第46話触手

 




 ――ダンジョン21階層。

 この階層に出現するモンスターはガーゴイルという鳥を人型にしたような飛行型モンスターだ。

 手には三叉槍を携えており、アレで上空から刺突してくるのだろう。落ちるドロップアイテムは『ガーゴイルの嘴』だ。


「グアー!!」

「グロウニードル」

「グェ……ッ」


 勢いを乗せたガーゴイルが空中から三叉槍の切っ先を俺に向けて急降下してくる。

 待ち構える俺は黒い長針を纏い、イメージを足して針を伸ばす。射程距離が長いのはこちらで、三叉槍が届く前にガーゴイルの胸を貫いた。

 残念ながらアイテムはドロップせず、ガーゴイルは呻き声を上げながら粒子となる。


「西園寺」

「何でしょうか」

「行ける所までは俺一人でいく。悪いが、基本的には手を出さないでくれ。敵が襲ってきたら反撃しても構わない」

「分かりましたわ。下僕共にも伝えておきましょう」


 ありがとう、と告げて俺は前を向く。

 西園寺の【支配者】スキルによる力の一端で、モンスターを強制テイムする能力がある。

 その能力で彼女は今、ギガントホーンとレッドバードとウルフキングの3体を支配下に置いている。しかもスキルで自分のパーティーを強化しているのだ。

 そんな強い奴等が戦ってしまっては、俺の訓練にはならない。だから西園寺には申し訳ないが、自重してもらう事にした。


「次だ」



 ――ダンジョン22階層。

 この階層ではガーゴイルが2体出現する。


「「グァァ!!」」

触手フィーラー

「グェ!?」

「ガ……ッ」


 身体から黒スライムの触手を5本伸ばし、ガーゴイル2体の体躯を次々と破壊していく。

 この攻撃は、化物になった遠藤が使っていた攻撃方法だ。俺も使えるかと思って試してみたが、案外上手くいったな。

 数が多いので操作は難しいが、使い勝手も良いし慣れていければ十分戦力になる攻撃手段だ。これからドンドン使っていこう。

 ビジュアルはちょっとアレだけどな……。


「次」



 ――ダンジョン23階層。

 この階層ではガーゴイルと、人面樹じんめんじゅという不気味な顔がある木のモンスターだ。

 木の表面に顔が描かれており、外見はかなり怖い。

 ドロップアイテムは『人面樹の葉』である。このアイテムは薬草の元にもなるから、ドロップする事を祈りながらぶっ殺そう。


「グァ!」

「キシシシシ」


 ガーゴイルと人面樹と遭遇する。

 三叉槍を掲げながら、地面を滑空するように突っ込んで来るガーゴイルに、不気味な奇声を発しながら人面樹が枝を幾つも伸ばしてきた。


「フィーラー、蜘蛛糸」


 身体から黒い触手を発現して枝を迎撃しつつ、指先から黒糸を射出してガーゴイルの額に付着させる。


「どっっっせい!!」

「グェ……!!」


 背筋に力を入れ、釣りの動作で高く持ち上げると、大声を出しながらおもいっきり地面に叩きつけた。

 衝撃で悶絶しているガーゴイルの真下からニードルを突き上げてトドメを刺す。


「キシャアアアア!!」

「ナイフ」


 生き残っている人面樹は枝の数を追加すると、一斉に仕掛けてきた。

 俺は両腕にナイフを纏い、迫る枝の軌道を見極め、斬り刻みながら少しずつ前進していく。


「ハァ!!」


 鼻先まで近付くと、横一文字に胴体を斬り裂いた。

 呻き声を上げながら消滅する人面樹。

『人面樹の葉』がドロップし、俺はラッキーと喜びながら拾ってアイテムポーチに仕舞った。


「ふぅ……」


 考えてみると、俺も強くなってるな。

 飛来する枝を見極めながら前進するとか、常人の成せる動きじゃない。転生する前の自分だったら全く考えられないな。

 それに、黒スライムというか魔王の力の威力も上昇している。気の所為かもしれないが。


『気の所為じゃ無ぇぞアキラ。オレ様の力は確実に上がっている、力の操作技術もな。それはモンスターを倒し経験値を得ているからだ』


 成る程。

 やっぱりモンスターを倒すと強くなれるのか。そこはゲームみたいだな。


『ただ、戦闘技術や力の操作技術の進歩はアキラ自身のモノだ。それに対しては自信を持っていいぞ。お前の成長速度にはオレ様も少し驚いている』


 そうか、そう褒められると嬉しいな。

 それじゃあまぁ、気分良く進みますか。

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