51. ケッセンマエ
「やぁ、君が来ると思って待っていたよ」
「お前は殺す、茨木童子」
「そんなに警戒しないでもいいよ。仲間は全員京に向かわせた。こっから面白くなるんだから」
「残念だがそれは見られないよ」
「あぁ、百も承知だ。ただ、それは君も同じだよ、
「おいで、極夜鬼。
「
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自分はまず、玖郎さんの所に向かう。
玖郎さんがここの指揮をしてるから、報告を最初にするべきだろう。
そして、なぜだか一部の男子男性から白眼視されているのは気のせいじゃないだろう。
自分なにかしたっけ?
なるべく恨まれないように、恨まれないようにって生きてきたつもりだけど....?
そんな事を考えていたら、玖郎さんの部屋の前まで来ていた。
三回ほど扉を叩き勢いよく開ける。
「玖郎さん、鬼を倒し終わりました。相手はまた復活する恐れがあったため、生きたまま殺しました」
「う、うん。生きたまま殺しました? まぁよくわかんないけどありがとね。それでさ、忌助くん?」
「な、んでしょう」
玖郎さんの目が怖い。
表情はいつもみたいに笑っているが、目だけ、目だけが笑っていない。
「今ね、あることないこと色々な噂が飛び交ってるんだ。でね、僕は忌助くんならいいかなーって思ってるんだ。家系も一応問題ないし、強いし、何よりある程度成長を見てきたから一番信頼できるなーってね。忌助くんはどうかな?」
「ごめんなさい、玖郎さん」
「ナニ? キミハ、ムスメガカワイクナイトデモイウノカ」
「あのー、玖郎さんが何を話しているのかわかりません」
「なーんだ、そういうことね」
うん、今の目怖かった。
普通に師匠よりも怖かったよ、うん。
「まぁいいや、この話は後で」
「えー、結構気になるのに」
「それよりも夜叉丸くんとの約束はいいのかな?」
「あっ、そうだった。失礼しました」
玖郎さんの部屋を急いで出て、自分に当てられた部屋へと急ぐ。
「ここなら落ち着ける」
やっぱり、ここに帰る途中、男子男性に物凄い睨まれて、たまに殺気を放ってくる人までいた。
ま、置いといて今は集中....。
※
「やぁ、忌助。やっと来たんだね」
「夜叉丸、わざわざこっちで何が言いたいんだ?」
「いやー、実際に見ないとわからないみたいだし、僕の霊力で隠れちゃってるから」
「隠れ、てる?」
後ろに人の気配、否、鬼の気配を感じたから振り向くと....
「な、んで? なんで風馬がここに? 鬼になっちゃったの? もしかして疲れすぎて変な幻覚でも見てるのかな? それとももしかしてもう自分は死んじゃった?」
「落ち着いてよ、忌助。なんでここにいるか、僕が鬼になったから。疲れて幻覚を見てる訳でも忌助が死んじゃった訳でもないから安心して」
そこには風馬が、可愛らしく角がちょこんと生えた鬼になった風馬がいたのだ。
「えっ、でもどうやって鬼になったの?」
「うーん、説明するとね、僕の死体ってどうなってた?」
「あっ、無くなってた」
「そう。その時には儀式が成功してたんだ。それで僕を殺した強い鬼を依り代にして少しずつ少しずつ鬼になったの」
「それって自分が星熊童子を倒したから鬼の力をある程度奪った的な?」
「正解、そういうことだね」
つまり、遅かれ早かれ星熊童子を討ててれば風馬は鬼として自分の所にくるのか。
「本当にただでは転ばないな」
「ありがと、夜叉丸も。忌助の事を守ってくれて」
「じゃなきゃ僕が死ぬこともあったからね」
これで自分は鬼を二つ宿してる事になる。
けど、風馬の鬼能ってなんなんだろう?
「気になるかい? 気になるよね? 教えてあげよう。僕の鬼能は[
「でもそれはこれから役にたつ。もう少しで京に攻めに行くことになる。その時に存分に使わせてもらうね」
「頑張ってね、忌助」
その言葉を最後に意識が遠退いていく。
※
まさか、風馬が鬼になって、こんな形になるとは思ってもみなかった。
トントントン
こんな時に誰だろうか?
もう夜になってるというのに。
「誰ですか?」
扉を開けてみるが誰もいない。
霊力で探ってみるが人の気配もない。
「気のせい、なのか?」
でも確かに、三回ほど扉を叩く音が聴こえた気がしたが。
確か、前にも一回こんなことがあったような....?
「思い出せないしいっか」
※
朝日が昇り明るくなり始めた頃、計画はどんどんと進んでいた。
その計画は京にいる悪い鬼を殲滅するという至極単純な事だ。
単純だが、そう簡単にいくわけではない。
いくつかの問題があり、鬼神になろうとしている酒呑童子がいること。
その手下で、前に勝てなかった熊童子がまだ生きている可能性が高すぎる事。
七鬼王を全て討ててない事などがあげられる。
「お先真っ暗だな。鬼と人間が協力して生きれる未来を作りたい、と思っているのに」
『本気、か?』
「本気だよ、夜叉丸。それが夜叉丸の願いでもあるんでしょ」
『そうだけど』
今まで守ってくれたんだ。
そのくらいはするべきだと自分は考えている。
トントントン
「忌助、先攻部隊がもう出たから俺たちも準備をする」
返事をして、ながつきと一緒に作戦会議室に移動する。
「さて、集まるべき人員は集まったね。これから作戦会議を始める。まずは指揮をとる人を紹介する」
「よろしくお願いいたします。
ん?
指揮をとる人って事は玖郎さんも戦うってことなのか?
でもそれなら心強い。
「次に今回の作戦の主力、愛六忌助くんだ」
「えっ、よ、よろしくお願いします」
まさか、いきなり振られるとは思っても見なかったから驚いた。
自分がこの作戦の主力、か。
別に異論はないし、嫌とかそういう気持ちもない。
けど考えてしまう。
このままいくと、鬼と人は共存出来るのか、と。
悪い鬼がいるから鬼全体まで悪く見える。
一人が悪者だと、仲間まで悪者になる。
それを良しとしない為にもなにか策を考えなくては。
「はい、玖郎さん。鬼を全て殲滅すればいいんですか?」
「うん、基本的にそうするつもりだよ」
「....わかりました」
一つ、賭とも言っていい策は思いついた。
けど、これは実行したくないし、最善ではない。
そもそも、これはなんの解決にもなってないんだから。
『僕はそれでもいいと思うよ』
本当にいいのか?
なに一つ解決しないで逃げるようなもんだよ。
『でも、それも一つの考え方だし、風馬もいいんじゃないって言ってるよ』
本当に?
本当に風馬も言ってるの?
『うん、僕が今までに嘘をついた事があった?』
うん、何度か。
『あははは。まぁそれは置いといて、後は未来に託すっていうのもいいと思う』
ありがと、夜叉丸。
よし、これでいこう。
けどこれは誰にも言えないな。
もし、言ったならなにか一緒にいい案を考えてくれるかな?
でも鬼を反対する人は少なからず出てくる。
それならこれが、未来に託すのが一番だ。
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