カラスの鳴き声と思い出
コンビニを出ると、カラスが餌を求め鳴く声がする。その餌は食べ物なのか、それとも嘲笑う対象を見つけ仲間内で笑い合うのか、そんなことが頭を過ぎる。
僕は煙草に火をつけ顔を歪め笑う。小さく暗い声が口から溢れる。初恋を引き摺りすぎるとカラスにさえ笑われるのかとひとりごちる。
僕は今日も交差点へ行く。初恋の女の子と共に下校し、少し止まって話し、別れた場所に。「また明日ね」と毎日言い合った場所に。
その明日が来ない。もう何年経つだろう。顔も声も思い出せなくなった。いつの間にか就職をした。仕事帰りは毎日その交差点付近に自転車を停め、煙草を吸いながら夜風を浴びる。彼女が待ってなどいるはずがないことはわかっているのに。
今日もカラスが鳴いている。嘲笑ってくれこんな俺を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます