24. アンサツシャ2


 「なに、烏隊が殺られただと‼」


 「はい、一人だけ白烏を入れましたが捕縛されました」


 「くそ、どこまでも忌々しいヤツめ。白烏しろからすを十いれば十分だろ。それでヤツを殺せ」


 「はっ、かしこまりました」



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 九家の当主にながつきと縁を切れと言われた。

 そして武装集団に囲まれている今現在。

 そして、



「これはどういうことですか、父上? 物音が聞こえて来てみたら忌助が取り囲まれている」


「どうもこうもない‼ 言ったよな、忌み子に関わるなと。忌み子はいつ暴走してもおかしくない危険な存在なんだ。父さんはな、月の為を思って――――」


「――――なら知っていますよね。今回の第一試練に鬼が、しかも異能の鬼がでたということを。それを忌助は助けてくれた。それだけじゃない。さっきも暗殺者たちから身を守ってくれた」



 アレを守ったって言っていいのか?



「それもすべて忌み子だからだ。忌み子じゃなければ狙われない。鬼が第一試練に乱入したのも忌み子がいたからだ」


「ッ‼ ....」



 それはあんまりだ。

 自分だって望んで忌み子になった訳じゃないのに。

 それに今は鬼の子だから暴走する心配はないのに。



「わかったら自室に戻ってない、月」


「父上はなにもわかってない。暗殺者たちは俺の身も狙っている。それだけじゃすまないだろう。下手をしたら戦が始まる。

 それに、その強さの人たちならまだ暗殺者たちの方が強い。父上ならその意味がわかるでしょ。

 九家の次期当主が命ずる。愛六忌助、父上以外の武装した者を殺せ」


「「なっ‼」」



 武装した人たちと九家の当主。

 それと自分の驚きの声が重なる。



「いや、ながつき。流石にそれは」


「忌助、相手は君を殺そうとしてるんだよ。そんな人に殺されても文句は言えないはずだ。そして父上、この事は母上に報告させていただきます。

 って事だからいいよ」


「う、うん」



 なんか、ながつきの知っちゃいけない一面を知った気がする。



「じゃあ準備はいい?」



 殺気(視線に霊力を込める)を放ちそれで様子をみる。


 武装した人たちは腰を抜かしながら我先にと逃げていく。

 そして当主は流石と言うべきか、腰を抜かしてはいるがこちらを睨んでいる。



「ながつき、逃げちゃったよ」


「別にいいよ。後で罰するから」



 後に聞いた話、ながつきの罰は死よりも辛いらしい。



「それでは父上、お話といきましょう」


「あ、あぁ」


「それで父上? 忌助を害そうと、俺の友達を害そうとしたのはどういう事かな? 忌助も何か言いたいことある?」


「じゃあ自分から。申し訳ないですけど自分は鬼の子です」


「お、鬼の子?」


「父上ともあろう人がまさか知らないなんて事はありませんよね?」



 ながつきの笑顔が怖いよ。

 しかも少し楽しそうだし、どうしちゃったの?



「クッ‼」


「分からないようなので説明します。忌み子は鬼の力を制御出来ない未熟者。鬼人は鬼の力を暴走させた人の事。鬼の子は力を制御した存在。暴走は絶対しないとされている」


「ながつきなんで知ってるんだ?」


「そりゃ当主になるために必要なんだよ。忌み子に関することはね。けど一般人はこの事を知らないから忌み子が嫌われちゃうんだよね。それで父上、これでも忌助は愛六家です。この意味がわかりますよね」


「あぁ、わかっている」



 最初の時の威厳はどこへやら。

 ながつきというよりはながつきの母に怯えている感じかな?



「失礼します、月さま。お母上がお戻りになりました」


「ありがと、日乃芽ひのめ。友達を紹介したいから読んできてくれ。ついでにあの暗殺者も」



 日乃芽という従者は走って行ってしまった。

 暗殺者も動けないとはいえ連れてくるのはアレじゃないかな?

 

 少しして襖が開き、一人の女性と二人の従者が入っていた。



「ありがとう、日乃芽、夜乃芽やのめ。下がっていいよ」


「「失礼します」」



 二人が退出してから話が始まった。



「母上、おかえりなさいませ。まずはこちらが俺の友達です」


「初めまして、愛六忌助と言います」


「初めまして、私は月の母の彩萌あやめとそこにいるのが主人で九家の当主、星彰せいしょうです」


「ご丁寧にありがとうございます」


「そんなに畏まらなくてもいいのよ。大方、主人が何かやらかしたのはわかっていますから」



 彩萌さんはとても優しくていい人そうでよかった。

 これで当主と同じだったら流石に泣いてたよ、自分。



「母上、その事でお話があります」


「えぇ、ある程度は聞いていますが一応聞きましょう」



 そこから今さっきまであった事を事細かに説明していくながつき。

 そして何かを言おうとして彩萌さんに止められる当主。

 少し可哀想に思えてきた。


「そういう事でしたか。申し訳ありませんね、忌助くん」


「いえいえ、でもなんで鬼の子に寛容なんですか? 考えてみれば当主さんの反応が普通のはずなので」


「それは私が幼い頃に鬼に拐われた事があったのです。その時に助けてもらったからっていう理由です。逆に主人は仲間を鬼人に殺された事があるから、あんな強い当たり方をしたんだと思います」



 仲間を殺された、か。

 それはあまりにも災難だったとしか。



「もう夜も遅いですしよければ泊まっていきませんか? その方が月も喜びます。こういう性格ですのであまり友達を作らなくて」


「こういう性格?」



 ながつきの方を見ると目を逸らされた。

 性格、性格、あの少し黒い性格の事かな?



「気持ちだけ受け取っておきます」


「あら、なぜですか?」



 なぜって言われても外に怪しい気配があるからなんて言えないし。

 この感じから烏の面のヤツらの仲間だろうけど。



「えーっと」


「そんなに外が気になりますか?」


「まぁ、そんな感じです」



 まさか外の気配に気がついていたとは。

 流石と言うべきなのかな。



「月、いい友達を作りましたね」


「えっ、あ、はい」


「では私は忌助くんの実力がみたいので戦ってきてもらえますか?」


「母上、何を言って」


「だって気になるじゃない。鬼の子の力なんて滅多に見れる物じゃないのよ?」


「いや、だからって」


「それに月は第一試練でも見ているんでしょ?」


「....」



 あっ、ながつきが言いくるめられた。

 これは断るのはその後が怖いから、ちゃちゃっと終わらせるか。

 終わればいいけど。



 九家の外に移動すると、音もなく白い烏の面をした人が1人きた。


「なるべく争いはしたくないんだけど」


「それはこちらも同じだ。仲間を返してくれたらひいてやろう」


「こちらは攻撃をされたから捕縛しただけだ。なにか問題でも? それが九家の者と愛六家の者って事もわかっている?」



 愛六家とは特になにもないけどここで威を借りる。

 そして一応殺気は出さないでおく。



「そうか、返す気がないと言うのか」



 もう一人やって来て背中に刀を突きつけてきた。

 避けようと思えば避けれるけど今日は何度も命を狙われてイライラしている。

 だから苦しんで死んでいってもらわないと気がすまない。



「交渉決裂かな」



 殺気を放ってから後ろの刀を突きつけたヤツを三秒で気絶させる。

 気絶って言っても首にある血管を止めただけだから早く蘇生しないと死にかねない。


 残り九人。



「こい、夜叉丸」



 目の前のヤツの腕を軽く斬りつけてから凍らせる。

 もちろん顔は凍らせない。

 窒息したらもったいないから。


 なぜ斬りつけたかって?

 それは[赤い氷]が血を吸収して強度や冷たさが上がるからだ。


 残り八人。


 まだ殺気の効果で動けてなさそうなので、物陰に隠れていた二人を氷付けにする。


 残り六人。


 そろそろ殺気が解けてもおかしくない頃合いだ。



「鬼の型 命の灯火ともしび

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