第2話
「あぁ、今日も相変わらず暑いなぁ」
体にジャストフィットしたネイビーのポロシャツに、ネーブルオレンジのハーフパンツ。足元は外国製のウッディなサンダルを身に付けた男が、汗を拭きながら島に続く橋を歩く。
見上げれば、碧空に一筋の飛行機雲。太陽は一番高い位置から昼を告げる。塩気を含んだ風が汗ばんだ肌に心地よい。
(さすがに夏のこの時間帯に歩いているのは俺くらいか……)
サングラスを少しずらし、目を細めながら前方に視線を移す。
この橋を渡れば、最近観光地として知名度を上げてきた「瀬中島(せなかじま)」だ。昔からある草野球場や、ビーチでのバーベキューで週末にぎわう。レトロ感あるバッティングセンターも健在だ。
さらに海沿いに進むと、斜面から海に向かって放射状に延びる白亜の建物が突如現れ、風景が一変する。
ここが、新たな観光スポットとして注目を浴びている「ナミカジテラス」だ。
飲食店やカフェ、地元ならではの植物を使ったコスメや職人手作りのグッズ、リラクゼーションサロンや無料の足湯がある。俺のお気に入りは、丘の上に立つリゾートホテルだ。
ああ。週末に行ったときは最高だったなぁと男は目を閉じる。
サウナのロウリュ良かったなぁ。露天風呂から見える夕日が絶景で長湯してしまったっけ。そして、待ちに待った風呂上がりのビール!
喜びいっぱい、ジョッキに口を付けようとした刹那、轟音でジョッキがかき消され、灼熱の橋の上に引き戻された。
ああ、このロウリュみたいな暑さが見せたマボロシか。男は肩を落とした。
ビールジョッキを奪った轟音の主は、隣接する空港に着陸する寸前のジェット機だ。この橋のギリギリ上を通過するので、迫力が凄い。航空機ファンや映え写真目当ての若者の間では有名なスポットだ。天候などにより向きが変わるのでここで着陸が見られるのはラッキーだと思った方がよい。
昼と夜でも印象が違うから是非両方とも見てほしい。
……俺は瀬中島の観光大使か。誰よりもプレゼン能力高いんじゃね?
そうだ。こんなにアピールしたんだから、アイツに宣伝費払ってもらうか。
男はソフトモヒカンの毛先をいじりながら、口笛をヒュっと吹き、白亜の建物目指して歩を進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます