第44話よく見ると顔も悪人面だな
「おい、遠藤達が死んだって噂知ってるか?」
「はぁ!?マジで!?そんな話聞いてねーぞ、モンスターに殺されたってのか?」
「いや、殺したのはモンスターじゃなくて……どうやら影山らしいぞ」
「影山……って、あの影山か!?どうしてアイツが遠藤を殺す事になるんだよ」
「何でも、遠藤が先に影山を殺そうとしたらしいぜ。それを返り討ちにしたって訳さ」
「そもそもどうして遠藤が影山を?ほら、九頭原とかなら分かるけどよ……」
「そんなもん俺も知らねぇよ。ただここ最近、遠藤が影山にイラついてちょっかいかけてるのは何となく感じてたけどよ」
「へー」
「何にしても生徒同士の殺し合いとか、物騒になってきたな」
「俺達も気をつけなきゃな」
◇
「ねぇ、E組の生徒が四人死んじゃったんだって」
「あっそれ私も聞いたよ。確かE組の影山って奴が殺したんでしょ?」
「生徒が生徒を!?……っていうか、影山って誰だっけ?」
「ほら、E組にいたじゃん。皆が強いスキルの中、【共存】スキルっていう王国の人も聞いた事がないようなゴミスキルで、場の雰囲気が一瞬シーンとなった奴が」
「あー、そんな生徒いたねぇ。で、なんでそんな弱いスキルの生徒が同じクラスの人を殺してるの?」
「さぁな。ただ第一発見者は神崎グループらしいぜ。アイツらによると、探索帰りに遭遇した時点で、E組の遠藤って奴等はもう死んでたそうだ」
「マジか〜。で、その後どうなったんだ?」
「神崎達が訳を問い詰めたらしいんだけどよ、そしたら影山は自分がやったって自白したらしいぜ」
「ガチの殺人じゃん、ヒクわー……。じゃあその影山君って子は、王国側に捕まって檻の中……とか?」
「それがさ、話がややこしくてよ。影山は正当防衛って言ってんだ。つまり、先に遠藤達が影山を殺そうとしたってことだな」
「へーそうだったのか。そりゃ四対一で殺されようとしてんだもんな。俺でも抵抗するわ」
「でも、影山君が嘘を言ってるかもしれないじゃん?」
「その点は問題ないみたいだ。王国にいる嘘を見抜くスキル者が尋問して、罪にはならなかったってさ」
「成る程ね。でもさ、よくよく考えてみたらおかしくね?影山ってザコスキルなんだろ。よく四対一で勝てたな」
「ああ、そこは俺も疑問に思ってた。まあともあれ、学生の中から初めて死人が出たのも確かだ。最近気が緩んでたけどよ、ちょっと気を引き締めていこうぜ」
「うん」
「そうだな、まだ死にたくねぇし」
◇
ガツガツ、モグモグ、ゴクン。
「おい、アイツだってよ」
「クラスメイト殺した影山って奴?」
「正当防衛らしいけどな」
「へーそうなんだ。なんか滅茶苦茶食う変な奴だなーって思ってたけど、よく見ると顔も悪人面だな。ありゃやってるわ」
ガツガツ、モグモグ、ゴクン。
「あの人がそうなの?」
「うん。マジ怖いよね」
「自分の手で人を殺したってのに、次の日の朝にあれだけ食べれる?普通食欲湧かないよねぇ。キチってるよ」
ガツガツ、モグモグ、ゴクン。
『おいアキラ、さっきから注目されてるぜ。周りの奴等、皆んなお前の話題で持ちきりだ』
ああ?別にどうでもいいよ。
「ご馳走さま」
大量の朝飯を全て平らげ、皿を積み重ねた俺は手を合わせて礼を言う。
さて、腹ごしらえもしたし行くとしますか。
「影山」
「影山君」
「何だよ二人共、俺に何か用か」
立ち上がろうとしたその時、佐倉と委員長に声を掛けられる。
二人共、心配そうな表情を浮かべていた。
言葉を待っていると、恐る恐るといった風に委員長が口を開く。
「その……大丈夫かなって?」
「何が?」
「何がって……それは」
「遠藤達の件だよ。これでもボク達は心配してるんだ、君のことをさ」
『へっ、イイ女たちじゃないか』
そうだな。
こうして心配してくれるのは有難いし嬉しい。
けど――
「俺なら大丈夫だ。それより二人共、暫く俺に関わるな」
「そんなっ!」
「どうして急にそんな冷たいことを言うんだい?まさかボク達に迷惑をかけてしまうとかそんな馬鹿なこと考えてるんじゃないだろうね。もしそうなら侵害だよ」
「違ぇよ。俺が勝手に申し訳なく感じるからだ。少しの間でいい、俺を一人にさせてくれ」
「影山……」
立ち上がり、踵を返す。
最後に、佐倉から問いかけられた。
「本当に、君が遠藤達を殺したのかい?」
俺は振り返らず答えた。
「ああ」
◇
影山 晃の背中を、佐倉 詩織と寺部 静香は、今にも泣きそうな顔で見つめていた。
「影山君、大丈夫かな……」
「ボクにも分からない。あんな顔の影山は初めて見たし、いつもの彼らしくなかった」
二人は影山の噂を耳にした後、気が気でなかった。
どうして影山が遠藤を殺したのか。
経緯は?理由は?確かにそれも気になるが、一番気掛かりなのは影山の精神状態。
人を殺す。
言葉だけ聞けば他人事だが、殺した本人にとってはどれだけ精神に負荷が掛かるか計り知れない。
もし殺したのが自分だったら……と、佐倉や寺部は考えただけでも吐き気を催してしまうだろう。
「どうしよう、佐倉さん……」
「一先ずそっとしておこう。彼にはベルゼブブ君がいるから、そういう意味では決して一人じゃない」
「そっか、そうだね」
「でも、ちゃんとボク等も見ておこう。いつでも助けられるように」
「うん」
とりあえずの方針は決まり。
そして彼女達は、心に強く誓った。
――ダンジョン1階層。
「おい、今回は」
「何と言われましても、わたくしは影山さんに付いていきますわ。例え貴方から来るなと申されましても、勝手に付いていきますので」
「……」
「それに、あの時わたくしがノコノコ騙されて行かなかったら……」
待っていた西園寺に忠告しようとしたら途中で話しを遮られてしまった。
こいつ、俺が一体何をしたのか分かってんのか?
『ヒハハ。まぁいいじゃねえかアキラ、好きにさせてやれよ』
……そうだな。言っても聞かなそうだし。
それにこう言っちゃなんだが、佐倉や委員長には迷惑かけたくないが、
でも取り敢えず言質だけ取っておこう。
「一応言っておくが、俺と関わってどうなっても知らねぇからな」
「わたくしの行動はわたくしだけの責任ですわ」
「そうか、じゃあ行くか」
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