25. ヤミ


 「クソ、反応が消えただと」


 「これは殺されたということなのか?」


 「そんなはずないだろ。烏隊の中でも優秀な白烏たちを行かせているんだ」


 当主とその側近たちの会話に入ってくる1人男。


 「なにかお困りのようですね」


 「なぜ....あなたさまが....ここに」


 「それは八重家が特殊霊術を偽っていたと情報が入ったからです。そしてなにかお困りのようですね」 


 そう不適な笑みを浮かべて話が進んでいく。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 自分に対して恐怖を抱いている人の命を握る技を使ったが、


 自分の所に集まってきた火の玉は全部で二六個。

 二十個多いけどこの二十個ってあの武装してた人たちのかな?

 多分そうだね。

 一応返しとこう。



 さて、この六人はどうしよう。


『面白そうだからまたまた忌助をこの夜叉丸さまが手伝ってあげよう』


 面白そうだからって。

 まぁいいけど、次はなに?


『鬼の型 凍てつく氷縛ひょうばく


 ありがと、なんか危険そうな技だな。


『火の玉に攻撃すればいいから。本当は体のどこかだけど』



「鬼の型 凍てつく氷縛」



 刀が赤く染まりそれで火の玉を軽く斬りつけていく。

 そうするも斬れた所から凍っていきすぐに氷の玉になった。



 これでいいのか?


『うん、これで相手は忌助の言うことをなんでも聞くよ』


 えっ‼

 それって強すぎじゃ


『そんな事はない。凍る前にその氷を割ればすむだけだから』

 な、なるほど。

 使い所を気を付けなければ。



「全員、自分の所にこい」



 六人揃って現れた。

 敵意や殺意(霊力が込もってない)は感じるけど言うことは聞くみたいだ。


 とりあえず彩萌あやめさんに報告に行こう。




「彩萌さん、全員の捕縛を完了しました」


「あら、全員捕縛したの? でも私もいらないから殺してくれていいのよ?」


「ながつき、いるか?」


「いや、いらないよ。一人いれば情報は手に入る」


「なら殺すしかないのか」



 あまり殺すのに馴れたくない。

 今日だけでも九人は殺しているから。

 でも今日が初めてだからいいのか?



「そうだ‼」



 つい良い事を思い付いて声が出てしまった。

 そしてそれを見逃すながつきではない。



「なんか良い事でも思い付いた顔だな」


「うん、この六人だけは自分の言うことを聞く状態だから手下にする」



 とは言ってみたものの危険はない....よな?



「それは危なくないのか?」


「危ないだろうけど大丈夫だろ」


「そう言うなら。なら残りの四人は?」


「鬼の型 氷締ひょうてい



 首もとまでしか凍ってなかった氷が口から入り肺、心臓、各種臓器、更には血液まで凍りつかせた。



「これで死んだはずだよ」


「あはは」



 ながつきは力ない笑い声をあげた。

 なんか可笑しいことがあったのかな?



「これで気兼ねなくお泊まりができますね」



 時を見計らって彩萌さんが手を叩きながらそんな事を言った。

 忘れていた。

 コイツらを片付けたらながつきの家に、九家に泊まる事になるのを。



「母上は、本当は何を考えているのか教えてくれませんか? このままでは忌助が可哀想です」


「あら、なんの事だかわかりませんわ」


「しらを切らないでください」


「別に大したことは考えてないわよ? ただ、九家は愛六家と仲が良いと周りに見せるだけですから」


「えっ」


「はぁーー」



 衝撃の事実に驚いてしまった。

 ながつきなんて溜め息を吐く始末。



「でも、自分愛六家とそこまで繋がりを持ってませんよ?」


「そんなの関係ないわ。周りがどう見るかだけですもの」



 彩萌さんは薄気味悪い笑みを浮かべて家の中に入っていった。

 これは断れない雰囲気だから、お言葉に甘えて泊まらせてもらうとするか。


「ながつき、彩萌さんが怖いからお泊まりさせてもらうわ」


「あ、あぁ。そうした方が良さそうだね。日乃芽ひのめ夜乃芽やのめ、忌助を部屋に連れていって」


「「承知いたしました」」



 ながつきの従者たちに連れられて一つの部屋に通された。

 無駄な物は一切置いてない良い感じの部屋だ。



「忌助さま、嫌いな食べ物はありますでしょうか?」


「でしょうか?」


「いや、特にないかな」


「かしこまりました」


「ました」



 独特だ。

 順番順番に最後を繰り返している。

 従者....か。


 もし自分が忌み子じゃなかったら自分にも従者がついたのかな?


 もし自分が忌み子じゃなかったら継承権何位だったんだろう?


 もし自分が....



「忌助さま、大丈夫ですか?」


ですか?」



 その声で意識が覚醒していく。



「ごめん、眠ってたみたい」


「そうでしたか。お夕食の準備ができました」


「できました」



 二人に連れられ広い部屋に通される。

 何かを忘れているんだけどなんだっけ?


 広い部屋、大広間にはながつきの家族たちが集まっていて、自分の場違い感が半端じゃない。

 当主が上座に座って....?

 否、彩萌さんが上座に座っている。

 そして力関係を表すようにして、末座に当主が。

 なんだろう、九家の闇を見てしまったような気がする。


 そんな事を考えているうちに食事が始まっていた。

 いつもは山で採れた山菜や魚などを鍋に突っ込んで味噌で煮た料理だったからか、とても豪華に感じた。

 て言うか、初めて食べた物ばかりだった。



「忌助、ちゃんと口に合うか?」


「うん、初めて食べた物ばっかだけど美味しいよ」


「....忌助って....普段なに食べてるんだ?」


「えっ‼ な、何って鍋とか?」


「鍋か、思ったよりも普通だな」



 鍋で間違いじゃないけどその材料が少し、ほんの少し問題が。

 いや、結構問題ある。

 一応自分は愛六家だからそんなのが知られた日には何か大変な事になりかねない。


「今度食べさせてくれよ」


「う、うん。機会があったらね」



 機会なんてなくていい。

 だって自分の好感度が物凄い下がりかねない。



「そういえば忌助、さっきの六人はどうしたんだ?」



 忘れてた‼



「どうすればいいと思う?」


「いや、俺に聞くなよ」


「なになに、なのはなし?」


「あそこにいる忌助お兄ちゃんが敵を手懐けたんだよ」


「すごいすごい‼」



 まだ名前をもらってないだろう小さい子が興味津々だ。


 てか本格的にどうしよう。

 手下にって思ったけど使い道がなさすぎる。



「なら、敵のところに返してあげるのはどうですか」


「返すって命を狙ってきた相手をですか、母上?」


「いえ、八重家を襲うように命令をして最後に自害させればいいんですよ」



 言ってる事は滅茶苦茶怖い。

 でもそれもアリかもしれない。



「それでもし八重家の当主を獲れれば力を大きく削ぐことができますしね」



 危ない危ない。

 利用されてしまうところだった。



「母上、そのくらいにしてあげてください。忌助が困ってます」


「あら、そう」



 あれ?

 もしかして今、自分遊ばれていた?



「忌助、ごめんね。母上はこういうところがあるから」


「うん、なんとなくわかった」




 食事が終わり結局結論はでなかった。



「命令だ、六人で殺し合い生き残った1人を手下にする」



 六人だから邪魔なんだ。

 一番強い一人を手下にするだけで充分だろう。



 ※



 昨日の夜と同じように朝ごはんを食べて、今はながつきと一緒に登校している最中だ。



「それで忌助、なぜ血だらけなヤツが一人だけついてきているんだ?」


「残ったのがコイツだけだから」


「残ったの?」


「そう。他のヤツらはもういない。こいつが今日から自分の手下なのだ‼」


「それはまたなんとも。それで名前はつけないのか? 呼びにくいぞ」


「それもそうだな。おい、名前何がいい?」



 一応聞いてみるが答える気配はない。



「答えない」


「あぁ、答えないな」




 夜叉丸、なにかいい案はないか?


『ないこともないぞ?』


 本当か?

 どんな方法だ?


『その仮面を外してあげることだ』


 でも仮面を外したら死ぬぞ?


『そうだな。九家の〔呪術〕が使われているからな』


 そうなのか?


『そこでだ。新しく技を教えてやろう』


 そういう知識はどこから得ているんだ?


『なぜか知っている。って感じが多い』


 漠然としないな。


『鬼の型 浄炎じょうえん。で仮面を斬れ』



「こい、夜叉丸。鬼の型 浄炎」



 仮面にかすらせるように斬る。



「急にどうした?」


「これで仮面が壊れるはずなんだ。ほら」



 仮面が割れて火傷を負った顔が現れた。



「ありがとうございます」



 ....えっと?

 なぜこの男は感謝の言葉を?



「なぜかって顔ですね。私ども、って言っても私しかいませんが烏隊からすたいは操られていました。私の村は独自の戦闘技術で名を馳せていました。そんな無下の民を操って、暗殺部隊を作り上げたのです」

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