第27話案外タラシなンだな
激闘を繰り広げたウルフキングをあっさり西園寺麗華に強制テイムされて、決着を濁された俺は若干モヤモヤした気分を抱いていた。
あれだな、これがNTRれた奴の気持ちかもしれない。
これ以上の攻略は無理だと判断し、俺と西園寺は王宮に帰還する。
換金所のオジさんに戦利品を渡し、かなりのお金を受け取った。このお金で、そろそろ俺も備品を買い揃えた方がいいかもしれないな。
今までは小さなリュックにアイテムを詰め込んでいたが入らなくてなってきてるし、服は何度破れたか数えてない。ボロボロの学生服は大事に取ってあるが、他の服はごちゃごちゃに放置している。
王宮が転生者用に用意した売店にでも行ってみるか。
何故か随伴する西園寺に王宮にいる治療師に傷を治してもらい――勿論金は払った、強引に西園寺が――、早めの夕食を取った後、売店に向かった。
未だに西園寺が付いてきているのが謎だ。
服を買い、一応短剣も買っておく。前買った剣は西園寺に渡したまんまだったからな。あれ、そう言えば返して貰ってねえや。まあ別にいいか、安いやつだし。
防具は……どうするか。もう少し金が貯まったら一式買おう。
次に大きめなリュックを買おうとしたら、西園寺に止められる。
「待って下さいまし、リュックならわたくしがあげますわ」
「え……いや、そりゃ悪いだろ」
「構わないですわ。余ってますから、使わない方が勿体無いですわ」
「そうか、それなら遠慮なく頂こうかな。ありがとう」
ラッキー、これでお金を使わなくて済んだ。
リュックは明日持って来てくれるらしい。
……え、お前明日も来んの?
――次の日の朝。
朝食をたらふく食べたのに、満腹感が満たされなかった。
『ヒハハ、そろそろ生きた肉を喰わねえとな。今日はオレ様にも代わってくれよ』
分かったよ。俺だっていつまでもこの飢餓感は感じたくないしな。
と、ダンジョンに向かう前に俺はやる事があった。食堂を捜しながら、お目当ての人物を見つけたのでそいつの隣に座る。
「おはよう」
「げっ……影山」
クラスでもカースト上位だった黒沢環奈に挨拶をしたら滅茶苦茶嫌な顔された。
げっ……てお前、その反応は傷つくだろ。集まっている他の女子達も、何だこいつって目で見てくるし。
「何か用?」
「用って、お前等が欲しいって言ってたんじゃねえか」
「は?」
「ほら」
身に覚えがない黒沢達に、手元にある全財産をテーブルに置く。
彼女達は置かれたお金を見るや否や、驚愕の表情で、
「くれんの?」
「昨日言ってたじゃねえか」
「あんた、私達のこと嫌いなんじゃないの?」
「嫌いじゃねえよ。そりゃ、あん時はムカついたけどよ。あれから佐倉にちょっかい出してねぇみてえだし、ならそれで終わりだろ。アレとコレは別問題だ」
「あんた……変わってるね」
俺は変わってるのか?まあいいや。
黒沢は俯きながらそう口にすると、俺が置いたお金を受け取った。
でも、話しはこれで終わりじゃない。
「だけど黒沢、このままじゃいられねぇぞ。少しは戦えるようにならねぇと」
「何でよ……別にいいじゃん。怖いし、面倒だし」
「考えてみろ、勇者……じゃなくて神崎がダンジョンを攻略して消滅させたら、王宮にとって俺達の価値は無くなる。この先どう生きるか、何が起こるか分かんねーんだ。生きていく力はきっと必要になってくる。黒沢だけじゃない、お前等もだ」
他の女子達にも向けて忠告する。
彼女達に述べたことは俺も日頃考えていたことだ。
俺達転生者は、ダンジョンを攻略し消滅させる為にアウローラ王国に転生させられた。
なら、ダンジョンを攻略した後、役目を終えた俺達はどうなるのか?
この国は今、帝国と魔族の国と戦争していると王様は言っていた。スキルという絶大な力を与えられた転生者は、戦争に駆り出される可能性がなきにしもあらずだ。
一度死んだ俺達が地球に戻れる訳でもない。だからこの異世界で懸命に生きていくしかないんだ。いつ死ぬかも分からないこの過酷で残酷な世界で。
「強くなるしかない。幸い、お前達にも使えるスキルはあるんだろ?ダンジョンはどこまで進んだんだ」
問いかけると、代表で黒沢が教えてくれる。
「九階層……までは余裕だったんだけど、十階層のボスと戦って、皆んな怪我して……逃げた。あれから怖くてダンジョンには行ってない」
「じゃあ十階層には行かなくていい。三でも四階層でもいいから、戦う力を身につけろ。逃げてちゃ始まらない」
「……でも」
「何かあったら協力する、そん時はなんでも言ってくれ。だからまずは、自分達で話し合ってよく考えるんだ」
じゃ、俺はもう行くから。
そう告げると、黒沢に待ってと止められる。
「影山……ありがと」
「ああ、頑張れよ」
『アキラ、お前って案外タラシなンだな』
ベルゼブブに可笑しな発言されて驚く。
は、俺がタラシだって?
年齢=彼女無しの俺がタラシな訳があるか。
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