第66話なんか気持ち悪いな
――ダンジョン32階層。
この階層で出現するモンスターはスノータイガーと変わらないが、同時に2体現れる。
「「ガルル」」
「ふん、手を貸してやろうか」
「いらねぇよ。ってか邪魔だから帰ってくれ」
「断る」
「ちっ……」
苛つき過ぎてつい舌打ちをしてしまった。
何故か脳内でベルゼブブが爆笑しているのも腹が立つ。
西園寺といい、剣凪といい、神崎ハーレムの連中は全員こうなのか?全く人の話しを聞かねーじゃねえか。
神崎はよくこんな奴等に囲まれて平気だな。俺だったら3日で発狂する自信があるぞ。
「「ガルルァァァァ!!」」
「フィーラー」
2体のスノータイガーが同時に仕掛けてくる。
俺は背中から4本の触手を伸ばし、スノータイガーを雁字搦めに捕らえた。
苦し紛れに吹雪を放ってこようとするが、その前にトドメを刺す。
「ハリセンボン」
「「ガ……ァァ……」」
触手から幾多もの棘が飛び出し、スノータイガー達を刺殺する。純白の毛並みが真っ赤に染まった雪虎は、数秒後に粒子となって消え失せた。
「アースドラゴンとの戦いから、本当に強くなりましたわね」
「まぁな」
西園寺に褒められて、満更でもない俺。
アースドラゴンという強敵に勝ったからなのか、スキルが解放されたからなのか、はたまたその両方なのか定かではないが、俺の力は以前より数倍パワーアップしている。
特に、魔王の力の威力や操作技術が格段に成長した。そのお陰で、今のような戦い方にもバリエーションが増えたし。
気分良くしていたら、剣凪がややヒキ気味の態度でこう言ってきた。
「お前の力……なんか気持ち悪いな」
「ぶっ殺すぞ」
――ダンジョン33階層。
この階層で出現する数は2体で、新たにデススパイダーというモンスターが追加される。ドロップアイテムは『デススパイダーの糸』だ。
「キシャア」
「ガルル」
デススパイダーとスノータイガーと遭遇する。
デススパイダーは意外とデカく、蜘蛛なだけあって外見も不気味だった。
スノータイガーに劣らず動きが機敏なデススパイダーは、左右に移動しながら蜘蛛の巣を張っていく。死蜘蛛が己の領域テリトリーを形成していく中、スノータイガーが剣凪に襲い掛かって行った。
「ガルァ!」
「ふん」
剣凪は鞘から日本刀のような得物を抜くと、短い息を吐きながら一線。スノータイガーを一刀両断に伏した。
(疾ぇ……)
『あの女、強いぜ』
黒騎士デュランの剣技を実際に受けた身としては、今の一太刀はあの野郎と遜色ない鋭さだった。たった一撃で屠る事から、威力も十分だろう。
流石に、神崎と共にダンジョン最前線を攻略しているだけはある。
「お前ばかり手の内を明かすのも申し訳ないからな。どうだ影山、私の剣術は」
「……もう行きましたわよ」
「おい、無視するな!」
後ろで騒いでいる剣凪を無視して、俺はデススパイダーに駆け出していた。
蜘蛛の巣が完成したのか、奴は空中に留まっている。
「キシャア!」
「おっと」
空中から吐いてきた糸を身体を捻って躱す。
「蜘蛛糸」
「キシッ!?」
腹から黒糸を発射し、デススパイダー付近の蜘蛛の巣に付着させ、伸縮移動で接近する。
残念だったな、俺も糸を使うのが得意なんだよ。
「フィーラー・ナイフ」
背中から触手を伸ばす。たがその先端は、ナイフの形をしていた。俺は幾多もの触手ナイフで、蜘蛛の巣を斬り刻む。
「ギッ!?」
「ナイフ」
蜘蛛の巣が無くなった事で落下するデススパイダーを、両腕に纏ったナイフで斬り殺した。粒子になると、『デススパイダーの糸』がドロップする。
『先端がナイフになった事で触手の殺傷力が高くなったな。ヒハハ、お前は面白ぇ使い方をするな、アキラ』
(まぁな)
ドロップアイテムを拾っていると珍しくベルゼブブが褒めてきた。
元々魔王の力は汎用性が高い。最初は使い熟せなかったり威力が低かったりで苦労したが、熟練度が上がった今では工夫次第で多彩な攻撃が可能だ。
この力が単なる付属品なんだから、考えてみると大罪スキルって凄ぇよな。
『ここまで成長させたのはお前なンだぜ、アキラ』
……そうだな。
あれだけ死にそうになりながらも戦ってきた甲斐があるってもんだわ。
――ダンジョン34階層。
この階層ではスノータイガーとデススパイダーが同時に3体出現する。
危な気なく、俺達はこの34階層を突破した。
――ダンジョン35階層。
この階層で出現するモンスターは一度に出現するモンスターが3体で、新たにキラーアーマーというモンスターが出現する。
このモンスターはドロップアイテムが無く、代わりに財貨がドロップする。
「キシャア」
「「ウー」」
デススパイダー1体と、キラーアーマー2体と遭遇する。
キラーアーマーは、右手に剣を、左手に盾を携えた
「ナイフ」
「ウー!」
右腕にナイフを纏い、1体のキラーアーマーに接近。斬撃を繰り出すと、反応され防がれてしまう。その後も続けてナイフを振るうが、剣と盾を巧みに扱われて受け流されてしまっている。
何だこいつの剣技、上手くねえか。
「キラーアーマー如きに何を手間取っている!剣の使い方が酷いぞ!」
『ヒハハ、言われてるぜアキラ』
五月蝿いよ。
俺がキラーアーマーの相手をしている間、剣凪はもう1体のキラーアーマーを斬り伏せている。さらにウルフキングが、デススパイダーを八つ裂きにしていた。
俺もナイフ以外で戦えばいいだけの話なのだが、なんか悔しいので意地でもナイフだけで倒してやる。
「うおぉぉぉぉおおお!」
約2分後に、俺は
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