【一章】第十六話

【山の中のキャンプ場へ】

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ダンジョンから一度外に出たリキッド達は、整備された魔物の領地の境界線へと向かう道から外れ、森の中に入って行く、木漏れ日の中を、樹木につけられた印を頼りに歩みを進めていくと、森の中に小川が流れている、森の小川に沿って上流に進むと山への登山口となっていた



<閑話休題>

 山で暮らす狩をする民も居る、そんな山の民も時々奴隷をレンタルして行く時もある、ギルドカードで生死が分かり、嘘は付けないし、奴隷の逃亡を許せばレンタル代が加算され続けるので、山の民はきちんと期間内に奴隷を返しにやって来る、王国での扱いよりはずっと良いので奴隷の中では人気の仕事だった

<閑話>



 欝蒼うっそうと繁る草木を避けるように小川に沿って山を登ると、陽の当たる拓けた場所があり、そこはモンスター等が近付けば分かるように、山の民が宿泊用に設けた結界が張ってある、リキッド達はそこの場所を借りてキャンプを設営する為に向かっていく中……キドは混乱していた



(いっいずみさん…いや、いずみがミーコって…………なっなんで俺は夜の事覚えてないんだよおおっ!)



 ふと、振り返って見ると、後ろを歩くミーコ達は久々のモモレンとの再会に喜んでキャッキャッしていた……女子高生だと思っていたミーコは大人の女性になっていて、仕事の先輩でいたら是非叱ってもらいたい上司ナンバーワンだ



 ショートカットから伸ばそうとした髪は、少し短めのポニーテールを作れるぐらいになっていて活発そうな雰囲気によく似合っていて


 革の胸当ては思った以上に肌の露出が多くて、どうしても胸の方に目が行ってしまう……



「…どうしたの?」


「いっいやっ何でもない!」


 ミーコに声をかけられて慌てて正面に向き直すリキッドは、王国からダンジョンに向かう途中の野宿で、


“え?…じゃあ…来ないだの晩も?“


 って言われた時、実は必死に思い出そうとしたキッドだが自分が体験した事で記憶が無い事まで思い出せる筈もなく、朝起きたら隣りで寝てる顔しか思い出せなかった



 1人悶々としながら歩いていると、ビリケンが近くにやって来た



「なっなぁ?俺たち親友だよな?」


「………何だよ?」



 嫌な予感しかしない



「お前…ほっ本当はちゃんと覚えてるんだろ?……ちょっとで良いから教えてくれよ……なっ?親友だろ?」


 細い目を垂れ目にして聞いてくる姿はもう完全にダメ親父そのものだ…


 (それを覚えて無いから余計に悔しい思いしてるのに…この阿保は………)

 やっぱりボコッてやろうとしたリキッドが、

ビリケンの襟首を掴もうとすると下からドンッ!と音がし



 次第に顔が青ざめていくビリケン



「………ビリケン?どうした?」



 ゆっくりと腰を下ろすビリケンの足下を見ると、ビリケンの股にイズミの足が後ろから綺麗にメリ込んでいた



「このヘンタイッなに聞こうとしてるの!」


「ひゃあぁ……ミーコちゃんっなんて事を……だっ大丈夫ですか?」


「ぉっ……ぉっ……つっつぶれ………」



 ミーコが短気をだして、

 ビリケンが怒られて

 モモや俺がそれをフォローして


 この異世界にきて初めてホッコリした4人(ビリケン意外)だった




【キャンプ場】

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 リキッドが持つマジックバックには、500Kgまでの容量がある

ダンジョンに来るまでに野宿が必要になるし、20階層まで降りると途中のセーフティゾーンで一泊する事もあるのでキャンプ道具は探索者にとっては必需品なので常に用意してある



 テントを出し、保存食を出し、

ミーコとモモレンに料理を用意してもらう事にして

いまだにヒョコヒョコ歩くビリケンとテントを用意しする事になり組み立てていく


 大型のテントは6本の支柱を組み立てる丸型となっていて大人が最大6人まで入れるので余裕の大きさがあった



 テントの前で焚き火を用意し、保存食として用意した骨付き肉(定番)を直火で焼き、小川から汲み取った水で作ったスープを食べながら、俺たちは話を整理し始めていった



最初に口火を切ったビリケンがミーコに



「まず、一番気になっているのはミーコだ、お前確かリキッドに召喚された時、確か23才って言ってたよな?一体、どういう事なんだ?」


「………なに信じてたの?ネットで本当の年齢なんて言うわけないじゃない?相変わらず馬鹿ね」



「わっ私…本当の年齢言っていた…言っちゃダメだったんだ……はは…は」



「ほら〜モモレンみたいな子だって居るんだよ!この嘘つき女!」



「モモは初心者だったでしょうが!嘘つき女ってなによ!アンタだって10才以上サバよんでた癖に人の事言えないでしょうが!!」



「うっ………俺は……良いんだよ……」



「何でよ!何で私がダメでアンタは良いのよっはっきり言いなさいよ!」



(あぁ……ついこないだまで、こんなやり取りよくしてたなぁ)

 2人のやり取りについ聞き入っていると



「キっキッド……そろそろモモの話をしないか?(泣」



「ん?夜は長いんだ…お互いわだかまりはちゃんと払った方が良い、お前が年を誤魔化した事を怒ったんだろ?ちゃんと話せよ」



「そうよ!ちゃんと言いなさいよっ!」


 リキッドに話せと言われたビリケンは……


「くっ……おっ俺が……」


「「「俺が?」」」


「俺が年、誤魔化したってだれも傷付かないだろうがっ!」


「「「あっなるほど」」」

「馬鹿やろーーーーー!」



 思わず2人の女性が納得し、涙腺が弱くなったビリケンは誰もいない森の中に走っていった



「さて、そろそろ真面目な話をしましょうか?」

「え”?ビリケンさんの事、探さなくていいの?」



 あっさりビリケンを切り捨てるミーコと異世界に慣れてないモモレンは素直に心配した



「あいつ、この世界でもう10年やってる最年長の戦闘奴隷よ?、こんな普通のフィールドなんて何にも怖くないわよ」



「じゅっ10年………本当に……帰れないんだね……」


「何かの間違いじゃないか?って…誰だってそう思うよな?でも本当の事なんだよ」


「モモ……本当にごめんなさい……私が誘ったせいで取り返しがつかない事しちゃった……キッドもゴメン」



 なぜそこにビリケンが含まれていないのか分からないが、ミーコとビリケンは俺たちが合流する前に5年近い付き合いが有るから今更なのかもな………まぁ、あの様子じゃ何にも無かったんだろうけど



 それからはミーコがモモレンにこの世界の事についてしっかり説明して上げてくれた



「奴隷……想像も出来ないよ」


「実感ないと中々ね…キッド、何か命令してみてくれる?」


 不意にとんでもない事を言われて焦る


「キッドおおおおおおお!!セクシィィポーズだ!!!」


 いつの間にか戻って来たビリケンが突然叫ぶ


「アイツ………後悔させてやる……」


 剣をスラッと抜くミーコを見てまた逃げ出そうとするので


「ビリケン伏せ!」


「ふぎゅっ!」


 リキッドに命令されたビリケンはその場で地面に伏せさせられる



「ほらね?これが探索者と奴隷の関係だよ…分かった?」


 剣の鞘をブンブン振り回すミーコがビリケンに近づいていく


「うっうん…わっ分かったから…手加減してあげて?」


「キッドおおお!うらぎっぶへええええ!」


 その晩、ミーコにボコボコにされたビリケンは女子達(主にミーコ)に一緒のテントで寝るのを拒否され


 余りに可愛そうなので、(1人で女子2人と眠るなんて無理です)男女交代で休む事にしたリキッド達だった

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