第60話 久しぶりの力
「反乱と囚人の脱獄⁉
なんでそんなことに?」
「そ、それがどうやら周到な準備と何やら手引きをした者がいたらしく防ぐことが出来ず……申し訳ありません!」
厨房内がざわつく。
こんなタイミングでハプニングが起きるなんて運が悪いとしか言いようがないな。
『『キャアアア‼』』
外から悲鳴が聞こえる、大騒ぎになっているようだ。
「
店長、いきましょう。このままでは被害が!」
「仕方ない、案内まかせる!」
オレは駆けるウルの後に続く。
城内のあちこちで悲鳴や怒号が聞こえる。
大きな被害が出ない様、祈るしかない。
「いました、奴等です!」
視界に入った囚人たちは10人ほど。
刀や武器を持ち、まさにそこに居る人達を襲おうとしている。
「囚人だけど手荒にしたらまずいよな?」
「はい、脱獄囚は重罪です。多少手荒でも構いませんっ!」
「ぎゃっ!」
「な、何だコイツ⁉」
「痛えっ‼」
言うやいなや囚人たちにウルが突撃し次から次に組伏せ、戦闘不能状態にしていく。
そしてオレの出る間もなく、あっという間にこの場にいる囚人達は全滅した。
「つ、強いんだな…オレ出る幕なかったよ」
嘆息しつつ感心していると中庭からさらに怒号がする。もしかしてあちらが本隊か?
「ウル、行こう!」
「はい!」
「「「「「ワアアアアァァ‼‼‼」」」」」
中庭では女中さんや家臣の人達が囚人達に取り囲まれていた。幸い、まだ犠牲は出ていないようだが今にも襲いかかろうとしている。
(ダメだ、オレ達がいるここからじゃ中庭まで距離がありすぎる、こうなればやるしかない。久しぶりだけど…出来るかな?)
「ウル!」
「はい!」
「飛ぶぞ!」
「はい!……えっ⁉
ちょっ……‼
うわあああぁぁぁぁぁぁ‼‼」
ウルを抱え、【空調管理『風』】による全力の風魔法で飛行する。
(久しぶりだけどなんとかなった、良かった。…ん?あそこだな、間にあえっ‼)
『ドオオオオオン‼‼』
スピードが出過ぎたのか着地の衝撃が予想より強い。派手な衝突音をさせて中庭に無事降り立つ。
「店長…速すぎて気持ち悪いです……オェ…うっぷ……」
「すまん、久しぶりで力加減がわからんかった……さて、囚人たちをなんとかしないとな」
いきなり空から登場したオレ達に面食らった囚人達は、動揺しつつ敵だと即座に判断し襲ってきた!
「なんだあ、てめぇは⁉⁉」
「関係ねぇ、やっちまえ!」
「ひゃっはあ‼」
「死ねや‼‼」
囚人たちが30人程の集団で襲いかかってくる。また久しぶりに使うけど、これでいくか!両手を地につけ、力を込めイメージする。
「はあああああ‼」
カチーーーーン‼‼‼‼
「「「「「「なにぃぃぃ⁉⁉⁉」」」」」」
「動けねぇ⁉」
「何をしやがったんだ!」
「さ、寒い……」
囚人たちの足元が凍り付き、全員動きを止める。【温度管理『冷』】での凍結だ。
(上手くいったが、やっぱり久しぶりだと不安になるし精度がよくないかな、たまには何かしらで使わないと)
「さ、さすが店長…うっ……」
ウルはまだ酔っているようだが、ケガもないし大丈夫だな。
「大丈夫ですか?」
襲われていた人達を保護する。
いつの間にか囚人達も全員捕まったようだ。
反乱の方も殿様達が抑えたらしい。
良かった、なんとか無事に事態を収拾出来たな。
「コムギさん、ありがとうございました!
それにしかと見ましたぞ、本当に大魔法使いだったのですな!
愚息を預けるにあなたを置いてほかないと確信しました。どうか末永くよろしくお願いいたします!」
深々と頭を下げる殿様だが、なにか勘違いされそうな挨拶だ。
言っておくがオレにそっちの気はないぞ、殿様。
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