第6話暴食の魔王ベルゼブブ
「暴食の魔王……ベルゼブブ」
『アア』
「やっと分かった。ゴブリンに喰われた俺が生きてるのも、ずっと治らない不可解な飢餓感もお前の仕業なんだな」
『話が早くて助かる』
虫の顔――ベルゼブブが肯定する。
恐怖で心臓が破裂しそうな俺は、得体の知れないナニかに単刀直入に尋ねた。
「お前は何だ」
『分かり易く云うと“意思のあるスキル”、一言なら“寄生虫”』
寄生虫って……じゃあ俺は、既にこいつに寄生されちまったのか?
『ソウダ』
「もしかして今、心の中を読んだのか」
『心の中だけじゃない。オレ様はお前の記憶を全て知ってる。影山晃、高校二年生。好きなことは寝る、嫌いな物は馬鹿な人間。好きな女のタイプは巨乳、メガネ、黒タイツ。ちょうど同じクラスの佐倉詩織がどストラ「だぁーー!!分かった、分かったからそれ以上言わないでくれ!!」
恥ずかしい!ていうか、自分の記憶を見られるとか発狂もんだぞ。プライバシーが何処にもねぇじゃねえか。
頭を抱えて絶叫していると、クツクツとベルゼブブが可笑しそうに笑っている。
「何が可笑しいんだ。こっちは泣きそうだってのに」
『なに、今回の宿主は面白い奴だと思っただけだ』
「今回の……?」
『寄生したのがお前だけだと思ったか?』
「今までの宿主はどうなったんだよ」
『死んだ。戦争で死んだ奴もいれば、寿命を全うして死んだ奴もいた。あぁ、泣き声が五月蝿くてオレ様が喰った奴もいたな』
怖っ……。喰ったって、宿主にそういう事が出来んのかよ。寄生された時点で生殺与奪の権利を握られてるじゃねえか。
『そう脅えるな、少なくとも今はアキラを喰ったりしない』
気安く名前で呼ぶんじゃねえよ。
「お前の目的は何だ。どうして俺に寄生した」
『そう焦るな。今は目的を教えられないが、寄生した理由は教えてやる。オレ様がアキラに寄生したのは、お前が【共存】スキルの持ち主だからだ』
「【共存】スキルが?」
異世界に転生してから俺を蝕んできた役立たずのゴミスキルが、ベルゼブブが寄生した理由だって?
こんな化物に寄生されなきゃならないなんて、やっぱり屑スキルじゃん。ツいてねーわ。
『“大罪スキル”は7つあるが、【共存】スキルを持つ宿主にしか寄生出来ない。それ以外にも強引に寄生することは出来るが、すぐに肉体が滅んじまう』
「待て、お前みたいな奴が7ついるって言わなかったか?てことは、比率的に【共存】スキルを持っている奴も7人いるのか」
『理解力が高くて助かる。お前は今までの宿主の中でも有能だな』
そりゃどーも。化物に褒められても大して嬉しくねーけどな。
それにしても、【共存】スキルの持ち主が俺以外にも6人いるのか。苦労しているのが俺だけじゃないと知って少しだけ心の靄が晴れる。
『新しく出現したダンジョンでオレ様は目覚め、アキラを見つけた。大罪スキルは、自ずと【共存】スキルに引き寄せられるからな。そして小鬼に喰われて弱っているアキラに寄生したという事だ』
「寄生した理由は分かった。お前は俺をどうしたいんだ?」
『どうもしない。アキラに力を貸すだけだ。魔王の力をな』
力を貸す?そんな上手い話がある訳がない。
こんな悪魔みたいな面をしている奴が、何の対価も見返りもなく力を貸してくれるはずがねえ。
魂喰わせろ、肉体を乗っ取ってやる。そう脅されてもおかしくないんだ。何を企んでやがる。
『そう警戒するな。力を貸すのは本当だ。アキラにデメリットがあるとすれば、常に空腹に襲われるぐらいだ。そうするとアキラと繋がっているオレ様も腹が減る。だから強いて言えば、たらふく餌を食べてくれ』
「飯を食べる……それだけか」
『アア、今の所はな』
「分かった……」
許したくないけど、寄生されちまった後にグタグタ文句を垂れても仕方ない。全部【共存】スキルが悪いんだ。
こうなったら開きなおっちまおう。
力を貸してくれるというし、この糞ッタレな現状を打破するには使わない手はない。魔王というんだから相当強いんだろうし。
喰い殺されないように、飼い慣らせばいいんだ。
「よろしく頼むぜ、
『こちらこそ、
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