電車に乗って、ゆらゆらと揺られる二人の女の子がいた。






名前は明美と洋子、二人は祭日を利用して近くの自然公園に向かっていた。






「けっこう駅からあるね、私疲れちゃった!明美は?」






「私もへとへと、何かごめんね、嫌な感じがしたからさ、バス乗らなかったんだ。」






「別に気にしてないよ、あ、見えてきた。」






二人の目の前に広がる、草原。






「わーー広いね、まだ時期が早かったね?


夏になったらお花でいっぱいになってるんだよねここ、そしたらまた一緒に来ようね、明美。」






「うん、…………」


洋子には見えてないんだね、私には薄い色の花たちが見えるよ、しかも花の真ん中から小さな白い手がさっきからこっちに向かって、手招きしてるんだよね。






「どうしたの明美?走ちゃっう。」






「よし、駅まで競争だ。」






「えー、もう帰るのーー。」






あの日見た花の名前を私はまだ知らない、いや、永遠に知りたくない。






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