恐怖




今日私は、友達の家に遊びに行く。






大学のサークル仲間で、凄く元気で明るい、


その娘はたまにしかサークルに顔を出さないが、皆から好かれていた。






マンション






一階のロビーで部屋の番号を押す。




「あ、早かったねー今開けるから。」






私はエレベーターで三階に上がる。






部屋の前まで行くと扉からその娘が出てくる。




「さぁー入って入って。」


大きく手を動かし私を招き入れた。




私は部屋を見渡し話す。


「良いところに住んでるね。」






「え、そう?


なんか安く借りれたよ、大学からも近いしラッキーだったのは確かね。」







広めのキッチンに奥にリビングその他に部屋が一つお風呂もトイレもある、


私は家賃を聞きたくなったが我慢した、そこまで親しくないと思って…






部屋に遊びに来ておいて親しく思えないのは、私に問題がある気がして俯いていた。




「どおしたの!?


実はお姉ちゃんと借りてるの…


って言うか私が転がり込んだんだけど。」






よく分からない気遣いをされている様だ。


「大丈夫気になってないから、


今日お姉さんは?」






「最近、彼氏が出来たのかたまにしか帰って来ないの、


ね、勿体ないでしょ。」






「ね、って言われても。」



それから、しばらくゴロゴロしながら他愛もない話をした。




学校の事や昔の事、時間はあっという間に過ぎ夕方になっていた。




色んな話をしていて思った…


何で私が呼ばれたのかなと…




その時変な事を聞かれた。


「お風呂入る?」




え…


頭が真っ白になりながら一つ頭に浮かんできた事が…


一緒に?




余り親しくない私が呼ばれたのって、


そう言う事だったのかと妙に納得してしまった。






その娘が固まっている私に少しづつ近付く。




どおしょう…






「でね、お風呂入る時にさー、毎回同じ場所に浸かって毎回同じ方向を向いてない?」






あれ、ああ只のお風呂の話をしていただっけだったのか、私は変な想像をした自分が恥ずかしくなった。




「え、とーうん、大体同じ場所に浸かって同じ方向を向いてるし、同じ格好かな?」






その娘は笑いながら。


「ね、そうでしょ、不思議でしょ。」




全然不思議には思わなかったけど。


「まぁー不思議かな。」


と返事をした。



その娘が話す。


「でね、それって反対側にお化けが居るからなんだって、


だから何時も向かい合ってお風呂に入っているんだよ。」






「え、恐い。」


この恐いは話の内容とかではなく、急にオカルト話しをした事に出た言葉で、


しかもつまらない話しでその事に対しても当てた言葉だった。






「ねー、ねー恐いよね私もこの話しされてから、お風呂怖くてさー。」






その娘はちらっと時計をみた。


「あ、あと二人サークルの子来るんだったちょっと迎えに行ってくるね。」






「あ、私も行くよ。」






「駄目だよお客さんなんだからゆっくりしててよ。」




肩を押され座らされた。






私の時は迎えに来てくれなかったのに、と思いながら帰りを待った。






一人で静かな部屋に居ると寂しくなり、テレビのリモコンに手を伸ばした。






ガタッ。






テレビをつける前に何処からか音がした。






静かな部屋がさらに静まる、


私は注意深く耳を澄ました。




静けさの中さっきの音がした場所を探る。






此処に来てから、ずっとリビングに居たから、はじめて部屋を回ることになる。






家主がいない間に部屋を見て回るのは、少し気が引けたが仕方ない…


各部屋を開けて見て回る。






トイレやお風呂も見たが特に変わった所はなかった、


そもそも物音の一つぐらい自分の家だって起こる、


しかも大体が立て掛けて合った本や物が倒れただけ。






私はリビングに戻りテレビでも付けて気を紛らそうとした。






ガリガリ…ガリガリ。






もう駄目だテレビを付ける前にまた音がした。






今度は場所も分かる玄関の方だ。






私はできる限り気配を消し覗き見た。




ガリガリ…ガリガリ。




そこに居たのは。






伸びをして壁に爪を立てる猫だった。






「ねこ?




猫居たんだ。」






猫は私を見るなり走り去り何処かの部屋へ隠れてしまった。






そう言えば昔友達の家に上がった時に、結局飼ってる猫に会えなかった記憶がある。






私は猫とは相性が悪いんだな、と思いながらリビングでテレビを見て帰りを待った。






暫くしてその娘が帰って来た。






「ねぇー、カラオケ行きたいって言って二人とも先に行っちゃった。」






「え、お帰り…


じゃあー行こー。」






…その娘を見たときに、何か違和感を覚えた…


あれ?






猫飼ってる家って…


砂とか餌皿あるはず、私は各部屋を見て回った時にそれらを見付けていない。


  





私は聞いた。


「猫…


猫飼ってるよね?」






その娘は不思議そうな顔をして答える。


「…飼ってないよ。」






私は怖くなってその場で…






寝ころんだ。






猫だけに。


 

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