【序章】第十一話:奸計
【ダンジョン地下4F】
出現モンスター…(スライム・コボルト・ゴブリン)
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【ダンジョン地下5F】
出現モンスター…(オークのみ)
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【ダンジョン地下6F】
出現モンスター…(オーク・エルダースライム)
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【ダンジョン地下7F】
出現モンスター…(ウェアウルフのみ)
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【ダンジョン地下8F】
出現モンスター…(ウェアウルフ・エルダーコボルト)
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【ダンジョン地下9F】
出現モンスター…(トロールのみ)
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【ダンジョン地下10F】
セーフティゾーンの為、モンスター出現無し
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【ダンジョン地下11F】
出現モンスター…(トロール・エルダーゴブリン)
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【ダンジョン地下12F】
出現モンスター…(オーク・ウェアウルフ・トロール)
「リキッドさん、モヤシの野郎…そろそろ限界みたいですが、どうしますか?」
此処まで見た目からは予想出来ない根性を見せたモヤシがついに膝をついた
普通なら、スキル持ちとはいえ何の訓練も無く召喚したての人間が此処までこれる筈が無かった
リキッドがモヤシを
地面に膝をつくモヤシは確かにもうボロボロだった
スキルの恩恵で怪我こそ無いが基礎体力が足りな過ぎる
「…モヤシ立てるなら立ってみろ」
「はっはい…」
フラフラになりながら、命令に従い立ち上がるモヤシだか、戦闘が無理なのは明白だった
モヤシは新しいパーティメンバーに入れるつもりなのでこのままだと今日の収益は普段に比べればかなり少ない、
目の前にある白い玉は濁っていて雑魚確定だが、
此処で白い玉を割って変えるべきだろう、雑魚だろうがギルドはきっちり買い取ってくれる、撤退するべきだ、そう判断したリキッドは
「…仕方『俺が』……何が俺が、何だ?」
横から口を挟まれたリキッドは機嫌が悪くなるのを隠さずナルミに確認する
「……次のミノタウロスは俺と相性が良い…良ければ俺1人にやらせてください」
「なっナルミっ13階層だぞ?1人は無茶だろ!」
コバが無茶だと止めてくる
「珍しい事もあるもんだなあ……こんなに立て続けに二回も意見されるとは…………良い度胸じゃないか?」
そう言ってライフルを両肩に担ぐリキッドが近づいてくる、その手に力が篭っているのは明らかだ
「……何か…
ナルミの言葉に反応し、歩みを止めるリキッド
「新しい力?…何かのスキルか?」
「……そんな気がする」
後天性でスキルが発現する事は奴隷には、ごく稀にある事だった
発現すればパーティの大きな戦力となるのは間違いない、それは20階層の更に奥へと進む足掛かりになる
「……良いだろう、但しボス部屋には絶対入るなよ?後、無理だと思ったら諦めて帰って来い」
「………はい」
ナルミは1人、13階層への扉を降りていった
その後ろ姿を見ていたコバが
「だっ大丈夫ですかね?」
「死ななきゃ構わん、それに今日のアイツは戦い方が以前と何か違う、前より慎重になってる、アイツも家族が出来たってようやく意識し始めたんじゃないか?」
「そう言えば…前はもっと……」
言語化出来ないコバ
「前に出過ぎてた、ギリギリを楽しむ見たいにな」
「そっそうっ流石ですねリキッドさんっ」
「お前が阿保なだけだ」
「……そんなに凄いんですか?」
肩で息をしてるモヤシが興味津々だ
「………」
凄いという言葉に無言で黙るリキッドに
コバもモヤシも静まり返った
【ダンジョン地下13F】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
出現モンスター…(ミノタウロスのみ)
階段を降りたナルミは…廻りを見渡すと…
2.5mはありそうな赤黒い巨躯で牛ヅラのモンスター達が
所々地面から5mはありそうな天井まで繋がる柱のような物が伸びていて、スッキリとしたフロアはミノタウロスの為に設計されたような作りになっている
一番近くに居た一匹にゆっくり近づき柱の影に隠れていくと、こちらの気配に反応したミノタウロスの鼻息が荒くなっていくが、頭が悪いのか、影にいるナルミに気付けない
柱から通り過ぎたミノタウロスの後ろに廻ってフルスイング(スキル)で首の後ろめがけてハルバートを叩き付けると、断末魔を上げる事なくドサっと倒れた
(…コレなら何とかなる)手応え充分と感じたナルミは、なるべく安全な敵に的を絞って数を減らして行いったが……
次々と牛ヅラのモンスターを倒していくナルミは焦っていた、時間がかかりすぎれば、応援にくる可能性が高くなる、それは焦りとなり、神経をすり減らす、そして……仕損じた
「モ“オ”ッオオオオオオオオッ!!!」
ギリギリで仕留め損なった牛ヅラの化け物が断末魔を上げる事を止められず、
その先に居るモンスター達が興奮し始めて一番近いミノタウロスがこっちに向かって走り始める
断末魔を挙げた牛ヅラに止めを刺すと、地響きのような音を立てて、棍棒を振り上げながら近くまで来ていた、反射的にナルミの身体が半歩前に出ようとするのを、キドが意識的に後ろに下がって危なげなく攻撃を避け、足を蹴たぐるように引っ掛けると一匹がすっ転ぶ、その影にいたもう一匹が横なぎに棍棒を払って来るのを確認し、頭を下げて回避し、下からハルバートをカチあげるようにフルスイング(スキル)で攻撃すると牛ヅラの身体が縦真っ二つに避けた
すっ転んだ牛ヅラが体勢を取り直し、こっちに向かって野球のバットの様に、棍棒を振り抜こうとするが、ナルミの身体能力はそれの上を行っている、振り下ろしたハルバートが牛ヅラの腕を切り落として、棍棒が地面に落ち「モ”?」と腕をみる間抜けヅラにハルバートの鉄槌で頭を潰してやる
ドドドドと後ろから音がきこえて振り向くと今度は5匹ぐらいの牛ヅラが叫びながら走って来ていた
「モーモーモーモー…五月蝿え!!」
撤退は有り得ない、此処でやり切らないといけない、時間もかけ過ぎれば誰かが来るかもしれない、何がなんでも独りでやり切らないと行けなかった
ナルミの本能か、身体に染みついてるのか、わからないが、絶対絶命のような状況にナルミの身体がパンプアップしていく
アドレナリンなのかドーパミンなのかよく分からないがドパドパ溢れて棍棒よりは射程の長いハルバートを横一文字にフルスイング(スキル)で払うと5匹の内の3匹が真っ二つになり、残りの二匹が雄叫びを上げながら柱に吹っ飛ぶ
その振動とその雄叫びに奥にいた10匹程が一斉にナルミを睨みつけた
フシュフシュと鼻息を荒くした一匹が走り出し。残りの九匹もそれに続くように走り始めた
(こんな時……ナルミならきっとこうすんだろうな?)
20層の10m近いボスにだって正面から突き進む記憶の中のナルミの真似をするように、キドは前に突き進んだ
一匹目に走り出した牛ヅラが棍棒を振り上げようとする
「遅えええええ!!」
キドは普段は使わない言葉使いだ、ナルミだって口には出さない、
全力で走れば陸上競技で世界記録も出せそうなナルミが、棍棒を振り下ろす前の牛ヅラの懐に入り、吹き飛ばすとすぐ後ろにいた牛の群れに巨体をぶち当てた、当たらなかった3匹が、全く怯まず左右と正面から棍棒をぶち当てようと振り回す、この状況でまだ前に出ようとするナルミの身体を後ろに下げて、タイミングぴったりで振り回された棍棒をハルバートの鉄槌で纏めてフルスイング(スキル)で打ち返してやった
余りの衝撃に獲物を落とす牛ヅラに3秒ピッタリで一歩踏み込み、フルスイングで纏めて首と胴を泣き別れにして倒すと、
後ろに吹き飛んだ7匹がフシュフシュと鼻息をまた荒くしていた
「………上等だ」
寡黙で何も言わなかったナルミの心の声をキドが代弁するように話し始めていた
囲むように近づいてくる牛ヅラ達にナルミは常人なら見失うようなスピードで端に居る奴から突っ込んでいく
【ボス広間前】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふぅぅぅぅぅ……………」
全て仕留めた勇司は広間の前で呼吸を整えていた…
………おおーいっ!ナルミィ!
遠くで呼ぶ声が聞こえていたが返事をする余裕は無かった
ミノタウロス達の返り血を全身に浴びたその姿は殆ど鬼にしか見えない
「あっ居た………って…ナルミっ!おい!大丈夫か!」
最初に声をかけて来たのはコバだった
「ナッナルミさ…ん……なんか、身体大きくなってません?」
モヤシがその姿をみて絶句する
最後にリキッドが後ろからやって来て
「…新しいスキルは身につけたか?」
いつもと、何か違うナルミの様子を見たリキッドが何かを確信したような顔で聞いてくる
リキッドの問いに黙って頷き、ナルミは広場に入っていく
指示は独りで広間に入るなだ、
全員いる今ならそれに反しない
「ふふ…見せて貰おうじゃないか?」
そう言ってリキッドも楽しそうに13階の広間にへと入っていく
普通のエルダーならこの程度の階層、リキッドにとっては何でもない、広間の奥へと入るナルミのすぐ後ろに位置を取る、
コバやモヤシを連れて広間に入り、端の柱の近くで様子を見ていた、モヤシを守るためだ
そして階層主が現れた………………それはリキッドの知る階層主とは全然違った
【嵌められた探索者】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「………バカなっ!」
いつもなら赤黒い5m程のミノタウロス
馬鹿でかい咆哮で弱い物を
雑魚にはない角でカチあげるように突進し吹き飛ばされると高い天井に吹き飛ばされる
力もスピードも速いが短調でパターン化されている、慣れた探索者なら余裕で勝てる
それがリキッドが知る13階の階層主だった
目の前に現れたのは身長が倍の10メートルほどもあり、白い体毛で身を包む牛の化け物
「ユッユニーク?なんで1日2回も…あっあり得ない」
コバがそう呟くとモヤシが聞いてくる
「ユニーク?何か凄く強そうですけど……だっ大丈夫ですよね?ね?」
不安な顔を見せる女みたいな顔をしたモヤシは震えていた
「守れ……全員俺を守れ!!!」
リキッドがそう叫び、最初にボスとリキッドの間に入ったのは、一番近くにいたナルミだった
コバもモヤシも泣き出しそうな顔をしながらリキッドの方へ向かっていく
「自分を守れ」それは奴隷を捨て駒にする時の命令だ
「「いっいやだっ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だああああああああああ」」
コバがそれを瞬時に理解して叫びながらリキッドに向かって走る
本能的に良くない命令だと察したモヤシもまた、釣られて叫びながら走っていく
命令に逆らえない2人はリキッドに向かって走り出すが直ぐに足を止めた
ナルミを貫いた巨大な角がリキッドの胸に届き、衝撃だけで広間の端にある柱にまで吹き飛んで、ぶつかり地面に転がる
隷属の紋章に従うコバとモヤシは吹き飛んだリキッドを追って再び広間の端まで追いかけていく
「ぐはっ……うそ…だ…………こっこんな……………リ……リィ…………」
才能豊かで危ない橋など絶対渡らない、13階層で終わる筈の無い探索者リキッドは、その命を終わらせた…………ように見えた
「リッリキッドさん!!大丈夫ですか?!」
一番最初にリキッドを抱き起こしたのはモヤシだった
「早く!引っ張り起こせ、広間から離れるんだ!」
リキッドの前に立ちボスから守るように立つコバがモヤシに命令する
「はっはい!リキッドさんっしっかり!」
肩を担いで起こそうとするモヤシだが、恐怖と疲労で腰に力が入らず倒れてしまう
その倒れた2人の上を何かが飛んでいった
モヤシが飛んでいったナニかを見ると上半身が千切れたコバの死体だった
「そんな……嘘……嘘だ…嘘だっ!ぃっいやだああああ!」
半狂乱になって逃げ出そうとするが命令のせいでリキッドから離れられない
(クソ!クソ!クソ!何でだ!!!)
半狂乱になるモヤシを見ながら悪態ついたのはナルミから離れたキドだった
身体が二つに分かれたコバは赤いオーラは全く見えない
一緒に最初に死んで乗っ取れば、広間の端に居た2人は死なずに逃げられる、そう考えたが、リキッドが予想外にしぶとすぎた
リキッドには赤黒いオーラが見えなかった
胸に小さく無い穴を開けて、間違いなく死んでいると思われたリキッドはギリギリで死の縁に立っていてそれがほんの僅か指一本で崖がから落ちる寸前で生にしがみ付いている…そんな状態だった
ズシンズシンと近づいてくるレアボスに怯えながら自分が逃げられないのは、リキッドが生きているせいだと気がついたモヤシは、リキッドを引っ張りながら必死に広間から離れようとしていくが
巨大な角がモヤシに向かって伸びていく
パリン
角での攻撃をシールドが跳ね返す
理由は分からないが見るからに弱そうな人間が生意気にも攻撃を弾いた事に怒り心頭なミノタウロスが雄叫びを上げながら何度も角で続き、拳を放り、足で踏みつけていく
パリンパリンパリンパリンパリンパリンパリパリンパリン………ガンッ!
スキルを使い果たしたモヤシにレアボスの拳がヒットしてリキッドを庇うように抱きしめていたモヤシは2人まとめて吹き飛ばされた
転がるモヤシは既に息絶えていた
キドはモヤシに赤黒いオーラが発生した事を確認する
既に自分の体が上に向かい始めて止まらない
どう見ても残り時間はあと僅かだった
リキッドの体からはまだ赤いオーラはまだ見えていない
(クソ!クソ!クソ!クソクソクソクソオオっ!もう……ダメだーーーーーーーーーーーーー!!!!)
タイムオーバー
これ以上はもう待てない
ゴースト?のような状態になり、徐々に上に向かってユニークボスより高い天井近くまで上がっていたキドは、諦めてモヤシに向かって飛んで行く
キドがモヤシの身体に触れようとした瞬間、リキッドの身体にモヤのような何かが見えた
(嘘だろ?!)
考える間も暇も無く、モヤシと同化する寸前でリキッドの身体に入っていくキド
そしてパーティの全滅を確認した階層主は役目を終えて姿を消していく
誰も居なくなった13階層で死んだ筈のリキッドの身体が突然、仰向けのまま跳ね上がり50センチ程、一瞬だが浮き上がった
その後、ガグガクと5分程、痙攣し続け………やがて動かなくなる
骸となった者は人間だろうがモンスターだろうがダンジョンに吸収されていく……そんな中で、死んだと思われた1人の人間が起き上がると、その場で嘔吐した
「かはっ…ゲホッケホッ…ゔっゔぅぅぅ…………こんな………もう嫌だ……」
白いミノタウロスにボロボロにされ、悲鳴を上げる身体を無理やり起こした男はダンジョンから脱出する為にゆっくりと歩き出し、身体が馴染んで来たのか、やがて少しずつだが、速度を早めていった
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