49. イクサ
「ここか。ここに隠れていたのか」
「誰だ、こんな所に何ようだ」
「ん、んん? 見たことあるな、あなたは?」
「ふん、人に名を聞くときは自分から答えるべきじゃないか? なぁ、防御力が無駄に高いクソ
「あぁ、思い出した、思い出した。君は一ノ瀬家の落ちこぼれの暮夜くんじゃぁないか」
「てんめぇ、八つ裂きにしてやる」
「すぐにあの世に送って差し上げます」
「なになにー。楽しそーな事してるー。
「お前は止めてくれ」「畄萎は入るな」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ここからが本番だ。
「油葉根さん」
「はい、ここに」
「あ、ありがとう」
呼んだらこんな早くに来るとは思ってもみなかった。
「自分は片っ端から敵だけを倒していくから残った人たちを安全な場所に非難させるってできる?」
「はい、可能でございます」
「本当に‼」
「月さまより鬼能と鬼を頂いたので」
「えっ、それって今の間に?」
「はい....?」
まさか....こんなに早いとは。
でもながつきが戦力を増やしてくれてる。
自分も活躍しないと。
「ちなみに....鬼能はなに?」
「私の鬼能は[異空移動]です」
「なるほど、夜叉丸に聞いてわかったけど味方を移動させる能力ね。ならお願いします」
自分は片っ端から敵だけを撃退していく。
そして油葉根さんは無事な人をどこかに移動させてる。
「油葉根さん、どこに送ってるんですか?」
「学校です。そこなら安全なので。それに
「水晶? 鬼が?」
『水晶なら大丈夫だろう。多分』
多分大丈夫なのか。
まぁ、夜叉丸が大丈夫って言うなら大丈夫だろ。
うん、そうだ。
今は無駄な心配はしない。
それから一時間。
次から次にくる敵を倒し続けて、やっと止まった。
学校に非難してるから、一回学校に戻るべきだろう。
「忌助くん、お帰り」
学校に戻ると鈴が最初に気がついて声をかけてくれた。
少し血を浴びてる所を見ると、戦闘があったのだろう。
「ただいま。水晶っていう鬼がいるらしいんだけど知らない?」
「水晶? 知らないよ。あっ、でもお父さんだったら知ってるかも」
「ありがとう」
「私はまだ治療があるから、またね」
鈴と別れて玖郎さんの所に向かう。
今のうちに効いておくか。
目を閉じて集中する。
スッと周りの空気が変わったのでゆっくりと目を開く。
※
『何しに来たの?』
「水晶って鬼の事を聞きに」
『会う前にって事ね』
自分は無言で頷いて肯定する。
『水晶は僕と同じ時に生まれた鬼だよ』
「同じ....幼馴染みってやつか」
『まぁ人間で言えばそうだろうね』
「鬼は違うの?」
『うん、僕は神であっちは鬼だったから。でも――――』
「えっ、夜叉丸って神なの?」
『あれ? 知らなかったっけ? 僕の母上は鬼神の
「そうだったのか」
そういえばそうだ。
夜叉丸の母は鬼神、神なのだから子が神でも問題はない。
『いいかな?』
「うん」
『水晶は水晶でただの鬼じゃなかったんだ。生まれた時から力が強くてね、神童と呼ばれてたよ』
「鬼神の子と神童....」
『そ、それに興味を持った母上は水晶と僕を主と従者にしたんだ』
「それは....」
『人間にとっては酷い話かもね。でも鬼は違う。って言うよりも、神の遣いとして選ばれたからいいことって感じだったよ』
「なるほど、神の遣いか」
『考えてもごらん。君と鈴が婚約して子供ができる。その子が神に選ばれたんだよ?』
「ちょ、ちょっと待って。夜叉丸、急に変な事を言わないでよ」
『ほら、ほらほら。想像してごらんよ』
想像してごらんって....夜叉丸が悪い顔をしている。
そうやって馬鹿にして楽しみやがって。
『話を戻すね』
「えっ、自分が話をずらした? 夜叉丸だよね‼」
『そうかな? ....まぁそのあとに水晶とは仲良くなったんだよ。僕は、ほら、神って柄じゃないからね。で僕が転生してからは水晶、七鬼王になってたけど行方不明らしい』
「だから味方で多分なのね」
『そういうこと。じゃあ行ってらっしゃーい』
夜叉丸の声で意識が切り替わっていく。
※
「戻って来た‼」
気を取り直して玖郎さんの部屋をトントンと二回程叩く。
「どうぞ」
「失礼します」
「やぁ、忌助くん。お疲れ....? そんなに怖い顔をしてどうしたんだい?」
「玖郎さん、水晶って知ってますよね?」
「知ってるよ」
「会わせていただきたいのですが」
「なら代わるから」
「代わる?」
「お久しぶりです、夜叉丸さま」
「えっ」
玖郎さんの気が変わったのだ。
禍々しい気を放っていて、まさに鬼。
て、ことは玖郎さんは鬼の子で玖郎さんの鬼が水晶って事か?
「人間、君の思っている事は正解だ」
そう、水晶は言って手を差し出してくる。
「?」
「握手だ。それともう一つね」
「はぁ....」
とりあえず水晶(玖郎さん)と握手をする....。
※
ここは‼
『こちらの方が話しやすかったので』
「なるほど」
握手をした理由は挨拶の意味と、ここに、鬼の部屋に入る為だったのか。
「あたらためて、お久しぶりです。夜叉丸さま」
「あぁ、久しいね。それと『さま』はやめてよね」
「いえ、あなたさまは神なのでそのような事は」
「まぁいいや。忌助、気になる事聞いときな」
夜叉丸は再会を終えたのか、主導権を譲ってきた。
なら遠慮なく、
「先ずはここを守っていただきありがとうございます」
「別にいいよ」
「いつから水晶さんは玖郎さんの中に?」
「最初から、だよ。でも大人しーくしてたから最近になって覚醒したんだ」
「なるほど....」
ダメだ、さっぱりわからん。
なんで最近になってなんだ?
それになんで七鬼王なんかになったんだ?
「最近になったのは夜叉丸さまの力を感じたからだよ」
「それって覚醒した力?」
「そう。そして七鬼王ならなにか夜叉丸さまの情報が集まると思ったから....でもダメだった。だか――――」
言葉の途中だったが、急に引き戻されていく。
※
トントンと扉が二回叩かれてから開く。
「失礼します。玖郎さん、敵です。それもとてつもなく大きな霊力を持った」
「それは本当なんだな。よし、忌助くん、頼んだよ。後で応援を寄越すから」
玖郎さんに言われて立ち上がる。
どうせ敵の目的は自分の中の夜叉丸だ。
なら、被害がでないようにこっちから出向いて戦う必要があるな。
学校を急いで飛び出し、霊力の方に向かう。
この霊力は強く禍々しい。
茨木童子よりは劣るが、熊童子とは同じくらいだろう。
そして、
「いた‼」
「おや、来てくれたのですか」
「お前は誰だ‼」
「これはこれは、始めまして、夜叉丸、愛六忌助。私は星熊童子」
「こい、夜叉丸。
「
星熊童子の手には竜の鱗が形取られた諸刃の剣が。
それ事態が物凄い強く霊力を乱しているのがわかる。
一応様子見で、
「ジェミニ カストルの神闇」
霊力を凝縮した矢を射つが、星熊童子に届く頃には消えてなくなっていた。
「
「ジェミニ
相手の剣から放たれる高密度の炎を、空間を斬り裂くことで防ぐ。
闇で擬似的な黒刀を造りだし斬りかかるが、全て簡単にあしらわれてしまう。
星熊童子の剣術は相当の高みにいる。
「たしか、聞いた話、こんな技を使うんでしたね。紅蓮流剣術 死連」
霊力の不可視の刃を黒刀で一つ一つ斬り落としていく。
まさかこんな技を使えるなんて。
星熊童子は鞘を造り出してから、
「なら次はこれを。
「グッ」
これは、横に飛ぶことで回避をする。
たしかこの技は将人が使っていた技か。
「この技は知っていましたか。なら次です」
そう言って星熊童子は剣を消した。
そして、
「
武器がない状態で霊力を操り、竜を造り出す。
そしてそれが、
グギャァァァァ
空気を揺らしながら突進してきた。
が、
「ジェミニ 神刀」
縦に一振り、それだけで竜は姿を消した。
どうやら自分は星熊童子に遊ばれているようだ。
ならこの際いいや。
「本気を出す前に死んでね」
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