会社に行く、電車の中で深い溜め息をついた。




「はー。」






周りの視線が、一瞬圭介に集まったが、直ぐに興味はよそに移った。




電車の窓を流れる風景に気をとられている者。




音楽を聞いている者。




携帯電話を見ている者。






誰も圭介の事を気にかける事はなかった。






会社に着いてからも、何度も溜め息をついた、苛々して貧乏揺すり何かもした。




同僚や上司、部下も機嫌が悪そうな人には極力近付かずに過ごすのだ。






人間関係は難しい、不意に出てしまった言葉や態度で、取り返しがつかないほど拗れてしまう時がある。






今の、圭介がまさにその状態なのだろう。




近づかぬ仏に祟りなし、と言う所で誰もが距離を置き様子を見ているのだった。






間の悪い部下が、圭介に話しかけたが、何も起きなかった。




これで、話し掛けられると、


ぞろぞろと続いて話しかけられた。






「圭介さん、機嫌が悪いですね、何かあったんですか?」






なんて、聞いてくる者は流石にいなかった。

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