21. シュギョウ3


 「どんな感じになった?」


 「はい、成功いたしました。◯◯◯◯◯は気づかずに鬼人になるための血と霊力を取り込みました」


 「よくやった、かえでくん。これで酒呑童子の裏をかけるかな? ところで袈瑠羅かるらくんはどこに行ったんだい?」


 「袈瑠羅はもうちょっと◯◯◯◯◯を見ていきたいと言っていました」


 「なるほど、興味をもったのかな? まぁ袈瑠羅がどこで何をしていても興味はないが。あぁ、神楽かぐらさま。あなたさまの願いを叶えられるよう頑張ります」



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「さて、今日から初めての授業の訳だが先ずは皆で自己紹介といこうか」



 今日が初めての授業で玖郎さんはそう言った。

 このろく組の生徒の数が十人くらい減っている。

 鬼か悪霊かに殺られたんだろう。



「席が一番前で端の忌助くんからお願いできるかな?」


「あっ、はい」



 立ち上がり自己紹介を始める。



「愛六忌助です。一応愛六家の者です。よろしくです」



 とは言ったものの自分って継承権何位なんだろう?

 家を継ぐ気なんて毛頭ないけど気になってきた。


 それから名前順で自己紹介をしていく。

 正直他の生徒はどうでもいい。

 だから聞き流していたらいつのまにか終わっていた。



「さて、皆に重大なお知らせがある。本当はこの第一試練で半分の生徒が退学になる予定だった。が、事件が起きて残りの生徒、八五四人になってしまった。

 この学年の順位が先生方に発表された。前学期中にその順位の上位三百位に入ること。入れなければ退学になってしまう。

 因みにその順位は入学試験と第一試練を見て先生たちが決めた。第二試練でも上がる機会があるから頑張るように」



 順位を教えてくれないのか。



「先生、質問です」


「どうした、美琴みことくん?」


「《決闘》について教えてください」



 決闘ってなんだ?

 てか、なんでそんなことを知っているんだ?



「じゃあ《決闘》について説明しよう。《決闘》とは順位の低い者が順位の高い者と戦って勝てばそれなりに順位が上がる物だ。そして順位が高い者は挑まれたら拒否権はない。そして負ければそれなりに下がる。すべては戦い方と強さだ。だから順位が一つしか下がらないかもだし、最下位になることもある。こんな感じでいいかな、美琴くん?」


「はい、ありがとうございました」


「他にも質問がある生徒がいたらいいぞ」



 質問も何もわからないから質問ができない。

 それにあの美琴って娘誰だっけ?

 たしかさっき、自己紹介で....八重やえって言ってたっけ。

 あの娘も十の名家の一つだから知っていたのか。

 そしてなぜかこっちをチラチラ睨んでくる。

 なにか悪いことしたかな、自分?



「質問はないかな。因みに順位については明日発表される。だから明日から《決闘》ができるぞ。ただし授業中はダメだからな。

 さて、最初の授業はどこの組も同じで入学試験と同じように藁人形破壊だ。合格した人、一部を除いて全員破壊したから同じ組の仲間がどんな技を使うのか見るように。それと手の内を明かしたくなければ入学試験と同じじゃなくてもいい。藁人形を破壊できるならね」



 それから皆で校庭にでた。



 校庭では他の組もいて始めてたりした。



「では出席番号一番、愛六忌助くんから」


 みんなの視線が集まってくる。

 さて、なんの技をするべきか。

 派手な技を使うか、霊術で一瞬で終わらせるか、刀で斬るか。



「では始め‼」



 玖郎さんが号令をかける。



「こい、夜叉丸。紅蓮流剣術炎の型 爆流炎」



 藁人形の首を勢いよく斬る。

 斬った場所から青い炎が蝕み藁人形を灰にかえた。


 別に手の内とか気にする必要はない。

 手は結構あると思うから。


 それから出席番号順に藁人形を破壊していく。

 基本的に首を斬り落とせば合格になる。

 または頭、心臓の部分の破壊で合格だ。

 皆霊術や武器を使って藁人形を破壊している。

 誰一人として失敗はしていない。

 そして一人も突出していない。


 そのまま続き、気になる人、八重やえ美琴みことの番がやってきた。

 八重家はなにが得意か知らなから後でながつきか誰かに聞こう。



「八重美琴、始め‼」



 美琴は煙玉を地面に落とした。

 霧のように足元に煙が広がっていき、



「えっ⁉」



 自分は驚きの声が漏れてしまった。

 いや、だってしょうがないじゃん。

 美琴が急に普通の身体強化霊術を使って藁人形に物理攻撃を始めたんだもん。

 そりゃ驚くでしょ。

 しかも最初の煙玉が一切関係ないって八重家はなにが得意なんだろうか?


 少しして藁人形の首が折れて地に落ちた。

 これで美琴の番は終わりになった。


 残り数人の生徒の藁人形破壊が終わり今日の授業は終了になった。



「よっ、忌助。終わったな」


「うん、終わったよ、ながつき。聞きたい事があるんだけど、八重家の得意な物って何?」


「知らないのか? 藁人形破壊の時に使っていたはずだぞ。八重家の得意な物は真空波だ」


「真空波? って冗談だろ? だって美琴は藁人形に対して物理攻撃をしてたんだよ」


「物理攻撃を? そこのヤツ」



 ながつきは陸組の一人に声をかけた。



「なんでしょうか、つきさま?」


「別に畏まらなくていい。八重美琴は藁人形をどう破壊してた?」


「美琴さまは真空波で藁人形の首をへし折りました」


「だそうだ、忌助。ありがと、下がっていいよ」


「えっ、でもでもでも美琴は物理攻撃してたんだよ?」


「うん、忌助が嘘をつくとは思えないし本人に聞いてみるのが一番手っ取り早いよね」



 ながつきは帰路についている美琴に話しかけ始める。



「ねぇ、美琴?」


「どうしたの、ながつきくん?」


「美琴、藁人形破壊の時物理攻撃してたよね?」


「な、な、なんで、それを....」


「マジか、ほんとだったんだ」


「えっ、ながつきくん知らなかったってこと? 今、かまをかけたってこと?」


「あぁ、そうだよ」



 ながつきと美琴は話を進めていく。

 そして、



「忌助が教えてくれたんだ」



 ながつきは自分に話を振ってきた。



「君が‼」



 美琴は勢いよく胸ぐらを掴んでくる。

 そして美琴は勝てないとわかっているから、ちゃっかり身体強化霊術を使って持ち上げてくる。



「あの~、苦しいので降ろしてもらいたいんですが?」


「ふざけないで。特殊霊術を見破られたからには殺す」



 えっ、えっーーー‼

 それはないでしょ。



「私、八重美琴は愛六忌助に《決闘》を申し込む‼」


「えっ、えっーーー‼ まてまてまて。まだ順位が発表されてないじゃん」


「順位を知る方法はいくらでもある。あなたの順位は一位だから問題ない」



 いや、問題ないってそっちだけでしょ。

 こっちは大問題だし、順位が上のせいで断る事ができない。



「なんだ」


「《決闘》するんだってよ」


「あれって八重家じゃん」


「あっちは誰だ?」



 野次馬がどんどん増えていく。

 そして先生まで来だした。



「《決闘》の申請があったがどっちからどっちにだ?」


「私、八重美琴は愛六忌助に《決闘》を申し込みます」



 先生の質問に美琴が答える。



「了解した。これより八重美琴 対 あいろく忌助の《決闘》を始める。双方質問はあるかな?」


「美琴だったよね? 八重家の能力って――――」


「――――先生、はやく始めてください」



 八重家の能力って何って聞こうとしたのに焦ったように止めたな。

 もしかして皆が知っている八重家の能力はやっぱり嘘なのか。

 でもわからないで戦うのは辛いものがあるな。



「わかりました、美琴さま。それでは八重美琴 対 あいろく忌助の《決闘》 始め‼」



 先生の言葉で《決闘》の火蓋が切って落とされた。

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