第59話どっちが悪だがわかンねーな
「うるせぇ!」
「死ねぇ!」
「オラァ!」
「フィーラー」
「「ガハッ!!」」
話を無視して問答無用で襲いかかってきた下っ端共を、5本の触手を操り捻り潰す。
何の
「何なんだお前は!?私の店にこんなことしてただで済むと思っているのか!?」
下っ端共をあらかた片付けると、店の奥からハゲたチビデブのおっさんが怒鳴り込んできた。
なるほど、こいつが奴隷商の親玉だな。見た目が如何にもって感じだし間違いなさそうだ。
「お前が拉致った魔族を今すぐ返せ」
「何をふざけた事をッ!!貴様はどこの組織の人間だ。何故私の邪魔をする!?」
「お前が拉致った魔族を今すぐ返せ」
「もういい!ガズ、バリアン、今すぐこいつを殺せぇぇ!!」
話を全く聞いてくれない親玉が、地団駄を踏みながら二人の名前を叫ぶ。その刹那、奥から二人の屈強そうな男が現れた。
「おいおいゴルドの旦那ぁ〜、元Bランク冒険者の俺達が出張らなきゃいけねえー相手なのかい」
「ったく、ダラシねーなぁお前等」
「ぅぐッ……」
二人の男は文句を垂らしながら近付いてきて、倒れている下っ端の顔を蹴り飛ばす。
『少しはやりそーな奴等が出てきたな』
(ああ)
だけど、こうなる事は予測していた。
こんな非合法な事を平気でしている奴等が、武力を持たないのも可笑しいしな。
ただこの二人が、どれだけ強いのかは見当がつかない。
集中しよう。ここからが本番だ。
「高い金で雇っているんだ。さっさと私の邪魔をするアイツをぶち殺せ」
「へいへい」
「仕方ねー、やるかぁ」
ガズとバリアンと呼ばれた男達が、気怠そうに武器を構える。
ガズは槍で、バリアンは両手ナイフを逆手に握っている。その構えは堂に入っていて、明らかに戦い慣れていた。
『来るぞ』
「死ねや」
一斉に襲いかかってきた二人。
バリアンが逸早く俺の側面に迫り、真正面からガズが槍で刺突してくる。彼等の素早い攻撃に対し、俺が構えることは一切無かった。
「「――なっ!?」」
驚愕する二人。
こいつ等が放った攻撃の切っ先は黒鎧に触れる寸前に止まっている。いや、俺が止めたのだ。
「何だ……身体が動かねぇ!」
「どうなってやがるッ!?」
己の身体が思い通りに動かず戸惑う二人。
その仕組みは、蜘蛛糸にある。
奴等が攻撃を仕掛けてくる前、俺は自分の周囲に極薄の蜘蛛糸を張り巡らせていたのだ。もし奴等の膂力が蜘蛛糸の強度を遥かに上回っていたら危なかったかもしれないが、結果はこの通りである。
ここまで上手くいったのは、奴等が俺の能力を把握していないからだ。もし知っていたら、もっと警戒する筈だったからな。
さて、捕まえたことだし早速無力化するか。
「蟻地獄」
「「ぐっ――」」
足下から黒スライムを広げ、二人の両足に絡みつかせる。泥沼から小さな拷問器具が現れると、俺は開いていた右手を強く握り締めた。
「アイアンメイデン」
「「ぎぃやぁぁぁアアアアアアアア■■■■■■■■■■■■ッ!!!」」
拷問器具で両足を磨り潰すと、二人は声にならない絶叫を上げた。
間近で悲鳴を出されるのも五月蝿いので、背中から生やした触手で吹っ飛ばす。
『どう見ても正義のヒーローの戦い方じゃねえな』
(別に正義のヒーローじゃねえしな)
『あのガキにも、この光景はショッキングだったろうよ』
その点は抜かりない。
黒スライムでリミの目と耳を予め隠しているからな。子供にこんなグロ映像を見せられる訳ねーだろーが。
『ソ……ソウカ』
何故かヒき気味のベルゼブブは置いといて、俺は改めて親玉に警告する。
「おい、お前もアアなりたくなかったらさっさと魔族の人達を差し出せ」
「ひ、ひぃぃぃ!!?」
『どっちが悪だがわかンねーな』
「クソ……ガズにバリアンめ!高い金を払っているのに役立たずじゃないか!!い、良い気になるなよ!!おいダリル、早く出て来い!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます