第57話 幕切れ
ウルと合流し程なく使者に呼ばれ、城内に再び通された3人は謁見の間とは違う書斎の間で殿様を待っていた。
「待たせたな」
殿様がドスドスと上座に座る。
座るのを見届け平伏する。
「では具体的な話をしようか」
殿様は顔を合わせるなり、本題を切り出す。
利あらばすかさずと、虎視眈々とこちらの様子を伺うあたり、さすがこの国のトップだけあると感じさせる。
「そうですね、では早速。
改めてブーランジュ王国名代として、国交の樹立と米および米粉の流通についての協議をお願いいたします。
こちらの意図はそのままの意味です。
現在鎖国的に国交を閉ざしている貴国と我が国の国交を樹立し、文化の交流やあらゆる危機における相互協力をお約束願いたい。
加えて米と米粉の流通ですが、現在我が国では小麦粉の不作と需要過多により、主食の食料危機に瀕しております。その危機回避のため、ご協力を何卒お願いいたします」
ショーニさんが全て話した後、畳に頭を擦り付け頼み込んだので、オレとウルもそれに続いた。
「話にならんな、まるでこちらの利益がないではないか。そちらばかり得する話で何を材料に取引を持ちかけているつもりだ、貴方ほどの商人がそれをわからないはずないだろう?」
ごもっともだ。
こちらが頼むばかりで、ワフウにはメリットがまるでない内容で明らかに偏りすぎている。これでは話がまとまるわけがない。
(どうするつもりなんだ、ショーニさんは?)
ハラハラしながら様子を見守る。
「そちらの利ならありますよ?
先ほど申し上げましたが、文化の交流と危機への相互協力です。
殿様、いや、セル殿。貴方ならこれに乗らないわけはないと私は践んでいるのですが?」
「何をバカな……」と口にする殿様、セルというのか?
とりあえず殿様がわずかに狼狽した様子を見せたあたり何か見込みがあるようだ。
ウルもそれを察したのか、さらに何かに勘づいたように深刻な顔になる。
しん……と静寂がオレたちを包む。
オレ以外の人達のにらみ会い、探り合いだ。
ショーニさんが攻め立てる。
「…もしこちらが根拠まで申し上げたら、はたして『どう』なりますかな?
セル殿……?」
と挑発気味に説き伏せようとする。
ショー二さんは明らかに何かを知っているのだ、それを揺さぶりに使っている。
「くっ……やはり貴方はやりづりい。
いや、さすがというべきか。いずれにせよ、貴方が来た段階でこちらは相当に不利になりますからな…」
殿様は諦めたような様子で苦々しく本音の言葉を漏らす。何が何だかわからないうちに話がまとまりそうなので黙っておこう。
「では、よろしくお願いいたします」
ショーニさんがだめ押しとばかりに一方的に交渉を打ち切る。まるでもうこちらの要求が全て通ると確信しきっているような堂々とした態度だ。
「……わかりもうした、万事取り計らいましょう」
殿様が本当に交渉に応じてしまった。そして
互いに平伏と礼をする。
「えっ、これで終わり?」と思わず口にしたくなるようなあっけなさだ。ビックリしてしまったのが表情に出てたのか、殿様も苦笑する。
「やはり身内の方ですらその様な反応になるでしょう?ショーニ殿、貴方は事情通が過ぎて頂けない……」
「商人は情報が一番の武器ですからね」
ニヤリと意地悪そうに笑い、切り返すその顔は満足気だった。同時に小声で「あとで全て説明します」と教えてくれた。
なにはともあれ、これで米粉が手に入ることになったらしい。
……ショーニさん、ホントにどうゆう事??
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