第149話ヤッちゃった?
『俺はお前の正義面が、見てて吐き気がするんだよ』
――俺の弱さがクラスメイトを殺した。
『私の正義の邪魔をした。ならば消すまでだ』
――俺の弱さが友達を殺した。
『少年達よ。立ち上がれ』
――俺の弱さが仲間を殺した。
『“オレ様から最後の命令だ”!!そこでぶっ倒れている人間を連れて撤退しろ!!
――俺の弱さが王を殺した。
俺は弱い。
負けて、負けて、負けて。
戦う度に大事なモノを失って。
何一つ守れやしない。
ああ。
そうか。
そうだったのか。
戦うからいけなかったのか。
俺が戦えば誰かが死ぬ。なら、もう戦わなくてもいいじゃねえか。俺が戦うと誰かが傷付くのなら、戦う必要なんて無い。
いや、違う。
――俺が死ねば、誰も傷付かなくて済むんじゃないのか?
『甘ったれたお前に助言をくれてやる。晃……人生とは戦いの連続だ。目の前の
◇
「――ッ………………ハァ……ハァ……」
ハッと目が醒める。
呼吸が荒く、背中にかいた汗が気持ち悪い。
最悪な目覚めである事には間違い無かった。
悪い夢を見ていた気がする。
内容はもう殆ど覚えてないけど、兎に角胸糞悪い夢だったと思う。
「ここはど…………んん?」
気を落ち着かせ、徐々に意識が鮮明になると俺は状況確認をしようと視覚を働かせようとしたのだが、その前に強烈な感触が襲ってきて石のように固まってしまう。
な……何だ?この……どうしようもなく柔らかい感触は。
モチモチというかふにょんふにょんというか、語彙力が馬鹿になりそうな兎に角すげー柔らかいモノが俺の全身を包んでいる。
特に両腕は、柔らかさが違うモノに挟まれていた。
(待て、落ち着くんだ影山晃。ここで取り乱すのはダサいぞ。深呼吸だ、深呼吸してクールに行こう)
スゥゥゥハァァァと三回程深い呼吸を繰り返した俺は、よし!と覚悟を決めて顔を左に向けた。
「影山ぁぁ……そこじゃない……ぃ」
「ッッッッッッッッッッえッ!!!」
左を向いた俺はクールどころか阿呆みたいな声を出して驚愕する。
だって仕方ないじゃないか、俺の左隣に全裸の佐倉が添い寝してるんだから。
「な、何で佐倉が……てか顔近っ」
顔を向けたすぐ目の前に佐倉の可愛い寝顔がある。その距離は唇が触れるぐらい近く、思わずじっと見惚れてしまった。
透き通った銀髪、睫毛が長く、鼻が小さい、吸い付きたくなる唇。普段の佐倉も可愛いが、寝顔の破壊力も半端ねぇ。
顔もそうだけど、一番は左腕を包んでいる大きな胸だ。メロンサイズのマシュマロ二つだ。
何だこれ、おっぱいってこんな大きいの?
おっぱいってこんなに柔らかいの?
おっぱいの衝撃に、思考が馬鹿になりそうだ。
けど、それよりももっと重要な事がある。
それは彼女が全裸だという事だ。そしてこの肌と肌が触れ合う感触。
(俺も全裸かよ……)
そう。
恐らく俺も服を着ていない。パンツすら履いていない正真正銘のMAPPAだ。毛布が掛かっているから辛うじて大事な所は隠れている。
たが、どうして俺は佐倉と全裸で一緒のベッドに寝ているんだろうか。
ここで俺は、ある一つの行為を想起する。
(もしかして俺……ヤッちゃった?)
この状況を鑑みるにそれしか考えつかない。
知らぬ間に俺は童貞を捨て、大人の階段を登ってしまったのか……。
しかし、一つだけ腑に落ちない事がある。
柔らかい感触は左隣り側だけではなく、右側からもあるんだ。
これは一体どういう事なのか。
(何となく……何となく想像出来る。けど何かの間違いかもしれない。間違いであってくれ)
嫌な予感を拭い去りたくて俺は勇気を振り絞り、今度は顔を右側に向けた。
「んん……アキラ〜、もっと激しくして下さいまし〜」
「ッッッッッッッッッッえッ!!?」
目を見開いて喫驚する。
嫌な予感は的中してしまい、俺の目の前には全裸の麗華が添い寝していた。
涎を垂らして彼女にしてはダラシない顔を俺の首筋に埋めており、鼻息が肌に当たって擽ったい。彼女のキラキラ輝く金髪から、男の欲情を誘う濃厚な良い匂いが漂っているのだ。
しかも佐倉と同様に、二つの双丘で俺の右腕をがっしりと抱き締めている。佐倉よりはサイズが劣ってしまうが、それでも十分巨乳である麗華のおっぱいの破壊力は凄まじい。
おっぱいだけではなく、麗華は細い脚を俺の足にねっとり絡めている。
これがもうエロい……めっちゃエロいんだ。
特上全裸美少女達に挟まれているこの状態に欲情を抱いて下半身に熱が集まっていくのを感じた俺は、ふと我に返って疑問を抱く。
(え……嘘だろ?俺……初めてで3Pしちゃったの???)
童貞だった俺が、初体験で3P?
しかもこんな美少女達と?
これは夢か?夢なのか?
それとも俺は帝国に殺されて、あの世にでもいるのだろうか。
それぐらいじゃないと、この美味しい状況に説明がつかないだろ。
と、軽く現実逃避をしていると、どこからかガチャリと扉が開く音が響いた。
俺は誘われるように音の方角へ視線を向けると、
「交代の時間だ。アキラの様子はどう……………………………」
「セ……セス……」
セスと俺の視線が交錯する。
いたたまれない沈黙の空気の中、セスの瞳が俺の両隣でダラシなく寝ている全裸の佐倉と麗華を順に射抜く。
どうしてだろう。
行為を致した記憶が全く無いのに、妻に不倫がバレてしまった夫の気持ちが痛い程分かる。
背中に滝のような汗を流しながら、不倫男のような言い訳を発した。
「待ってくれセス、これは何かの間違いだ」
「男は皆そう言うそうだ」
「俺も今起きたらこんな事になってたんだ。なぁ、信じてくれよ」
「アキラ、男は皆そう言い訳をするんだ。お前がそんな軽薄な男だったとは……失望したぞ」
セスがゴミを見るような冷たい眼差しで俺を射抜く。
元気に立っていた相棒が、一瞬で落ち込んでしまった。
がっくりと項垂れていると、両隣で寝ている二人がゴソゴソと動き出す。どうやら起きたみたいだ。
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