第49話 見つけた!

船に揺られること、丸1日。

オレたちが乗っているのは魔力船と呼ばれる、この世界で普及している船だ。


今回王様の計らいでグレードの高い船に乗っているため、速いだけでなく、客室もあり行き届いたサービスの良さからいかにもな高級感が漂っていてさながらプチセレブになった気分でいる。


さて、魔法の力で動くこの船はさながら現代のパワーボート並みの速さ。速度の割に揺れも少ないので快適さと迅速さがウリらしい。

その甲斐もあってか、元いた世界と変わらない青い海と潮風を受けながらの船旅は平和で短いものだった。


「コムギさん、着きましたよ」


翌朝ショーニさんに起こされ客室のベッドで目覚める。どうやら船は明け方にはすでにワフウについていたらしい。

そんな事に気づかず熟睡していたオレが身を起こすと、隣のベッドで寝ていたウルが起床しすでに身支度を終えているので、慌ててオレも準備した。


船着き場旅の目的地、ワフウにオレたち3人

オレ、ウル、ショーニさんは降り立つ。

商人2人(1人は元、だけど)がいるから心強い。


ここで成すべきこと。

それは「米、もしくは米粉」の入手、およびその流通経路の確立だ。

小麦粉の代わりならば米粉がベストだ。

栄養価も申し分ないし、味のバリエーションも出しやすい。


しかし、問題はどのようにそれらの目的を果たすか。その秘策がショーニさんにはあるらしいけど、まだ何も聞かされていない。


「これからどうするんですか?」

ショーニさんが今回の旅では代表責任者となっている。国の食糧危機という事で、王様の名代も兼ねているらしい。


「まずはワフウ最大と言われている市場が近いのでそこに行きましょう。

目当ての物があるか確認します」


市場か、ワフウではどんなものがあるんだろう。なにか面白いものはあるかな?


―――――――


「へい、らっしゃい!安いよー安いよーっ!!」

「おっ!そこの兄ちゃんどうだい?ちょっと見てってくんな?」


客引きの喧騒に包まれ、船着き場から程なくして辿り着いたのがワフウ最大の市場と呼ばれる『ツキジ』だ。

さすが活気があり人も多い。

行き交う人はみな服装が和服で、昔の日本に似ている。だからかもしれないが、洋服のオレたちが珍しい様でちらちらと視線を感じる。


「さて、こう広くてはなぁ…。

どこにあるのやら」


相談して手分けして探すことにした。

程なくして遠くで、手を大きく振り、大声で呼ぶ声がする。


「店長〜、ありましたよ〜!」


どうやらウルが見つけたらしい。

どれどれ、、

そこには升売りされている目当てのものが確かにあった。


「これだ、米があった!!」


嬉しさのあまり、思わず叫んでガッツポーズをしまう。クスクスと笑い声がする。


「しまった、つい…。

でもよかった!あとは米粉があれば…どこにあるかな…」


「なんだ兄ちゃん、米粉を探してるのかい?

それならあっちにあるよ」

と米を売っている眼前の商人から教えてもらう。その案内を信じ、辿り着いた先には…。


「あった!!!

これだ、これです!」

視線の先には小麦粉と同じように麻の袋に入り、大量に積まれた米粉を量り売りしていり光景があった。


「ほぅ、これが米粉ですか」

「まるで小麦粉と変わらないですね」


ショーニさんもウルも米は知っていても、米粉はあまり見たことがなかった様で興味深そうに見ている。

(見つかって良かった、、)

安心したオレは、ホッと胸を撫で下ろしていた。


「この米粉があればパンが作れるんですね?

なんとか流通しているようですし、確認できましたね。

あとは、これをどうにかして手に入れないと」


「そうですね、そのことなんですがショーニさん。

何か秘策があるとか言っていましたが、具体的にどうするんですか?」


返答を待つわずかな時間。

思わず緊張してしまう、これからの行動がとても大事だからだ。


「これからこの国の主導者に面会します。

そこで、国交と米の流通の許可を貰いに行きます」


「なんだって!?

国のトップに商談するぅ!?」


予想の上をいく答えに思わず仰天してしまう。確かにそれが出来れば手っ取り早いけど、その責任と決定権を名代として託されたショーニさんて商人というより外交官じゃないか、余程信頼されてるのか素直にすごいな…と感心してしまう。


ならばこれからが正真正銘、国と国との勝負になるわけだ。相手は国のトップ、気を引き締めていかなきゃな!

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