第3話 臨死体験=魔法取得
「キャーッ!」
呆然とした瞬間萌美の悲鳴が聞こえ、見ると真っ赤に焼けた熔岩が萌美の周りに降り注そごうとしていた。
しまっ…
「ピーッ!(萌美っー!)」
間に合えっ!
必死で飛び出し萌美の頭上を庇う様に羽を広げる。
一際大きな熔岩が俺に打つかり吹っ飛ばされ…。
ピコンッ!
〈防御魔法を会得しました。
障壁展開しますか?〉
もちろんだっ!
するとさっきまで降り注いでいた熔岩が上方十メートル程の所で弾かれ半径十メートル以内は何も降ってこなくなった。
まるで半円形の透明なドームが俺たちの周りに展開されている様だ。
熔岩の雨は数分で収まった。
しばらくして頭を抱えて蹲っていた萌美が頭を上げ、俺を抱き抱えた。
「ピーちゃん怖かったねー、大丈夫だった?
あんな山がいきなり噴火するなんてねー。
ビックリだよ。」
ゴメンなさい…パパのせいです。
申し訳なくて萌美の目を真っ直ぐに見れない…。
「あっ、ピーちゃん可愛いーっ!
頭に飾り付けてたんだぁー。」
ん?飾り?
ランクルのドアミラーまで飛んで行き全身を見る。
…はぁ…やっぱりどう見てもインコだよな…全身は深紅と黄色の縦ストライプ模様になっている。
頭には深紅と黄色のアホ毛が一本づつ立ってるし…。
それから数日はランクルの周りで魔法の練習をしながら過ごし、萌美と一緒に見える範囲の探索もした。
火魔法の練習の時に萌美に岩山破壊の事がバレてこってり怒られた。
怒る時だけパパ扱いするのはズルいと思います。
防御魔法は多少離れていても有効らしく森の探索に出かけている間はランクルの周りに障壁を展開したりした。
落ち着いてから岩山跡を探索したら結構な量の綺麗な宝石を見つけた。
もちろん萌美に言って全て拾い集めた。
「はぁー、久しぶりのお風呂だぁーっ!」
萌美が素っ裸で川に飛び込む。
正確にはお風呂では無く水浴びですけどね、更には湯船なんかもなく只の川に入ってるだけなんだけど。
探索中に森の中に川を見つけたのが昨日。
安全が確保できそうだったので晴れた今日、朝から水浴びに来た。
「ついでにパンツと服も洗っちゃうね。」
着替えは幾らかはあるが、そろそろ尽きる。
洗える環境下では洗いながら使う方がいいだろう。
洗濯洗剤は無いからただの水洗いだが。
俺は萌美の頭の上の定位置で周りを警戒している。
とりあえずは見える範囲には危険は無さそうだ。
俺たちがこの世界に来てからまだ危険と思われる生物には遭遇していないので過剰すぎるのだが、ラノベを読み漁っていた俺は注意は怠らないのだ。
「あっ!パンツが…。」
萌美の頭から下を見るとパンツが一枚流されている。
萌美が取りに行きそうになるから羽を広げて萌美の顔を覆い止める。
川は危ないのだ、いきなり流れが変わったり水面は静かでも川底は流れが早かったりするから油断出来ない。
俺は羽ばたきながらパンツを追い、川面に揺れながら流れるパンツを掴んだ…そして水面に引き摺りこまれた…。
「きゃーっ!ピーちゃんっ!」
萌美の悲鳴が聞こえる…。
かんっぺきに忘れてた、俺はインコだったんだ。
小さな身体のインコだ、いくらパンツが小さいからって水を吸って重くなって尚且つ流れに乗ったパンツを簡単に持ち上げる事は出来ない。
ブクブクッ
口を開けると水が入ってくる…溺れて死ぬのかな…萌美…まだ死ねない…。
水の中で羽ばたこうとするが上手く羽が動かない…。
ピコンッ
〈水魔法を会得しました。
同時に重力魔法も会得しました。〉
頭の中にいつものアナウンスが流れ魔法の行使方法も同時に覚えさせらる。
「ビャッ!(行けっ!)」
覚えたての水魔法と重力魔法を行使してパンツと自分自身を水面から持ち上げる。
パンツは水のボールの中にプカプカ浮かんでいる状態で、俺は羽ばたいていないのに空中に浮かんでいる。
そしてスーッと萌美の元に戻った。
「ピーちゃんっ!
大丈夫だった?
水飲んで無い?
苦しく無い?」
「ピッピーッ!(はっはっはパパは大丈夫だ。)」
「ほんっとうに心配したんだからね。
パパっ!
そこに正座っ!」
川縁で全裸の女の子に説教されました。
鳥に正座は出来ないので普通に座って。
「クチュンッ」
「ピッ?(風邪か?)」
まだ暖かいとは言え裸で三十分も説教してたら寒かっただろう。
俺は半分寝てたけど…。
そんなこんなで数日を過ごしながら俺はある疑問の検証をしようとしている。
ある疑問とは、これまでの経験から俺の魔法取得は死ぬ思いをしなければ取得出来ないのだろうか?と言う事だ。
はっきり言っって死ぬ場面には会いたく無い。痛かったり、苦しいのは苦手だから。
萌美が危なかったらその限りでは無いが。
だから、昨夜の萌美の夢で検証の方法を伝えて今に至る。
「パパっ、これくらいでいいの?」
萌美が地面に穴を掘っている。
簡易スコップで十センチほどの深さで三十センチくらいの幅の穴だ。
「ピッピー!(おっ、いいぞ!)」
その穴に俺は横たわり、
「ピーッ!(掛けてくれ!)」
萌美が躊躇いながらも土を俺の身体に掛ける。
一応、三分したら助ける様に言っているから大丈夫だろう…。
…あぁ…お花畑が見える…アレは誰だ…誰かが手招きして…はっ!?
ピコンッ
〈土魔法を会得しました。
同時に混成魔法の憑依も会得しました。〉
埋められて十秒も経たないうちに魔法が取得出来た。
あっ、そうか…人間の感覚で三分の指定したけど俺はインコだったんだ。土に埋められたら息が出来なくなって直ぐに死ぬかもだわな。
危なかった…これからは危ない実験はやめよう。
「ねえ、パパっいつまで私達この場所にいるの?」
この世界に来てから十日以上は過ぎている。
そろそろ食料も心許なくなってきた。
因みにインコである俺やプーの餌は粟などが混合された専用の餌がたんまりとある。
森に行けば果物などもあり多少は生活出来るだろうが人はおろか動物も居ない環境ではかなり不安が残る。
しかし、移動手段が無い。
徒歩で移動するにしても十歳の萌美が持てる装備には限界がある。
良くて二、三日分の食料だろう。
俺の重力魔法で運ぶ事も考えたが、魔法の重ね掛けが出来ないので重力魔法を使っている時に襲われたら萌美を守りきる事が出来ない。
せめて、このランクルが動かせたら楽なのにな…。
ピコンッ
〈憑依魔法を行使しますか?〉
はい?
憑依魔法?
そう言えば土に埋められた時にそんなアナウンスがあったような…。
「ピーッ!(憑依魔法の説明!)」
このアナウンスさんは魔法の行使時や魔法が使えそうな場面になると出てきて説明してくれる便利屋さんだ。
〈はい。
憑依魔法は意志の無い生物か無機物にのみ有効です。
土魔法によるゴーレムがこれに当たります。
魔法生物にも有効です。
今回の主の希望である車輪付き鉄箱に対する憑依も可能です。
憑依魔法の行使方法は………。〉
て、事はランクルを動かす事も出来るかもしれない…。
…憑依…。
…不意に視界が切り替わり、さっきまでいた萌美の頭より高い位置の視界になった。
「ピーちゃんっ!ピーちゃん!」
萌美が叫ぶ。
視線を萌美に移すとインコを両手で抱えながら叫んでいる。
ああ…頭の上からいきなり憑依したからインコの身体が固まったようだ。
…解除…
…目の前に萌美の顔が見える…。
なるほど…
「ピーちゃんっ!
良かった…いきなり倒れるからビックリしたよぉ〜。
グスッグスッ。」
萌美が泣き出してしまった。
萌美…ゴメン…。
その夜、萌美の夢に入り憑依の説明をして…ついでに正座させられて説教されて…明日旅立つ事を説明した。
因みに頭の上のアホ毛は水色と茶色が増えて四本になっている。
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