第100話立ち上がれ
気合いの雄叫びを上げ、三人一斉に地面を蹴った。
「ムウウ!」
ベヒモスから放たれた触手が迫り来る。
俺達は触手を躱し、斬り払いながら速度を落とす事なく前進する。
「ウルフェンバイト!!」
「ブレイブブレイド!!」
「
「ムゥゥゥァァァァァァァァ」
闇の顎が肉を喰い千切り、真紅の斬撃が肉を断ち、漆黒の円斬がズタズタに肉を切り裂いていく。堪らずベヒモスは悲鳴を上げた。
まだだ、攻撃の手を緩めるな。奴に隙を与えるな。
4本の尻尾に漆黒のオーラを纏わせる。間髪入れずに尻尾による連撃を繰り出した。
「
肉を叩く。叩き続ける。
違う場所では、神崎とデュランが技の準備を進めていた。
「エターナルブレイブソーーーード!!」
「臥龍雷鳴!!」
解き放たれた光と闇の斬撃波が、大気を破壊しながら突き進む。抵抗しようとベヒモスは触手を放つが、莫大なエネルギー波の前に跡形も無く消し飛んだ。
いけ、いけ!いけ!!
「「「ウゥゥォォォォオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」」
全身全霊を込めた俺達の一撃は、ベヒモスの巨体を半分以上も消し飛ばした。復元が始まっているが、前より回復速度が遥かに遅い。奴もエネルギーの貯蔵が尽きかけているんだ。あともう一押しで倒せる。
「はぁ……はぁ……クソ、あともう少しだってのによ!」
つい愚痴を吐いてしまう。
終わりが見えて喜ぶのも束の間、ついに限界が訪れてしまった。
エネルギーが切れ、解放していたスキルが強制的に解除されてしまう。攻撃力も大幅にダウンだ。
「ガンバッタ、ケド、トドカナイ」
「俺はまだ諦めない!二人を助ける為に、お前を倒す!!」
「勝手に終わらしてんじゃねえぞクソったれがぁ!!蜘蛛糸、フィーラーナイフ!!」
「ムダ」
黒糸の伸縮移動で接近し、触手ナイフで攻撃しようとしたが、ベヒモスから溢れる圧倒的物量の触手の前に成す術もなく殴打の嵐を受ける。
「ごふっ!」
「がっ……ぁあ!!」
「影山ぁぁ!!」
「勇人ぉぉ!!」
痛ぇ……辛ぇ……意識が飛びそうだ。
骨が折れたか?腕が曲がったか?全身が痛過ぎてどうなってるのかも分からねぇ。
クソッ……どうやって勝ちゃいいんだよ!
「コレデ、オワリ」
地面に這い蹲る俺と神崎にトドメを刺すべく、ベヒモスが巨大な触手を放ってくる。アレに押し潰されたら、間違いなく死が訪れるだろう。
だが今の俺達は立ち上がる事も困難なほど満身創痍。回避は……不可能だ。
「ふざっ……けるな!!」
「ぐ……ぉぉおお!!」
ここまで来て死んでたまるか!
ここまで来て諦めてたまるかよ!!
顔を上げる。
拳を握り締める。
隣にいる神崎だって立ち上がろうとしている。まだ諦めてない。まだ戦おうとしている。
そうだ、俺達はこんな所で諦める訳にはいかねーんだよ!!
「シネ」
触手が眼前に迫る――瞬間、
「少年達よ。立ち上がれ」
死霊騎士デュランが間に入り、巨剣で触手を受け止めたのだった。
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