第68話ギガンテス
「ゲハハッ」
「行きますわよ」
「グルル」
「ウー」
「キシャア」
ギガンテスに立ち向かう麗華のパーティーは、15階層中ボスのウルフキングに、ここまでの道中で配下にしたキラーアーマーとデススパイダーだ。
ただ、彼等は普通のモンスターではない。麗華の【支配者】スキルによって強化されているのだ。
「ガルァ!」
先陣を切ったのは狼王。
風のように疾駆すると、瞬く間に敵との距離を潰した。スレ違い様に、鋭爪によってギガンテスの左脚を切り裂く。
――だが、
「ゲハハハハ」
「グルル……」
「堅いですわね」
何かしたか?
そう言わんばかりのギガンテスの様子に、ウルフキングと麗華の表情は暗い。モンスターパーティーの中でも一番の攻撃力を誇るウルフキングでさえ、皮を裂くのがやっとだ。
ならば耐久戦か、反撃覚悟で急所を突くか。
「ゲハァ!」
「ガルッ」
ギガンテスが右手に握る大木を、ウルフキング目掛けて叩きつける。十分に躱せる速度だが、直撃したらひとたまりも無い。それ程の威力を、叩きつけられて砕かれた地面が物語っていた。
「行きなさい!」
「ウー!」
「キシャア!」
麗華が残り2体のモンスターに指示を下す。
デススパイダーがギガンテスの目を狙って口腔から糸を放出し、その間にキラーアーマーが接近。
「ゲハァァ!」
ギガンテスは飛来する糸を左腕で防ぎ、近づいて来るキラーアーマーに大木を振り下ろした。
ズドンッと重音が響き渡る。盾を上に向けて大木を受け止めたキラーアーマーだったが、衝撃に耐えきれず鎧にヒビが入った。強大な膂力によって強引に膝を突かされ、ビシビシッと地面が悲鳴を上げる。
「ガルルルァァァァァ!!」
咆哮を飛ばすウルフキング。
口腔から放たれた衝撃波はギガンテスの顔面に直撃するが、彼奴は口から血を滴らせるだけで大したダメージになっていない。寧ろ、不気味な嗤い声を上げていた。
「ゲハハハッ!」
「――ッ!?」
「キシ――」
突如、ギガンテスが大木を投擲した。己の武器を投げるという予想外の攻撃に反応が遅れた麗華は、側にいたデススパイダーが磨り潰されるのを棒立ちで眺めている事しか出来なかった。
「ガルァ!」
「ウー!」
ウルフキングとキラーアーマーが果敢に攻め立てる。縦横無尽に疾りながら鋭爪を突き立て、巧みな剣撃によって脚を切り裂く。
――しかし……。
「ゲハハハハ!!」
血は出ている。
確実にダメージは負わせている。
なのに、あの不気味な高笑いを聞いていると、絶望が広がり、戦意が失われていくのだ。
「ゲ――」
突如、ギガンテスが屈伸する。
両手を振り上げ――跳躍。
「ハハハハハハハハハッ!!」
「なっ!?」
高く跳んだ巨体の着地先にいるのは麗華だった。
デタラメな攻撃に驚愕した彼女はすぐにその場から離れようとする。
逃げようと背中を向ける弱者に、空中にいるギガンテスは十指を組んでハンマーさながら勢い良く両手を地面に叩きつけた。
「あぐッ!!」
地面がぶっ壊れ、飛び散った岩石の破片が麗華の身体を襲う。
背中と後頭部に岩石が直撃した麗華は、呻き声を上げながら倒れ伏した。
「ガル!」
「ウー!」
ウルフキングが傷ついた主人の下に駆け寄り、キラーアーマーがギガンテスに攻撃を仕掛けて時間稼ぎを図る。
「ガルル……」
「そんな顔をしないで下さる。わたくしなら心配いりませんわ」
額から流れる血をウルフキングが心配そうに舐めとる。
本人は強がっているが、実は今の衝撃で意識が朦朧としていた。正直に言えば、立ち上がれるかも怪しいところだった。
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