第3話 私が美人!? ちょっとうれしいスキル確認!?

 宰相アブドゥルに連れられ、クラスは中庭に移動した。

「こうなったらやるしかないぜ! 何でも楽しむ、それがうちの家訓だ!」


 先程までの落ち込んだ顔が嘘みたいに元気になっていく松本 零まつもと ぜろ。どうして元気なのか。それは中庭に向かう前にアブドゥルが説明した内容からだった。


「この世界は<スキル>がものを言う世界だ! <スキル>とは、女神様が人間の隠れた才能を増強してくれることで、強力になった特技のことだ。異界の勇者は必ず強力なスキルを持っている。まずは、中庭に用意された<スキル透視の水晶>で各個人のスキルが何なのか、解明するのだ!」


「俺って何のスキルがあるんだろうな? 勇者とかかな?」

 <スキル>に対して一般的に<職業>を挙げた零に、身軽で平らな女の子、銚子典子は疑問を呈した。

「それ職業でしょ? スキルじゃないじゃん?」

「そうだな典子。お前のスキルなんだろな? やっぱり調子乗り?」

「うっさいな! 人の名前で遊ばないの。ペンネーム、【静寂のゼロ】のくせにー。プークスクス」

「わ、悪かった! や、やややめてくれ!」


 歩きながらそのような話をしていると……クラス全体が、ファンタジーの教養がある者を中心にそのような雰囲気だった。中庭に着いた。中央に水晶が鎮座していたが……正八面体だ。

「水晶っていうから球かと思ってたよ」

「私も丸だと思ってた」


「それでは順番に手を当てるのだ!」


「よっしゃ! やってや「待って!」」


 花海が静止した。

「私が最初にやるよ。なんかいいスキルが出そうなんだよね!」


「え?」

「そうなの?」

「いつもはそんなに先陣切ってやる感じじゃ……」

「そんなによかったのかな。予感」


 花海は松本を静止してパッと手を水晶に当てた。水晶が光り出して……空中に画面が表示された。花海のステータスとスキルが印字されている。

「コスモン。水晶がなんて言っていたか、教えて」


 コスモンの能力、あるいは特技だ。何故か機械の内部処理にアクセスできるのだ。花海には理由は分からないが。


「任せるモン……〈ステータス解析成功〉〈スキル封印完了〉〈スキル使用の許可制処理完了〉〈空間印字〉って言ってるモン!」


〈スキル封印完了〉!? そして、〈スキル使用の許可制処理完了〉!?

 花海の背筋が凍った。これでは必要な時だけ武器を渡されて、後は牢屋にいるような囚人兵みたいなものだ。これをみんなに教えるべきだろうか?

 ひとまずは悩む時間はほとんど無く、空間に花海のスキルが印字された。


<スキル:月下美人LV:1>

月が上っている間、HPとMPが急速に回復する。


「〈月下美人〉……か……」

「夜だけ強くなるのか……」

「可愛いけど美人かっていうと……」

「なあ? 貧乳の花海には似合わ」


 ガシィッ!!!!!

 強烈な踏み込みで難波芳樹(なんばよしき)を捕らえた花海のアイアンクロー!

「難波くん……もう一回言ってみろやあああああ!」


「ぎゃああああああ! ごめんごめん!! 頭割れる!」


「ほら、後がつっかえておるぞ!」


「じゃ、じゃあ俺がやる!」

 難波は逃げ出すように水晶に手を当てた。空間にスキルが表示される。


<楽器マスタリー>

全ての楽器を上手に扱える。楽器の効果が強化される。


「よっわwwwwww」

「芳樹、これ戦えないんじゃね?」

「……アイドルでも始めよっかな……」


「次だ!」



……

 そして全員分のスキル解析が終わった。それぞれのスキルは、そう、<楽器マスタリー>でさえ、結局使い所によっては非常に強力なものばかりだった。

<剣神><勇者><聖女><マックスチャージ&エクセレントドッヂ><クラフトマスター><アグリマスター><歌姫><舞姫>

などなど、スキルに留まらない<クラス>を持つ者が多く、伸び代が大きそうだ。


「それではスキルも分かったところで各自に戦闘訓練を施す!


しかし、その日の夕方、皆が中庭での訓練を終えようとしていた頃、事件が起こる。

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