントの外】
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「はぁぁぁぁああぁぁぁ……」
「……でっかい溜息つくなよ」
「だってよおぉ……あのモモレンとミーコが直ぐそこで寝てるんだぜ?一緒に寝れないなんてどんな罰ゲームだって話だろ?」
「お前の為に付き合ってんだぞ?というかビリケンにはキミコさんが居るだろ、バチが当たるぞ?」
「ソレはソレ、コレはコレだろお?………なっ?ちょっと覗いて見ないか?」
この阿保は……俺がそんな事許す訳無いだろうが……
「ビリケンは交代の時間まで、ずっと黙って火の番してるように」
「っ!っ!…」
その後、モモレンとミーコが来るまで強制的に大人しく火の番を続けるビリケンはとても悲しそうだった
【ダンジョン】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一晩開けてダンジョンに戻ったリキッドたちのパーティは、
モモレンにダンジョンを体験させる為にダンジョン5階層をゴールに設定して探索を開始した
「昨日はイズミ…ミーコ……どっちで呼んだら良いのかな?」
「そりゃ……ミーコのが…良いかな」
少しだけ考えたミーコがそう言うので、ミーコと呼ぶ事に決定する
「じゃぁ、昨日はミーコが1人でやったから、今日は俺がやるよ」
「駄目よ、探索者が奴隷に任せないなんて、他の人が見たら怪しむでしょ?」
「それもそうか……じゃあビリケン頼む」
「スライム全部か?……年寄りはもう少し労っては良いと思うんだけどなぁ……」
「まだ、モモのスキル分かってないんだし、いきなり戦わせる訳にはいかないでしょ?先輩面するチャンスなんだから、さっさと行きなさいよっ」
「はいはい…」
やる気無さそうなオッサンにモモレンが申し訳なさそうに頭を下げる
「ごっごめんねビリケンさん」
「よーっし!俺が華麗にスライム倒す姿をちゃんと見てろよーっ!」
「それにしても…水色とか黒色とか…色んなのいるのねえ?」
「ね?私も初めは結構驚いたのよ」
張り切るビリケンの姿は全然見て貰えず、モモはミーコとおしゃべりに夢中になっていた
【ボス広間前】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ヒーヒーゼーゼーと大袈裟で五月蝿いビリケンが全ての雑魚を倒した事を確認し、ボスの広間の前で昨日のように奥には入らないよう注意してから全員で入ると、
昨日と同じくユニークエルダーの名前をもったスライムが現れ、何事もなくアッサリと倒すが……昨日のような輝きはなく、白い球体は曇っていて、スキル無しだと一目で分かる物だった
「あれ?昨日と全然違うね?」
「これは…間違いなく雑魚だなぁ」
「聞いてた話しと違うね…」
「……マスターが手を打ったって事だろう、こんな低階層でSランクが沢山出されたら、色々困るんじゃないか?」
「そっか……攻略禁止されてるし…あんまり気にした事無いけど…マスター居るに決まってるよねえ」
(こんな作為的なダンジョンにマスターが居ない訳ない…モモレンと合流出来ただけでも、ツイてたって考えるべきだろうな)
「まぁ、予想して無かった訳じゃない、次の階からは普通にやろう、モモレンは今回は見てるだけでいいから必ず誰かの後ろにいるようにしてくれよ?」
「…うんっ!」
そう言ってリキッドの直ぐ後ろに着くモモレン
元々リキッドは後衛なので………自然とこうなる、それを苦笑いでみるミーコと面白くなさそうな顔をするビリケンと微妙にデレデレなリキッド達はダンジョンを進みはじめた
◇
【ダンジョン4F】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
出現モンスター………スライム、コボルト、ゴブリン
ここはとにかく数が多い、
ゴブリンのフロアも数は多いがここは種類も増える
挑戦目安は、3Fで雑魚のユニークゴブリンを倒せるかどうかになってくるが、
元々20階層をメインフロアにしているパーティには準備運動のようなものだった
前衛のイズミと中衛のビリケンが前方を陣取り、
後衛のリキッドが雑魚でも仲間が嫌がるスライムを倒しながら先へと進んでいく
殱滅する必要は無いので、ボスの広間へむかって最短を突き進んでいくとユニーク混じりの集団がボスの広場前を占拠していた
「ひぃ、ふぅ、みぃ……いっぱいいるなぁ」
「数え方オヤジくさいよビリケン」
「なっなんだとお!」
「まぁまぁ……30匹ぐらいいそうですね」
「じゃ、ここは俺がやるか」
剣の武器を主体とするミーコとビリケンは多数を相手にするのに向いていない
リキッドが前に出るとモンスターの知覚できる距離より離れた所で構える
(確か………こうだよな?)
ライフルを現代の銃でいう所のオート/セミオートのようにモードを変更するスイッチを切り替えて銃を構えると、銃口の前に小さな光の弾が無数にリキッドの前に留まる
「ふわぁ……何これ……」
「便利だよな…その武器…いったい幾らしたんだろうな?」
「…………というか前より数多くない?」
ミーコがナルミと結婚したのはつい三ヶ月ほど前、その時みた数の倍は余裕であった
「……一撃だ」
記憶の中のリキッドがいつも最後に言うセリフを敢えて言う、何故か分からないがその方が調子が出る、勘みたいなものだった
音も無く魔物の数の三倍は超えそうな光の弾が流星群のようになってユニークも雑魚も纏めて穴だらけになる
「……まっ4階ならこんなもんだろ?」
「「「・・・・・・」」」
((絶対前より強くなってる気がする))
(キレイだなぁ…)
以前のリキッドを知る2人と以前のリキッドを知らない1人はそれぞれ別の理由だが、無言になっていた
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