【序章】第六話:再会

【鳥奴隷】

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「……同じ奴隷だ、俺は敵じゃねえよ……「いつ迄続くのか」……知りたく無いか?」


あっさり中身が変わってる事を見破られたキドは

したり顔で不敵に笑うおっさんの言葉に黙って頷くしかなかった


「……教えてほしい」


「勿論教えるさ……お前の胸にもその紋章が有るんだ……日本人同士で疑い合う余裕なんて、俺たちには無えんだっ……」


そう言って胸の紋章をつつくおっさん


「……まず、俺たちの紋章を付与したのはダンジョンだ、これは紋章は所有者の譲渡は出来ても解除は奴隷スキルを持った奴でも出来ないそうだ」


「……そうなのか?」


「あぁ、間違いないらしい……つまりこの紋章が有るウチはどうにも何ねえ……此処までは分かったか?」


頷くナルミ


「だからこの紋章を外すにはどうしたら良いか?これを付けた奴に外して貰うのが一番だ……どうすれば良いと思う?」


試すように話を振ってくるおっさんにナルミは


「奴隷ダンジョンの……攻略か?」


「そう!その通りだあのダンジョンを攻略しちまえば良い、だが出来ない何故か?ご主人様がそれを許さないからだ、……俺たちは探索者に全く、コレっっぽっちも逆らえねえからな」



「じゃぁ……どうするんだよ?」



「焦んなよ……お前も有ったろユニークモンスターを?」


(ユニーク?……あの白い奴か)


また黙って頷くナルミ

焦ったいがこれ以上疑われるのも不味い


「あの白いユニークな、稀にだが階層主にも現れる、そのルールを突き止める事さえ出来れば……邪魔者を消せると思わないか?」



したり顔で言うおっさんにナルミは膝から崩れ落ちそうになる

(コイツは馬鹿だ……そんなのそもそも全滅必死じゃねーか……全員死んでどうやってダンジョン攻略すんだよ……)


「こらこら…人を馬鹿にするような顔で見るなよ…分かってるよ…ユニークボスに会ったら全滅だって言いたいんだろ?」


「……違うのか?」


「残念ながらその通りだ、あれは普通は戦っちゃ駄目な奴だ…だけど出現の法則を知る事が出来れば対策も立てようが有るだろ?一番良いのは奴隷の味方をしてくれる、探索者が現れる方法だけどな……残念ながらそんな奴は殆ど居ねえ、ダンジョンを攻略出来そうな実力者となれば余計だ……この異世界の奴らは奴隷を便利な捨て駒としか見てねえ」


(…………もしかして………俺のスキルなら…………いや……二度と死にたく無い……)


「……それでユニークについて分かった事有るのか?」


「……続きを聞きたいなら、そろそろお前も話したらどうなんだ?ただ酒は……無制限じゃねーんだぜ?」


「・・・・・・」

(どうする…何て言う?…何処まで話して良いんだ?)

自分でもよく分かって無いスキルを言うのは自殺行為だと判断したキドは……別の事を話す事にした


「……俺はゲームをしてたんだ」


「……ゲーム?………それで?」


(スキルの事は話せない……他に言える事は……召喚じゃ駄目だ……転移した風に…)


「仲の良い4人だった…いつも一緒のメンバーだったんだ……ある時1人の女の子が言ったんだ……未公開のダンジョンに入る方法があるって」


「………それで…どうなったんだ?」

話の続きを興味深く聞くオッサン


(ゲーム好きなのか?まぁこのくらいの年の人、結構多いしな)


「俺たちはダンジョンに入ったよ、未公開のダンジョンなんて下手したらBANされる、だから最初は止めたんだけどな……結局止められなかったし、中に入ったら俺も少なからず楽しんでしまった、調子に乗って狩りを続けたらボス部屋で1人のプレイヤーがやられそうになってた、それを見た仲間が……助けようとして飛び込んだ……信じられないくらい強くて……残った仲間と必死に戦ったんだ……結構良いといころまで行ったんだけど………結局全員ヤられた………次に目が覚めたら俺はナルミになって森を歩いてた……オッサンが声を掛けて来た時だ」


「……………………………………」


オッサンは無言だったが顔が青くなっていく

(信じてくれたのか?…全然分かんねえ……)


「……キッド…か?」


「…え?」

目の前のオッサンが涙を流してどんどん汚い顔になって行く、その名前を知っているオッサンは

1人しか思いつかないが……微妙に疑問がある



「ビリケンなのか?……でも……29才って年合わなくね?」


「くくっ本当にキッドだったのか!いやそうだよな?あんなシチュエーション早々ある訳ねえんだ!」


泣きながら笑うビリケンはナルミの記憶で1年前に29才と言っていた筈だ

俺の知ってるビリケンは、日本にいた時35才って言ってた


「あぁ…声が老けてたからな…年上に見られたくて嘘ついてたんだ…本当はあの時18だっだんだよ」


「なんだそれ……てか、時間とかどうなってんだよ………」



「そんなの俺が知るかよ………ともかく……ようやく1人目だ、もう完全に諦めてたのにな…………お前に、もしこの世界でお前に会ったら絶対にお前に言わなきゃならない事が有るんだ」


泣き笑いだった顔が泣きながら真剣な顔になる ビリケン


「なっ何だよ?」


「巻き込んで悪かった……お前はずっと止めてくれてた……本当に…本当にゴメン」


テーブルに頭を擦り付けるように謝罪してくる、元仲間に、くすぐったい気持ちになるキドは


「ビリケン……もう良いよ……また会えて俺も嬉しいよ……随分待たせちまったみたいだけどな………まさか初めてのオフ会が異世界でする事になる何て思いもしなかったよ」


「っぷ、本当だな……だけど何でお前だけ転生何だろうな?ミーコもモモレンもそうだとしたら……見つけるのが難し過ぎるぞ…」



「それなんだけど………ちょっと待ってな」


コバの頭を軽く小突いてみる

テーブルにゴンッ!と頭をぶつかった…思ったより力が入ってた見たいだ……


「……リリーしゃん…もっと…」


……問題無いみたいだ


「実は…転生ってのは嘘なんだ……」


10年以上1人で待っていた仲間に嘘なんか付けるわけない

俺は真っ暗な世界から此処までの経緯を何もかも話す事にした



「真っ暗な世界……初めて聞いた……」

「やっぱりか…ナルミの記憶にも全く無かったからな…」


「それでそのスキルは本当に分からないんだな?」

「あぁ…検証は出来ない…もう一度発動するかも分からないんだ…」


「失敗したら終わりだしな…」

「そういう事だ」


「まぁ一先ずは今までと変わらない、まずはユニークの出現法則を見極める事だ…その辺はキッドが居ればキッド分かる!」


「うわっ!お前寒すぎる、ミーコが居たら死んでるぞ?」

「え?そうか?もう親父になったから良いだろ?」



その晩、冷え冷えの親父ギャグと冷え冷えのエールを飲みながら

馬鹿な話を続けていた


ビリケンは涙脆くなったのか事あるごとに泣いていた


鳥奴隷を出てフラフラのビリケンに肩を貸して家に送る為に2人で歩いていた

コバは店に捨てて来た


「なぁ……ここは酷い異世界だ……本当にクソッタレだ………何とかしてえんだ……」


「分かってる……ナルミも同じ気持ちだった……ビリケンに感謝してたよ……」


「えええ?アイツがか?」


「記憶を探れるんだ……間違いない……」


「……なんかナルミの顔したキッドに言われると複雑だ……」


「仕方ないだろ……まさかあんな簡単に死ぬなんて思わなかったんだから」


「それもそうだが……お前って結構…普通の顔してたんだな?」


(洞窟でオッサンには顔を見られてたな)


「余計なお世話だ、お前だって普通のオッサンだろうが?加齢臭くせーぞ?」


「え?マジで?」


「マジだ」


「やべーミーコに嫌われる…」


「もう手遅れだろ?てか奥さん居るんだろ?」


「ソレはソレ、コレはコレだよ、親父好きな可能性だって有るだろ?」


「お前ミーコが親父嫌いって忘れてねーか?」


「………あ」


「全く……ほらこの辺だろ?ビリケンの家」


「あぁ、本当にナルミの記憶も共有してんだな、其処だよ」


ビリケンの示した家を見る、他の家屋と一緒で平家だった、玄関の上に「黒岡」と表札が書いてあって、ビリケンじゃ無いのが微妙に違和感だった


「ただいまぁぁ〜〜〜」


「は〜い、お帰りー」

玄関を開けると20代中頃の奥さんが玄関まで出迎えてくれた


「きーみーこー」

ナルミの肩を借りてヨロヨロだったビリケンはフラフラしながら気の強そうな奥さんに縋り付いて


「うわっ酒っくっさ!幾らなんでも飲み過ぎでしょお」


「今日は良いいいんだよぉっ!」


「ナルミさん、送ってくれて有り難うございます」


ビリケンを抱きとめた奥さんが挨拶をし、


「……それじゃあ明日は鐘三つで集合なんで、それだけ頼みます」


「鐘三つですね、分かりました、ちゃんと叩き起こすんで、それじゃあお休みなさい」


玄関が閉められると奥の方に引っ込んでいく2人の様子を見て、ビリケンと再開できた事にまずは安堵しながら夜空を見上げて帰り道を歩いていた


真っ暗な世界じゃ無いのに安心する、異世界の世界は日本で見る夜空より星が全く無い、

ただ馬鹿でかい月だけがあった


「家………どうしよう………」


ナルミの家族が待つ家…それがこれから俺が帰る家

本当の事は話せない、ビリケンが特別過ぎただけだ


直ぐに家に着いたが、自分の家なのに玄関を開けるまで暫くウロウロするキドだった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る