第73話お前達とッ
――ダンジョン38階層。
この階層で出現するモンスターは変わらないが、一度に5体のモンスターが出現する。
「「ゥー」」
「「ケケケ」」
「キシャァァ」
キラーアーマー2体、リッチ2体、デススパイダー1体と遭遇する。あっ、これ厄介なパターンだ。
「アロー」
「ゥー!」
「やっぱそうきたか……」
リッチを狙ってアローを撃ったのだが、キラーアーマーの盾によって弾かれてしまう。
デビルアイもそうだったが、味方に壁役のモンスターがいると倒すのに手間と時間が掛かってしまうんだよな。
「うぐッ!?」
「麗華ッ」
「……わたくしの事は構いません。晃はモンスターに集中して下さい」
「……分かった」
リッチによる状態異常を掛けられた麗華。2体同時なのか定かではないが、とても苦しそうで尋常じゃない程の汗をかいている。
早めに倒さねーとぶっ倒れちまうかもしれない。
「蜘蛛糸」
「ゥー!?」
右手から黒糸を放ち、伸縮移動によってキラーアーマーとの間合いを潰す。慌てて剣を構える殺人鎧に、俺は怒涛の攻撃を繰り出した。
「フィーラー、ハンマー」
「ウゴッゥゴッウゴォォォ!!」
背中から4本の触手を生やし、更に先端をハンマーに変形させる。触手ハンマーを操り、キラーアーマーをタコ殴りにしてやった。
「グルルッ!」
「ゥー……」
「ハッ!」
「キシァァ……」
ブラックウルフキングも影を操ってキラーアーマーの身体を捻じ切り、剣凪がデススパイダーを斬り刻んでいた。
残るはリッチ2体のみ。
「ナイフ!」
「ガルァ!」
「「ケケェーー!!」」
ナイフを纏った俺とブラックウルフキングが同時に飛び掛かり、2体のリッチを葬る。ドロップアイテムに目もくれず、俺達は急いで麗華の下に戻った。
「大丈夫か」
「ガルッ!?」
「全く二人して……そんなに心配しなくても、わたくしなら問題ありませんわ。少し休めば大丈夫です」
「そうか」
「ガル……」
それを聞いて安堵していると、剣凪が俺とブラックウルフキングを見比べてこんな事を言ってくる。
「お前達、なんか似てるな」
「「…………」」
……どこがだよ。
――ダンジョン39階層。
この階層では一度に出現するモンスターが5体で、新たにオロトロスというモンスターが現れる。ドロップアイテムは『オロトロスの皮』だ。
「「シャァ」」
「「ゥー」」
「ガルル」
オロトロス2体、キラーアーマー2体にスノータイガー1体が現れた。
オロトロスは双頭の巨大な蛇だ。しかもニョロニョロして動きが素早いぞ。
「シャァー!」
「ナイフ」
オロトロスが牙を向けて迫って来たので、ナイフで首を刎ねる。
倒れたのを確認した俺は、もう一体の方に身体を向けた。
『アキラ、まだ終わってねぇぞ』
「え?」
「シャァア!」
「影山!」
殺した筈のオロトロスが突然不意打ちしてきた。身体を逸らす事で紙一重で交わした俺は、触手ナイフでもう一つの首を切り裂く。
……あっぶねー。ベルゼブブが警告してくれなかったら一撃喰らってたかもしれん。
それにしても殺した筈のオロトロスが、何でまた起き上がれてこれたんだ?
疑問を抱いているのが表情に出ていたのか、剣凪が仕組みを教えてくれた。
「オロトロスは一つの首を斬っただけでは死なない。また、胴体を斬っても首が分離して襲い掛かってくる。奴を殺すには、二つの首を落とさなければならんのだ。こんな風にな」
そう言って、剣凪は鋭く疾い斬撃でオロトロスの双頭を断ち切った。
へぇーそうだったのか、面白いモンスターだな。殺すのには面倒だけど。
「後は……」
「残りのモンスターはわたくしがテイムしましたわ」
「そっか」
他のモンスターと戦おうとしたのだが、既に麗華が【支配者】スキルの強制テイムによって従えていた。
次の階層はいよいよ40階層で階層主と戦う事になるからな。きっとその備えだろう。
だが40階層に向かう前に、話さなければならない問題がある。
俺は彼女に顔を向けて、
「おい剣凪、約束の39階層だ。お前はもう帰れ」
「……」
帰りの道を指しながら促すが、剣凪は下を向いたまま沈黙している。
おいおい……ここにきて駄々をこねるつもりかコイツ。
「おい……」
「私は戦いたい。40階層も……お前達とッ。頼む影山、戦わせてくれ!」
「……分かった」
「い、いいのか!?」
「そのかわり、剣凪の命の保証は出来ない。もし麗華と剣凪が同時に攻撃された場合は、俺は迷わず麗華を助ける。例えそれで、お前が死んでしまったとしてもだ。それでもいいなら、俺は構わない」
「ああ、それでいい。自分の身は自分で守る」
話しを終えた俺は、今まで口を開かなかった麗華に確認する。
「麗華はいいか?」
「わたくしもそれで構いませんわ。剣凪さんの力は頼りになりますからね。」
「ありがとう、西園寺!!」
「じゃあ、行くか」
俺は40階層に続く道を進む。
すると、ベルゼブブが疑問気に聞いてきた。
『あれだけ渋ってたのに、どうしてあの女をアッサリ同行させる事にしたンだ?』
(理由は二つある)
一つ、剣凪が帰りそうになかったから。説得しても時間の無駄だと、諦めの境地に至ったね。死んでもいい覚悟があるなら居ても構わない。
そしてもう一つ。
「…………」
40階層に進むに連れて、嫌な予感が全身を這いずる。
本能が訴えかけてくるんだ。
この先は危険だ、行ったら死ぬぞと。
気が変わって剣凪を同行させた理由は、彼女の力が必要だと思ったから。少しでも戦力が欲しくなった。
「さて、何が来る」
不気味な雰囲気が漂う40階層へ、俺達は足を運んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます