第67話勝てよ





「お前の剣技、酷い有様だったな。私が鍛えてやろうか」

「黙れ」


 キラーアーマー1体倒すのに時間も体力も奪われてしまった。

次戦う時はフィーラーでぶっ殺そう。意地とかどうでもいいわ。


 と、俺が開きなおった時だった。

――ズシィィィン――ズシィィィンと、突然地面が大きく揺れる。

あーそういえばここ、3“5”階層だったな。俺と西園寺は察した雰囲気を出しているが、剣凪は「何だこの揺れは!?」と困惑していた。


「ゲハハハハ」

「……デカいな」


 奥から出てきたのは、全高4メートルある一つ目の鬼だった。

頭に一角が生えていて、筋肉がはち切れんばかりに盛り上がっている。右手には大木が握られていた。

どう考えても中ボスモンスターだよな。しかもすげー強そうだし。


『アレはギガンテスだな』

(知ってるのか?)

『まあな。巨人族と魔族の間に産まれた、紛い物だ』

(強いのか?)

『強ぇンじゃねえのか』


 へー。

ベルゼブブって結構詳しいんだよな。モンスターの種類とか、スキルについてとか。


「おい、あのモンスターは何だッ?見たこともないぞ!」


 ギガンテスを目撃して衝撃を受けている剣凪に説明をしてやる。


「中ボスのギガンテスだってよ」

「中ボス!?話しには聞いていたが……本当に存在していたとは……」

「えっ?」


 ちょっと待て。

お前らまさか、一度も中ボスと戦ってないのか?


「ああ、私達のグループは未だに遭遇してないな」

「マジかよ……」


 最前線を攻略している神崎グループですら中ボスに会ってないのか。

ショックを受けていると、ベルゼブブが呆れた風に言ってくる。


『言っただろ、中ボスは“稀”に現れるってな』


 いやいや。

それを言ったら俺なんか今回含めて遭遇率100%だぞ。

どう考えてもおかしいだろ。マジで【共存】スキルの不遇が酷くねーか。

まぁいい、文句ばっか言っても仕方ない。気合い入れますか。


「この戦い、わたくしに任せてもらえませんか」


 意気込んでいたら、突然西園寺が申告してきた。任せろって……一人で戦うってことか?


「急にどうした」

「わたくしも、壁を越えたいのです」

「……」


 強い眼差しで俺の目を真っ直ぐに見てそう告げる西園寺。

彼女の覚悟を感じ取った俺は、静かに頷く。


「じゃあ、勝てよ」

「勿論ですわ」


 自信を持った言葉を放ち、西園寺が配下を連れてギガンテスへと向かっていく。

その背中を眺めていると、展開についていけない剣凪が焦りながら俺に問いかけてくる。


「おい、あのモンスターは中ボスなんだろう!なのに西園寺一人に戦わせるのか!?」

「あいつが自分で決めたんだ。だったら俺は、信じて待つだけだろ」

「――ッ!?」


 当たり前の事を言っただけなのに、剣凪は目を見開いて驚愕していた。

まぁこいつはどうでもいいか。

西園寺の戦いに集中しよう。

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