第27話 またか!

 ダメですね、と予想通りのダメ出し。

うーん、と悩みながら他にアイデアがないかと頭をフル回転させる。


「あ、いや誤解しないでください。

とても素晴らしいお考えで感服いたしました。

市民向けにはそれで大丈夫ですが、問題がありまして貴族はプライドやメンツが第一なのです。


あちこちに回るというのは信用の意味でもよほど上手くやらないといけないので、効率があまりよろしくないかと。

それよりは貴族たちのプライドをどうくすぐるか、という条件をクリアする方策を考えましょう」


 ショーニさんが訂正しつつ、具体策を提示する。貴族にはそんな事情があるのか。

なるほど、信用やプライドね。

確かに古今東西その2つをどうするか、が商売のカギとはよく言われるよな。


「えっと……つまり、その口ぶりからすると貴族達が一斉に集まる機会で商品の紹介をすれば効果的で良い、そうゆうことですか?」


「はい、その通りです。

そして絶好の機会がすぐあるのです。

なにより、その機会こそが『メロンパン』をお披露目するにあらゆる意味でふさわしいのです」


「その機会とは?」


「『諸侯会議』です」


なにそれ?

またわからん言葉が出てきたぞ。


「諸侯会議とは今日我々が行っている会議のように、地方から代表となる貴族達が一同に会し、国王陛下への謁見と報告などをする、催しのことです。


途中、休憩時間ティータイムが設けられており、我々の商会が担当することになっておりますので、そこでメロンパンを出せばよろしいかなと思っております」


「いいじゃないですか!

それでいきましょう‼」


「決まりですね、ではそうしましょう」


 トントン拍子で話が進む。

かなり期待できそうだ、話が具体的になるにつれ安心感が少しずつ得られていく。

あとはとにかく、これで売れる目処がつけばいいな。せっかく作っても、売れないとやはり寂しいから。


――しかし王様達にメロンパンを出すのか、なんだか緊張するな。

今更ながらもっと違うものの方が良いような気もしてきた。

だって普通のメロンパンだもの、もっと高級な感じ、もしくは変化をつけた方がよいかな?


 それに、あとは材料の確保もしないといけないな。

足りるか不安なのはタマゴだ。

これもそろそろ無くなりそうだからな。

とりあえずショーニさんに聞いてみるか。


「すみません。

タマゴって市場で手に入りますかね?

結構な量を使うんですけど、確認までに……」


 ショーニさん以下、その場にいた皆の顔色が明らかに変わった。

一様に神妙な顔だ。

嫌な予感がする……。


「タマゴですか?

あるにはあると思いますが、今の時期はもしかしたら無いかもしれませんよ。

――コムギさん、まさかタマゴが足りないとか……⁉」


「え、あ、はい。

試食をするにはたくさん作る必要あると思うので」


「それなら一大事だ!

はやくどうにかしないと‼」


「ん?タマゴに時期があるんですか?

普通にニワトリから取れるんじゃ?」


「ニワトリ……が何かはわかりませんが、食べられるタマゴは貴重でして普通には手に入らないのですよ……」


「貴重ってまさか……また魔物絡みですか?」


「――はい、その通りです。

コムギさん、取りに行きましょう(ニコリ)」


「またかよおおおおお‼‼⁉」


 ショー二さんが満面の笑みでサムズアップ。もはや材料のための魔物ハンター扱いされつつあるんじゃ⁉

頭を抱え、絶叫して崩れ落ちる。

いっつも、このパターンばかりだ!


オ・レ・は!

『パン職人』なの‼



普通にパンを作らせてくれええええ‼‼⁉

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