幸せ代行人

そいつはたいそう立派な男で

経歴も豪華絢爛なんだが

どうにも変わった夢見人


世界が俯く夜でも一人だけ光って輝いてる

世界が嘆く朝さえ一人で笑って迎えてる


誰もがそいつを指差して

「お前はおかしいやつだ」と言うけれど

それでもそいつは胸を張って

「俺は正常だ」って呟いてる

「みんなどうした」って叫んでる


少し角度を変えさえすれば

世界はこんなに輝いてんのに

誰も変えようなんてしない

みんなマニュアル通り働いてる

少し自分を変えさえすれば

世界も一緒に変わんのに

誰も変わろうとなんかしない

みんな勇気がないらしい


心配なんかしなくても俺はいつもここにいる



そいつは随分陽気な男で

いつでも喜色満面なんだが

どうやら本当は孤独人


みんなが騒ぐ昼でさえ旗を掲げて立っている

みんなが過ぎゆく道にでもSOSを探してる


誰しも自分を確かめて

「つまらない奴だ」と蔑むが

そいつはとうとう旗を差して

「名前を呼べ」って掲げてる

「助けてやる」って叫んでる


少しでも声がが聞こえれば

すぐにでも俺は駆けつけんのに

誰の声だって聞こえやしない

誰もが声をなくしてる

少しだけ手を伸ばしたら

宇宙の果てでも掴んでやるのに

ちっとも主張なんてない

一人で足場を探ってる


どうやらみんな言いたいことがあるらしい

それを叫ばずに困っている

だったら俺は拡声機にでもなろう

言いたいことがあるんだろう

叫びたいことがあるんだろう

全員の眼を覚ましてやれ


少しだけ角度が変わったな

俯いてた顔が上を向いてるだろ

やっと俺の顔が見えたかい?

たいそう幸せにしてるだろ

少しでも声が聞こえるかい

すぐにこの声に慣れなくても

誰の声だって拾ってやる

みんな勇気を振り絞ってくれ


心配なんかしなくても俺はいつもここにいる

ほら世界はいま輝いてる

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