お化け見たことある?

プー






私の目の前にバスが停まる、


まあ、バス停に居たのだから当たり前だけど…


逆に停まらずに過ぎ去っていったら、


かなりムカつくけど。






私はバスに乗り込む。


「あ、ゆっち(優子)


おはよう。」






「うん、おはよう真姫。」






クラスメートの真姫だ、


真姫はこのバスの始発からのって来る…


このバスは駅を経由して、私たちの学校まで向かう、駅までは混んでいるが、


駅を過ぎたらほとんどが学生に変わる。








「ねぇ、真姫さ始発から乗ってるんだから、イスに座ってたら?」






「え、ダイエットだよ、ダイエット。」






「ふーん。」








私の顔から不信感が滲み出ていたのだろうか、


申し訳なさそうに真姫が話し出す。






「だって、ゆっちが立ってるのに座ってらんないよ。」




「いや、そこは気にせず座ってよ。」






「えー、でも直前まで座って居るから気にしないで。」





実はこんな会話を何度かしている、


真姫は私の親友と呼べる人物だが、


何故か、


気を使う事が多い、その分私が馴れ馴れしくしているが、


それが回りから見て、可哀想に見えてしまう様で、


真姫に私以外の友達が出来ていない。








放課後






私と真姫は部活やクラスの用事で遅くなった。






この学校は山の麓にあり、バスが無くなると交通手段が無い、まあタクシーでも呼べばいいのだが、


学生にはタクシー代は高い。






その為か、この学校には五時には帰宅という暗黙のルールがある。






今は六時になっていた。








「ゆっち、すかっり遅くなったね、


バスまだ有るかな?」






「確か7時があった気がするけど、


早く帰ろう。」






静けさからか、学校には私たち二人しかいないとしか思えなかった、


そんな事は絶対無いのだが…


立地上マイカー通勤する先生が多いので校内に人はいるはず。






私たちは心細さからなのか、気がつかないうちに手を繋いでいた。






ばたばたと廊下を走る、職員室の前を通った時…






気が付いてしまった。








「電気…






消えてる。」








ちょっと先生たち早く帰りすぎだよ、


と思ったが、怖さとは裏腹に何も起きなかった。








校庭








丁度夕日が沈みきって、月明かりと心細い小さな街灯が私たちを照らす。








「…ゆっち、真っ暗ににちゃったね。」






「うん、怖いねいつも通ってる学校なのに、太陽が無いだけで全然違うね。」








私がそう話すと、真姫は繋いだ手をより一層強く握ってくれた。








真姫の気持ちが伝わって来た気がした…


大丈夫だよって。





私がこんなにも怖がりだったなんて、自分でも驚いた、


それより驚いたのは…


真姫の頼りになる安心感だった。






私が真姫の傍に居るつもりだったけど違っていた、真姫が私の傍に居てくれたんだと思った。






バス停






ここまで来たバスは一度上の寺で折り返し、


約十分程で戻ってくる、


バス停に付いた時に上がるのが見えたから、無事に帰れそうだ。








バス停には、私たちしか居なかった…


やはりと言うべきか。






真姫がベンチに座る。


「ゆっちも座ったら?」




「あ、うん。」




いつの間にか、手が離されていた。






「真姫ーなんか凄く怖かったね、何もなかったけど。」






「え…何もなかった…


ゆっち、本当に言ってるの?」






真姫の顔がまるで仮面の様に真顔のまま動かない。 





私はしばらく沈黙する、真姫の表情から、


かなりヤバイものを見た事が読みとれていた、でも聞けなかった。






「…」






「ん、…


ぷぷ、…


あははは。」








突然真姫が笑いだす。






私は真姫が何かにとり憑かれたのかと思い驚いた、


イスに座っているのに腰が抜け尻餅を付いた気分になり動けなかった。








「ごめんゆっち、冗談だよ、


何も見てないよ、あははは。」






「ちょっとー。」






私は軽く何度も真姫を叩いた。








「お化けなんて、一度も見た事無いし、感じた事も無いわよ。」






「私も、お化け見た事無いけど真姫の真顔が怖すぎて…


絶対何か見たって思ったよ。」






「あー笑いそうで大変だったの、そんな変な顔だったの?」






「お化けかと思ったぐらいよ。」






「それは、言い過ぎー。」






その後直ぐバスが到着した。






私たちはバスに乗り込む、


真姫がした冗談のお陰で私はさっきまでの憂鬱な気持ちが晴れていた。






「真姫決めた、


今度からは何が会っても直ぐ帰る。」






「そうだね、


ってもしかして私を置いてくつもり?」






「うん、時と場合によっては、真姫を置いて行くわ。」






「ひどーい。」






今回の事で、真姫との距離が縮まった気がした、特に何もなかったけど。






やはりこの時間だと、乗客は私たちしか居なかった。






「じゃあ、真姫降りるね、


一人で大丈夫?」






「大丈夫だよ、駅に着いたらぎゅうぎゅうになるから、心配しないで。」






プー






私は、バスから降りて真姫に手を振った。






真姫は軽く手を振ると前の座席に向かった。






私はなんとなくバスから目が離せないでいた、


真姫もまさかずっと見ているとは思って居ないだろう。






何もなかったけど、気疲れしてその場から動けなかっただけなんだけど。








ふと気付くと…


バスの後ろのガラスが曇り出した。








「あれ…」








後ろには誰も乗って居なかったはず…


いや、私たち以外の客すら居なかった。










聞こえないはずの音が聞こえた気がした…


キュッキュッと曇りガラスに字を書く指の音。








そして、文字が書かれた。

























…みたな










と、書かれていた。












でも私は…










今も、お化けを見てはいない。



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