第59話 米粉パン誕生
イーストがない⁉
米粉パンを作ろうと意気込んだものの、これは予想外だ。ショーニさんもしまった、と天を仰いでいる。どうやら失念していたようだ。
誰かイーストについてわかる人はいないか、厨房にいる人達に尋ねてみる。
「え、ええとイーストというのは生地を発酵させるために必要なものでして……」
「「「発酵?」」」
皆一様に首をかしげる。
この様子を見るにやはり無いらしい。
(だめだ、イーストがなければ他のもので代用するしかないが、なにかないだろうか……)
すると、その中の一人が答える。
「発酵なら酒麹(こうじ)がありますが?それではダメなのですかな?」
酒麹(こうじ)?
「それだ‼」
よし、それなら時間は倍以上かかるが作れるはずだ。
イーストより麹は発酵時間を長く設定し、前もってぬるま湯で作った種を作っておく必要があるがパンを作る事は出来る。
早速取りかかるとしよう‼
_______
そして、ながーく、じっくり発酵させた酒麹を使った米粉パンが出来た!
イーストならば、さらにふっくら仕上がるのだが、麹は風味がイーストより出るのでこれはこれでアリだと思う。
「さ、出来ました!
どうぞ召し上がってください!この米粉パンが両国の架け橋になれば良いのですが……」
見た目は真っ白な丸いロールパンだ。
飾り代わりにまっすぐに一本筋のカットとすこし表面に米粉をかけてある。
「で、では頂きます……」
ワフウの人達は初めて見るパンを恐る恐る手に取る。軽さや匂い、五感に訴える新しい刺激に戸惑いながら口に運ぶ。
ふわあぁ…。
もっち…もっち……ぷつん……ゴクリ。
これが米粉パン。
ほのかに甘い、噛めば噛むほどに甘くなる米の風味、麹のほのかな酸味が鼻を通り、食感は餅のようでもあり、空気のような軽さもある不思議な食べ物だ……。
「「「「「美味しい‼‼」」」」」
食した皆は異国にはこのようなものがあるのかと一同興奮していた。
「柔らかいのに食べ応えがある!」
「ほんのりとした素朴な甘さで食べやすい‼」
「米からこんなに美味なものが出来るとは不思議だ⁉」
「どうですか、これがパンです。
お口に合ったなら良かったですよ」
オレは皆の笑顔をみて安心した。なんとか上手くいったようだ。
「いや、またしても感動しました……米粉でこんな味が出るとは。さすがコムギさんだ。
この米粉を上手く使って国の危機をどうにかしましょう‼」
と意気込むショーニさん。
「ショー二殿はコムギさんのパンを食べられて羨ましいですな、今度また別のパンをぜひともお願いいたします!」
どうにか殿様やワフウのみんなにも受け入れてもらえたようだな。
米粉の問題も解決したし、これでめでたし、めでたし。
が、しかし。
まだ終わらなかった‼
それは突然の報告。
「殿、大変です‼
囚人たちとの脱獄と反抗組織の蜂起です‼」
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