【序章】第七話:異世界での家族
鬼岩宅前
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
自分の家の前でウロウロしてるキド
「うーーん………どうしよう………」
「何の事です?」
「いや、ちょっと入りずらい事情が……」
「浮気でもしたとか?」
「嫌々…そんなのありえ………ない……え?」
振り返るとと其処には……ナルミの奥さんが玄関を開けて普通に会話していた
「どわああぁぁぁっ!!」
「アナタがそんなに驚くなんて……始めて見たわっ!」
早速怪しまれそうになったナルミだった
目の前に居るのは、ずっと独り身だったナルミにオッサンがリキッドに相談し、押し付けられる様に結婚させられた
ナルミは口に出した事はないが……内心かなり喜んでた
(………当然…夜も…駄目だ鼻血でそうなる)
目の前で驚いたりコロコロ笑うと小さなエクボが出来る奥さんは
ナルミより一つ少し年上でこの世界の先輩でもある
戦闘スキルも持っていてリキッドのパーティでは紅一点だったが
結婚適齢期を理由に引退したいと考えていた
そんな時に、リキッドがナルミの結婚相手を探し始めたと聞いて
自分から立候補したそうだ(後からビリケンがバラした)、他の知らない人よりズッとマシ、後は簡単に死ななそうと言うのが理由らしい
「ん”っん”ほん……帰った……」
必死に記憶のナルミに合わせて挨拶すると
「はい、お帰りなさい、ご飯にする?私にする?」
いつもこうやって
「……メシだ…そう言う冗談は止めろ」
そしてナルミいつも必ずこう返す
「ふふふ…御免なさい、可愛くってついね」
そうして腕を抱きしめてくる
(むっむねがああああ!ぽょんぽょん!!!)
中身が24才のニートは意識が飛びそうになりながら家の中に入っていくと奥の方から可愛い声が飛んで来た
「あっお帰りなさーい」
6才くらいの子供が食卓で食器を並べる手伝いして待っていた
結婚して三ヶ月も経っていない、勿論ナルミの子供じゃないが
奥さんの子供でも無い
召喚によって引き取られた子供だ
結婚した奴隷が順番に引き取り育てて行く事になっている
畳みは無いので板張りの食卓を3人で囲んで2人の事を見る
左手に座るのは
ナルミの奥さん
鬼岩和穂28才
元、戦闘奴隷
ショートヘアだったが今は伸ばし始めて
セミロングぐらいになっている
腰まで伸ばしたいそうだ
少し気が強そうで笑うとエクボが出来る
ハッキリ言って美人だ
鬼岩和美6才
この世界に来たのはつい最近で名前は何故か覚えて無かった
ウチが引き取る事になったので
奥さんの名前とナルミの名前から一字ずつ分けて
和美にした
目がアルビノになっていて珍しいスキルを持っているが
戦闘奴隷は12才からなので今は簡単な奉仕活動(雑務)に従事させられている
8才になったら戦闘訓練が始まる
「それじゃご飯にしましょうか?」
ナルミがいつも通り何も話さないので、奥さんがご飯の合図をする
「いただきまーーす」
和美が両手を合わせて合図をし
「……頂きます」
ナルミもそれに続いて挨拶をする、子供の教育に悪いと奥さんに叱られた事があるからだ
(なんか…俺が想像してた異世界とも奴隷とも……全然違うなぁ)
アットホームな雰囲気が妙に心を落ち着かせていく
身体が資本な戦闘奴隷は飯を充分に与えられる、味はともかく栄養価だけはバッチリだ
もう減量など無いナルミは食えば食うほどカロリーをエネルギーに変えていく、一年前に召喚された時より一回り以上身体がゴツくなっている
「……おかわり」
「ふふふ…今日も食べるわね、はい」
「わたしもおかわりー」
「はいはい、無理しないでね?」
「はーい♪」
〜〜守る物が出来れば家に帰る為に必死になるってもんだろ?〜〜
一年前、ビリケンがナルミに言った言葉は………子供と奥さんに囲まれる食卓を通して本当だとナルミ自身も思い始めていた
(日本に居た時は田舎から出てずっと1人だったよなぁ…)
食卓を片付けると、和美が甘えてくる
「パパ〜〜♡」
(可愛すぎてもう…フニャフニャになってしまう…何だこの生き物は
おさげ頭の6才の娘に甘えられて心が溶けない奴が居たら、そいつは人間じゃねえ!)
「ん……」
心で血の涙を流しながらブレないナルミを演じる木渡
(お前ーーーもっと素直になれよーーーこの馬鹿っ!)
必死に可愛がりたい気持ちをいつも見透かすようにニヤニヤする奥さん
「ウフフっ…プフっ……そろそろお休みしないとね、和美?」
「………はーい、お休みなさいパパママ♡」
それぞれのほっぺにチュウをして自室に帰っていく
来た当初はして無かった…多分…奥さんがそう躾けたんだろう
和穂さん、グッジョブッ!
食卓を挟んで和美と反対側に夫婦の寝室がある……
其処に先に奥さんが入って行く
「アナタ?まだ寝無いの?」
「………少し考え事してる」
「そう?早く来てね?」
流し目で夫婦の部屋に入っていく奥さんの顔を見る事も出来ずに下を向いて黙ってやり過ごすキドは
(無理!絶対無理だ!どうしよう!もう言っちゃうか?!全部言っちゃうか?!……。嫌々……俺が殆ど原因だったじゃん!!何て説明すんのさ??…………どうしよう……した事ないよ!俺そんなの分かんないよ!……ちょっと……ちょっとだけ………夜の生活を見てみよ…………こっこれは勉強だ!保健体育だ!!)
//////////////////////////////
♡♡ナルミの記憶を覗き中♡♡
//////////////////////////////
ドサッッゴン
思わず気絶しそうになった硬い板張りに頭を打ち…さらに意識が遠のいた…………
◆
翌朝何故か布団で目を覚ますとナルミの胸に頭を乗せて眠る幸せそうな奥さんがいて
(なっなっななななんだこれえっ!っ!)
一つ目の鐘がゴーーーンとなり
睡眠時間は後4時間程になったが…硬直したキドは眠れそうに無かった
◇
ぐががぁーーすぴーーー
(結局寝てしまった)
「アナタっもう起きてっ!………全く…和美行きなさいっ」
中々目を覚まさない俺に和穂が娘に命令すると、
娘の和美が嬉しそうに布団の上からダイブする
まだ30キロ有るかどうかだがピンポイントでお腹の上にダイブされると流石に効く
「ンゴォッ!」
「パパおはよー♪」
「お…………ん」
(おはよーーー!!!)
「そろそろご飯食べて、今日も鐘三つなんでしょ?」
「………ん」
(ありがとう!頂きます!)
「パパ頑張ってね♪」
「………ん」
(何処の亭主関白じゃああああ!)
記憶の中のナルミにストレスをとてつもない速さで貯めていく木度は
朝食を食べ終わり玄関に向かうと
トテトテと歩き追ってくる和美が両手を伸ばす
(いつもの奴か……)
和美を抱き上げると和穂も反対側に立ち2人で和美の頬にチュウをしてから床に戻し
最後に奥さんにも…ゴニョゴニョしてから玄関を開ける
(もう…この異世界は既に最高かも知れない)
そう思いながらギルドに向かうと
「よーナルミっ昨日は気が付いたら店の外で寝てたぜっ!」
寝癖であちこちハネ毛になっているコバが何故か親指を立てきた
「おーっす…昨日は飲み過ぎた……気持ち悪ぃ……」
昨日よりゲッソリして、より老けたビリケンも追いついた
「………ん」
(昨日は奥さんとお楽しみしたのか?ん?)
全部知ってる老け顔のビリケンがニヤニヤしながらコソコソ話しかけてくる
ドンッ!
鬱陶しいので肘を入れてやった
「おまっみっ鳩尾………ぐっぶ…オロロロ」
どうやらビリケンは昨日の酒が残ってたらしい
【ギルドホーム】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「リリーさんおはようございます!小口治です!」
「……あっコバね…名前勝手変えんなゴミ」
「はぁはぁ…朝からリリーさんの侮蔑を受けるなんて」
顔を赤くして退いていくコバ
……あんな奴だったのか?
「……黒川豊だ」
「はい、オッサンね、戦闘奴隷の最年長ぐらい覚えてるに決まってるでしょ?全くこれだからオッサンは…」
オッサンオッサンと連呼されて顔が別の意味で赤くなっていくビリケン
「………ん」
「……んっじゃあ分かんないでしょ?毎回毎回…………はぁ、今日はもう疲れてるから、いいわ、鬼岩成海、ダンジョンに同行ね、行ってらしゃい」
(おや?珍しい……記憶の中では張り倒したくなる毒舌を言われて、仕方なくちゃんと話すのがいつものやり取りなのに……)
いつもより少し気怠げで艶っぽいリリーに出発の手続きをしてもらい
今日のダンジョン攻略の為、俺たちは集合場所の城門前に向かっていった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます