第33話 呼び出し
王様直々の褒美を断る。
前代未聞の事件にその場にいる貴族たちは「は?」と場に相応しくない素っ頓狂な声を出しつつ唖然とし、しばしの間をおいて一斉にショーニさんを罵倒し始めた。
「貴様!商人風情がなんたる無礼だっ!」
「そうだ、ありがたく受けとればよいものを!」
「失礼にもほどがある‼」
などと、口々に罵詈雑言を浴びせる。
中には『成り上がり』だの揶揄するような言葉もあったがショーニさんは微笑みながら聞き流していた。
「……ショーニ」
王様が口を開くと静寂が空間を包む。
怒気を静かに孕んだその声に全員が畏怖したからだ。
ただの一言でこの場を支配出来る、王様たる所以や資質とは例えばこうゆうものなのかもしれない。
「なぜだ?」
――ただ一言。
重く、鋭い質問を投げ掛ける。
「はて―……なんのことでございますかな。
私はただ、メロンパンを『ご紹介』しただけにございます。
ただ一介の商人としての仕事を全うしているだけですので、褒美を頂く程の事ではございません」
ショーニさんは表情を崩さず、ぼかすように返事をする。
「……ふ、左様か」
王様がニタリ……と口元を歪め、なにやら悪そうな笑みを浮かべる。
それに呼応するようにショーニさんもニタリ……と同じような笑みで返す。
「ではショーニよ、このあと我が執務室に来るがよい。
そちらのコムギとやらもだ、よいな。
では一時解散だ、みな楽にするとよい」
「「はっ」」
「終わったな」
「ふん、格好をつけおって」
「所詮は成り上がりの商人よ」
王様が退出したあと口々に貴族たちが吐き捨てつつ席を離れる。しかしなんなんだ?
わざわざ呼び立てるなんて。
「ではコムギさん、行きますよ?」
「は、はい」
王様の仕事部屋か、緊張するな。
さっきより王様と距離が近いんだよな?
先程までとは違う緊張が……一体何が起こるんだろう……。
――コンコン。
「入れ」と中から許可が出た後、ゆっくりと立派な扉を開け、執務室に入る。
まるで小さな図書館のような本や書類の数々、しかし整然とされているので全く量や圧迫感を感じない。
そして奥の机には部屋の主、王様が上着を脱いだのか、さっき見た時より少しラフな格好で座っていた。
「きたか」
「「ははっ」」
「「…………」」
「……ぶっ」
「……ぷっ」
「「フッ……ダアハハハハハハハ‼‼」」
ショーニさんと王様が品格などそっちのけで笑いこけている。執事の人はそっぽを向いているが肩で笑っているのがわかる。
まるで昔からの知り合い、いや悪友の再会みたいな雰囲気だ。
「さすがじゃないか、ショーニ!」
「いやー、殿下もヒトが悪いですなあー!」
と冗談すら交え始めた。
「すみません、ショーニさん?
何がなんやら理解が追いつかないんですが⁇」
「なーに!
コムギよ、最初からグルなんだよ、俺様達は」
まるで別人、口調がくだけ年相応の若者らしい雰囲気になった王様。
……すみません、グルってどゆことですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます