第120話行き着く未来を
「――ッ!!?」
突然響いた声に驚愕する。
このザラリとした耳障りな声、人を馬鹿にしたような口調。
紛れもない……これはアイツの声だ!
(久しぶりじゃねえか、ベルゼブブ!!)
『アア、久しぶりだなアキラ』
(話したい事は山ほどあるんだけどよ、今はそんな場合じゃねえんだ)
『ヒハハ、ずっと見てたから分かるぜ』
ああん!?
ずっと見てたって?
さてはこの野郎、かなり前から起きてやがったな!俺のピンチを見て楽しんでたに違いない。
(おいベルゼブブ、早速で悪いがちょっと手を貸してくれないか。正直一人で相手をするのがキツいんだ)
『仕方ねえ、ダラシねー宿主の為に手を貸してやる。その変わり、奥にいる強敵は一人でやれよ』
(了解、助かるぜ)
助力を求めると、ベルゼブブは文句を言いながらも了承してくれる。コイツがいれば百人力どころじゃない。この絶望的状況をひっくり返せる。
「背中は任せな、アキラは目の前の敵を捻り潰せ」
「おう!」
俺の右肩から、ニョッと虫の顔が這い出る。
頼もしい言葉を聞きながら、驚愕する彼女達へと迫った。
「何だコイツッ、肩から顔が出てきたぞ」
「やだー、気持ち悪いー!」
彼女達が蝿の面を見て嫌悪している。
おいベルゼブブ、気持ち悪いってよ。
『ヒハハ、ぶち殺せ』
「あいよ!」
俺は両腕にナイフを纏い、眼前にいる鎌使いの少女へと接近。
「後ろがガラ空きだよ!」
「喰らいな!」
直後、背後から他の戦士達が俺を狙う。
だが後ろの事は気にしなくていい。何故なら俺の背中は、ベルゼブブが守ってくれるからだ。
「ヒハハ、弱えなァ!」
「このッ」
「かったい!」
背中から生えた触手が、長剣と大剣による斬撃を真正面から受け止める。勿論俺が操っているのではなく、触手を支配しているのはベルゼブブだ。
これで俺は目の前の敵だけに集中出来る、本当に有難いぜ。だがこれで、多対一だからと言い訳は出来なくなってしまった。一人倒すのにモタモタすれば俺がベルゼブブに喰われてしまう。
集中しろ、時間をかけるな。
「こいつ、強」
「オラァ!」
「あぐ!」
斬り合ってる鎌使いの少女に、足先から視覚外のニードルを放つ。切っ先は少女の横っ腹を抉り、激痛に怯んだ所に追撃。彼女の横っ面を蹴り飛ばした。
「イツキ!」
「イッちゃん!」
一人減り、これで九人になった。仲間がやられて動揺している間にサクサクいこう。
一瞬で周囲を把握し、一番動揺している奴を探す。
よし、次はあの魔女っぽい女の子をやろう。
「――ひッ!?」
俺と目が合うと、魔法使いは表情を引きつらせた。おいおい、そんなに怯えなくてもいいじゃないか。別に化物でもないんだからさ。
「く、来るなぁぁああ!」
「スゥゥゥゥゥ、ぉぉおおおおお!!」
魔法使いが放った炎雷を、咆哮を衝撃波として打ち消す。さらに前方左右から撃ち出された砲弾や弓矢を、凝固した黒スライムで防御。
「
「やめて、やめ――」
「ナイフ」
ナイフで魔法使いを斬るが、咄嗟に障壁を張られて防がれてしまう。思った以上に硬く、ナイフでは攻撃が通らない。ならば威力を上げればいい。
「蝿王の拳」
「やらせるかよ!」
「ミナ!」
「ヒハハハハ、邪魔させねぇよ」
他の戦士達が一斉に攻撃してくるが、ベルゼブブが全て跳ね除ける。そして、引き絞られた怪腕は勢い良く放たれ、巨拳は障壁を容易く突き破り魔法使いを殴り飛ばした。
『ヒハハ、強くなったじゃねーか、アキラよぉ』
魔法使いを戦闘不能にすると、俺は次なるターゲットに身体を向ける。
『小鬼如きに惨めったらしく命乞いして、無様に喰われていたクソッたれな小僧が、よくここまで成長したじゃねーか』
両腕にナイフを纏い、蜘蛛糸の伸縮移動で距離を潰す。斬りかかるが、剣士も長剣を振るってきて鍔迫り合いになった。
『今戦ってる女共は、アキラが前にボコられた、奴隷商が切り札として雇っていた男と実力は変わらねー。それを今では1対10で戦り合ってるってンだから、オレ様でも信じられねー成長速度だ』
刃を重ねながらも余裕があった俺は、足元から黒スライムを水溜り程度に展開。小さな拷問器具、アイアンメイデンを繰り出して片足を磨り潰す。
『類稀なる戦闘センス……オレ様が寄生してきた宿主の中でも、アキラは誰よりも魔王の力を使いこなしてやがる。だがそれよりもオレ様が気に入っているのは、アキラのぶっ壊れた内面にある』
苦痛に塗れた悲鳴を上げる剣士を、ハンマーで地面に叩き潰した。
『今までの宿主は、敵は殺さないとか女は傷つけられないとか甘ったれた事を抜かす腑抜けた奴だったが、コイツは違う。基本のスタンスは変わらねーけど、やる時はやる。女にも容赦はしねーし、殺すと決めた奴は躊躇無く殺す。そこがイイ』
後ろをベルゼブブに任せられるから本当に戦いやすい。コイツがヘマをする訳ねーし、ヘマしたらしたで弄ってやろう。
『だが一番気に入ったのは、“覚悟”がある事だ。口で言うのは簡単だがよ、実際に実行するのは難しい。けどアキラは、覚悟を貫いてきた。己の何倍も強い敵に死に物狂いで立ち向かい、何度も試練を突破してきた。【共存】スキル者に与えられる、過酷な試練をな』
と、あっぶね。
余裕ぶっこいてたら必殺技みたいなのを仕掛けられた。間一髪防いだけど、間に合わなかったらヤバかったな。集中しろ集中。
『アキラ、お前の行き着く
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