第34話進捗具合
「今まで気にする暇もなかったんだが、他の生徒の進捗具合はどうなってんだ?E組だけじゃなくて、A組の生徒とか」
「ボクが知ってる範囲でいいなら教えようか」
「頼む」
そう言ってから、佐倉は他の生徒の情報を一つずつ教えてくれる。
彼女の内容は、大体こんな感じだった。
まずはE組男子。
一番勢力があるのは九頭原 雅人率いるカースト上位グループ。不良やチャラい奴が集まっているグループで、リーダーは九頭原だ。
ここのグループは既に三十階層近くまで攻略しているらしい。早いな。
次に、俺と九頭原グループ以外が集まった男子グループ。だから人数は多く十人以上いるが、スポーツ部の連中が纏めている。
リーダーは野球部の遠藤 隆司だ。
このグループは、二十階層前半を攻略している最中らしい。俺はもうすぐ追いつくな。
最後に俺一人のグループ。
今、佐倉に伝えたように二十階層を攻略したばかりだ。
次にE組女子。
委員長こと寺部 静香がリーダーの女子グループ。このグループには佐倉もいる。
ブラックオークキングの件で攻略が止まっていたが、委員長の説得のお陰で塞ぎ込んでいた女子生徒を復帰させ、十二階層を攻略中。
そしてクラスカースト上位の女子グループ。リーダーは黒沢 環奈だ。
十階層の階層主、オークキングとの対戦で心が折れダンジョン攻略を諦めていたが、誰かに説得されて四階層辺りでモンスターを狩っているそうだ。
黒沢のグループの話をする時、何故か佐倉に軽く睨まれたが目を逸らしておいた。
A組については、佐倉も情報を余り持っていない。
だが、E組のようにハッキリとグループが男女で分かれておらず、男女混合グループで仲も良いそうだ。
流石、A組は優秀だな。強大な力を手に入れたにも関わらず、増長せず理性的な行動を取れている。それも、やはりあの男の存在が大きいのかもしれない。
A組の大黒柱といったらこの男だろう。
【勇者】神崎 勇人がリーダーの、ハーレムグループ。驚愕なのは、男子は神崎だけで他の生徒は彼の事が大好きな女子しかいないという事だ。
めっちゃギスギスしてそうだが、神崎が上手く纏めているらしい。俺が神崎だったら胃がキリキリして寝込んでるな。そう思えば、彼のコミュ力は偉大だと感心してしまう。
神崎グループは既に四十階層の階層主まで攻略しているそうだ。このグループは強いのが神崎だけではなく、ハーレムメンバーも【聖女】や【賢者】、【剣妃】といった強大なスキルを有していてチートレベルで強い。
ただ、そんな神崎のグループも四十階層の階層主には手こずっているらしい。今までは【支配者】スキルの西園寺がメンバー全員のステータスを上昇させるバフを行なっていたから楽に勝てたが、三十階層の階層主の件から彼女がグループから一時離脱したことから倒すのに難航しているんだそうだ。
西園寺も【支配者】スキルを使い熟してきてるし、俺なんかに構ってないで神崎の所に戻ればいいのに。
他のA組の生徒は、余り情報が出回っておらず佐倉も詳しくは知らなかった。
けど、どのグループも四、五人で纏まっていて、ほとんどが二十階層後半から三十階層前半まで攻略しているそうだ。本当に優秀過ぎる。まぁスキルの性能差もあるかもしれないが。
「ボクの知ってる情報はざっとこんな感じかな。力になれたかい?」
「ああ、凄く助かった。また何か分かったら教えて欲しい」
「ボクもそんなにお人好しじゃないよ。今回は特別サービスだけど、次回からは対価を頂きたいね」
「対価?」
佐倉がこんな風に何かを要求してくるのは珍しいな。まぁいつも助けて貰ってるし、俺が払える対価であるなら何でもしよう。
まずは何が欲しいのか聞いてみるか。
「例えばどんな?」
「そ、それはだね……」
中指でメガネの位置を調整しながら、恥ずかしそうに言い淀む佐倉。えっなにその可愛い反応。もしかしてエロ同人みたいなことされちゃうのか?俺的にはバッチコイだけど。
「市場で、買い物に付き合って欲しい……」
「買い物……?」
そんな簡単な事でいいならぜひ付き合うが、その前に一つ疑問が浮かぶ。
俺達学生、異世界の転生者は基本的に王宮から外に出てはいけない。王様にそう頼まれていたからだ。
その代わり、王宮でも便利な生活を過ごせるように簡易的な換金所や食堂、道具屋や部屋を急遽用意してもらっている。
なのに何故、佐倉は突然市場に行きたいと言い出したのだろうか?その辺の理由を尋ねると、彼女は「それは……」と言って、
「昨日解放されたんだ」
「何でだ?」
「それは……生徒達の精神状態が芳しくないからだと思う。ダンジョンでの命懸けのモンスターとの戦闘、王宮に閉じ込められている閉塞感。その負荷が積もりに積もって、今の生徒達はメンタルが大分やられている。男子はより暴力的に、女子は引き篭もるようになってきている。それを見兼ねた王様が、気分転換に市場の出入りを許可したんだ」
へー、全然知らなかった。
でも、それは良い案かもしれない。正直言うと、俺も王宮は牢獄のように感じてたからな。息が詰まるというか、いつも誰かに見張られている気がしていた。
「そっか、じゃあ今から行くか」
「うぇ!?」
市場に行こうと提案すると、佐倉は変な声を洩らして驚く。
「どうした、今日はやめとくか?」
「いや……君がいいならぜひ行きたいのだが、ダンジョンの方はいいのかい?」
「ダンジョンは休みだ。俺も外の世界を見てみたい」
「……分かった。行こう」
おうっと頷いて、俺は急いで残りのご飯を食べるのだった。
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