第4話 テラやば!? 魔族襲来!?
中庭での訓練はまず体力測定から始まった。立派なライオンのような髭の兵士が言うには、
「どんなスキルがあったとしても、それを使いこなせるだけの体力が無いと話にならん! この〈勇者養成ギプス〉を着けてランニング!」
「次は体幹を鍛える! 剣にしても弓や杖にしても扱うには体幹が必要だ!」
「柔軟だ! 怪我をしては意味がない!」
こうしてクラスメイトたちはヘトヘトになった。そしていざ本日の訓練が終わろうとしたところで、空から声が響いた。
「ナッナッナッナッ! 本当に異界の人間を召喚してたんだナ! まだレベルも低そうだナ! これならば容易! 流石はメガダーク様!」
「何だ!?」
「あれは魔族だ! 皆の者、出会え、出会え〜!」
1日の訓練でしっかり名前を覚えた髭の兵士長ことゼフィロスの号令で兵士が集まった。クラスメイトを後ろへ追いやり防御陣形を組む者と、陣形からはみ出して攻撃魔法を詠唱するものへ分かれた。
しかし空飛ぶ魔族の詠唱開始の方が早かった。
「させないんだナ。『衝撃魔法・<エアブレイク>!」
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあああああッ!」
空から圧縮された空気の弾が降り注ぐ。魔法弾は詠唱していた兵士に正確に直撃し吹き飛ばす。それ以外の弾は適当に乱射され、地面や兵士、そして運悪く花海と小鳥に直撃した。土煙が上がり、周囲が見えなくなった。
追撃の詠唱が始まった。
「……『アリアス・ビヴロ! 王の血を孕み、神使へ呪詛を!<
「させるかよ!」
土煙から飛び出す影が一つ。
「芳樹!?」
「くそっ、見えない!」
お調子者の難波芳樹だ。<勇者>のスキルを得た……もとい<勇者>のスキル群を得た彼は表示されたスキルを信じて魔族へ跳躍し、土煙を抜けた。手の中にアクティブスキル<勇者の剣>の効果による魔族特攻の性質を持つ剣を携えて斬りかかったのである。
だが。
「遅い! 貴様レベル一桁台だな?」
ドンッと芳樹を突き飛ばした魔族。芳樹は墜落した。
「ぐぅ……痛ってぇ……」
そして、呪詛の発動阻止は叶わなかった。魔族の持つ瓶から、血が踊り出しクラスメイト達に殺到した。
土煙のせいで立ち上がった兵士たちの魔法も命中せず、血風は防御陣形の兵士達が発動させていた魔力盾の側をスルーしてクラスメイト達に襲い掛かった。
一方、土煙から吹き飛ばされ、中庭を囲む廊下、そこから謁見の間の方に続く通路に弾き飛ばされていた花海と小鳥は、完全に誰からも見られていない位置にいた。
「小鳥、大丈夫?」
「花海……うん、ソルンが守ってくれた!」
「これくらいなんて事は無いモン!」
「大丈夫ルン!」
「じゃあ、行くよ!」
「「エクサ・コメットテエエル!!」」
花海と小鳥は変身した。
服が表層から順に亜空間に送られ、どこからか出現したのは黒を基調とした紅線模様のマフラーワンピース。次に足元からハイソックスが着装された。そしてスカートが爆発。ふわふわのパニエがスカートをブロックした。右腰に大きなウエストリボンが結ばれ、天地に構えた両手に指ぬきのミトングローブを嵌めて完成。
黒地にピンクを基調とした服に着替えた花海に対し、黒地に瑠璃色を基調とした服に着替えた小鳥。各所のフリルは勇気の証。
髪の色も変わっている。いつもは変身しても髪の色はそのままだったのだが、エイミーとの最終決戦以降変わるようになったようだ。
「星の輝き! <エクサ・ルミナス>!」
「灯す輝き! <エクサ・エナル>!」
「はぁッ!」
早速魔族へ殴りかかるルミナス。クリーンヒット!
一方エナルは星の形をしたビームを呪詛に放ち、すべてを相殺していた。
「ぐぼああああっ!? な、何だ!? 誰だ貴様ら!? レベル一桁台の力では無い……まさか昔に召喚された異界人、勇者か!?」
「私達は星の力の守護者!<エクサ・ルミナス>!」
「そして私は<エクサ・エナル>!
教えて! どうしてこんな事するの!?」
「それは……いずれわかる事だナ! だが一つだけ言わせてもらうのナ!
『魔王・メガダーク様は諸君を待ちわびている』のナ!
そして! 呪詛は完成された! ナ!」
「嘘っ!?」
「エナル、あれって血じゃない!? 塊に<エナル・フォトン>を当てたは良いけど、飛び散ったんだよ!」
「本当だ、やっちゃった!?」
「その呪詛を解くにはメガダーク様を倒すしかないんだナ! 魔王城で待つナ!」
「待って!」
「ルミナス、追いかけよう!」
「それは困るナ。<闇閃光>!」
バンッ!!!
闇の閃光と轟音が辺りを支配した。それは衝撃を伴う閃光手榴弾のようなもので、間近で受けたルミナスとエナルはまたもや廊下まで吹き飛ばされ、気絶してしまった。
そして変身が解け、土煙が晴れた。
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