52. アリエス
ユメヲミテイタ。
イロイロナユメヲ。
ツライユメカライイユメマデイロイロト。
ソシテコレガゲンジツナンダ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
一班五人から六人前後の人員で班を作る。
自分たちの班は信頼できる三人、ながつき、鈴、朱音だ。
「行こう」
一班はお互いに見えるか見えないくらいの間隔を開けて、京に向かっていく。
固まりすぎて敵に襲われないように、また、すぐに助けに行けるような距離感だ。
が、
「はい、止まってー、ね」
「熊童子....わざわざここまで来るとはな。前みたいになると思うなよ」
「そっちこそ、前は帰ったけど次は首を持って帰ってもいいって許可がおりたから、手加減はしないよ」
「こい、夜叉丸。
「
クソ、相手も上位の星座持ちなのか。
しかも夢、が相手の能力だろう。
「シッ」
「
突き刺してきた細剣を真っ黒く輝く剣で弾き返す。
が、細剣はしなるようにして自分の手や体を掠めて傷を作っていく。
それに比べて自分の剣は一度たりとも熊童子には当たりはしない。
「箱の中の黒猫」
「チッ、またこの技か」
遠距離技なのか、離れていたにも関わらず、黒い箱に閉じ込められる。
それとなぜかわからないが、ここでは能力が使えないようだ。
「では、優しい優しい熊童子さまがここでこの技の説明をしてあげよう。この技は1/2の確率で相手を確実に殺す技。
更にこの細剣で十回攻撃されると夢へと誘われる。なので、どんな能力も封じてしまいます。ただ何度も何度も使えないのは残念だけどね」
1/2なら前回のはただ単に運がよかったのか。
それと、前回は自分が弱かったから力を使えるままだったのか。
さぁ、いつ解放される。
はたまた自分が死ぬか死なないか。
数分して解放された。
運はまだ自分に味方している。
熊童子は鈴と朱音と近接戦を繰り広げていて、熊童子に隙が出来るとながつきが銃を撃って攻撃している。
なかなかいい連係だ、自分だけ仲間外れなのが凄い凄い悲しいが。
「自分も加勢する」
鈴と朱音が下がった時を見計らい夜闇の剣を熊童子に叩きつける。
が、細剣はしなるように、それでいて突き刺す攻撃で打ち消してきた。
それを、身をよじる事で避けながら熊童子を斬りつけるがそれすらも易々と細剣で受けられる。
何度か剣劇を繰り広げると、唐突に熊童子の持っている細剣に罅が、亀裂が走る。
「どうやら限界なのかな?」
自分は勝ち誇った笑みを浮かべているだろうな。
「まだです。私は、私は酒呑童子さまのために、酒呑童子さまのためにまだ死ぬわけにはいかないのです」
鬼の本領発揮と言われても違和感ないだろう。
熊童子の姿はどんどん大きく、どんどん大きく膨れ上がり最終的には丘くらいの大きさになった。
腕を振り下ろすだけで強風が吹き荒れ雨雷が降る。
「殺す、なにもかも壊してコロシテ」
「これが鬼」
これは流石にまずいかな。
「忌助、どうする!」
「自分が思いっきり斬る! 夜叉丸、風馬、力を貸して」
鬼の子として、この世界を鬼から救う者としてここでくたばる訳にはいかない。
なら、何時如何なる時でも限界を越えていかねばいけない!
「ハァァァァァ」
理を破壊する。
普通はこんなに大きくなった鬼を斬ることは不可能だ。
不可能という理があるから。
だからその理を破壊してこの鬼を、熊童子を斬る。
斬って斬って斬って斬って熊童子の命を断つ。
「そう上手くはいかせん! にんげぇぇぇぇん!」
鬼の咆哮。
草木を揺らし水は波を立てて人々は恐れ腰を抜かす。
鬼の、熊童子の体はまたブクブクと膨れあがる。
まるで風船葛の如く膨らんでいく。
残り後で少しで刃が触れそうな所で熊童子は破裂。
何かを空気中に撒き散らしながら自滅、自爆して散っていった。
これで次に、酒呑童子の所に行ける。
※
ここは?
自分は何をしていた?
「どうした、まだ修行中だぞ」
自分はその声の主を知っている。
知らない訳はない。
だって自分に剣を、刀を教えてくれた、
「師匠! でも死んだ、よね?」
「なに言ってんだ? 師匠に向かって縁起の悪い事を言うな! 現に俺はピンピンしてるぞ」
ゴツンッと拳骨が落ちてきた。
そうだよ、師匠は生きている、死んでなんていない。
「さぁ、素振りの続きだ」
「はい」
なにかがおかしいが、なにがおかしいのかわからない。
夢を見ているとか、そんな感覚だけど体は自由に動く。
「お前はなにがしたい?」
「急になんですか?」
「いーや。聞いてみただけだ。鬼を殺す以外に生きる道はないかなーってな」
「鬼の子なんですから鬼を殺す事しか出来ません」
他の仕事なんて考えた事がない。
最初から鬼を殺す為に修行してきたし、師匠はその為に自分に剣術を教えてきたはずだ。
「ニセモノ?」
そんな言葉が溢れ落ちる。
「なにが偽者なんだ? そんな事より素振りを続けろ」
「師匠は偽者だ。そうだよ。師匠の拳骨はもっと痛かったし」
判断材料がそれしかないのが心許ないがしょうがない。
長い長い夢を見ていた。
そんな感じがする。
「忌助くん、授業中だよ」
「あれ?」
自分は寝ていたのか?
えっ、でもなんで空が?
でもさっきまで師匠と修行していたような?
いや、あれは夢だな。
いい夢だ。
「忌助くんは将来なにがしたいとかあるの?」
「将来....鬼を全滅させる」
「鬼を?」
「だ、だって」
だって鬼は悪だ。
夜叉丸のようにいい鬼もいるけど、基本的には悪以外の何物でもない。
それに、空は、空は死んだはずだ。
鬼になっちゃったから殺すしかなかったんだ。
「忌助くん?」
「お前は誰だ?」
「だ、誰って空だよ。
「嘘をつくな! 空の友達の体で遊ぶな!」
自分は授業中にも関わらず思いっきり立ち上がり視線が集まる。
それはおかしな物を見る目で。
ナガいナガいユメをミていた。
そんなカンジがする。
「忌助」
「えっ?」
自分は母親に会った事がない....いやそんな事はない。
自分は生まれてからずっと母親と一緒にいた。
「何も間違ってない」
「どうしたの?」
「お母さん....ッ夜叉丸?」
自分は殺気を感じて咄嗟に刀を呼び出す。
いや、刀なんて出てこない。
それに「夜叉丸」ってなんだ?
刀は呼んでも出てくるわけないのに。
「忌助、こっちにおいで」
お母さんは自分の事を呼んでいる。
けど、お母さんから立ち上る禍々しい気配によって動けない。
お母さんの腕の中に飛び込みたい、けど死ぬ。
死んでしまうだろう。
「どうしたの、忌助?」
「お前は誰だ」
「誰って、忌助のお母さんだよ」
そんな訳ない、そんな訳ない。
僕を育ててくれたのは紅蓮さんで、風馬だ。
お母さんは、
「お母さんは死んじゃってる」
「なんて酷い事を言うの!」
パチンッと頬を打たれた。
そして、人を見る目を向けていない。
汚物を見るかのように、醜くい者を見るかのような目を向けてくる。
ナガイナガイユメヲミテイタ。
ソンナキガスル。
「鬼! く、来るな、こっちに来るな」
自分の回りには死体や氷が転がっている。
そして、血のついた包丁を持っている自分の姿が落ちている氷に写し出される。
「鬼が出たぞー、皆避難しろー」
勝手に足が動いていく。
近くにいた人の首を斬る。
近くにいた人の心臓を貫く。
「鬼! そこまでだ!」
「ながつき? なんで?」
「誰だ? 誰だか知らんが動くな」
自分はこの男を知っている。
友達だ。
数少ない友達の一人だと思う。
いや、自分はこの男を知らない。
だから、
「殺す」
「チッ、捕まってくれたら楽なのによ」
相手は刀を抜いて応戦するが、全くなってない。
簡単に刀を奪い斬りつける。
そう、この感覚だ、人を斬るこの感覚が良いんだ。
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