20. ダイイチシレン3
※ ~
「これは酷い有り様だ」
その男は木の上からこちらを眺めてからそう言った。
見たことのない炎柄の服を着た男が。
「よっと。大丈夫か?」
木の上から軽々と降りてそう聞かれた。
もう何が何やらで訳がわからず首を縦に振ることしかできない。
または、この男から感じる霊力が物凄い大きいのが声が出ない原因かもしれない。
「こい、金獅鬼。紅蓮流剣術風の型 春風」
牛鬼との間合いはとても離れていて刀など掠りもしない。
ただその男は刀を横一線に振るった。
「はぁ。そんなん....」
次の瞬間何かに絞られたように牛鬼の骨や関節が折れ曲がりだした。
「その鬼はすぐに元に戻ります」
唯一思い出した事をその男に伝えたが「だから?」って顔をされた。
いやいやいや、それじゃあ死なない、殺せないのに。
「だが蘇る....?」
牛鬼は体が霧になった瞬間に風が舞い上がり元の姿に戻る事はなかった。
「あの、あなたは」
「ん? 俺は紅蓮だが?」
それだけ言って紅蓮は足を強く踏み込む。
そうすると倒れた仲間たちの地面に草花が咲き体力が回復されていくのがわかる。
「じゃあ用事があるから行くわ。って思ったけどそういかねぇな」
「どうしたんですか?」
俺が疑問に思った事がすぐに明らかになった。
木々を倒して大きな門が表れた。
俺の身長の十倍はある大きさの羅生門が。
「
紅蓮の持っている刀が大きな鎌に姿を変えた。
その鎌を振るうと空気が震えて獅子が吼えるような音がした。
そして羅生門から出てきたばっかの鬼共々を瞬殺してしまった。
「今度こそ用事があるから行くわ」
それだけ言い残して紅蓮は行ってしまった。
あの男は一体何者だったのか?
――――――――――――――――――――――――――――――
※ ~
「起きて、起きて、忌助くん」
天使の声で目が覚める。
いや、女神の声か?
否、鈴の声で目が覚める。
「おう、起きたか、忌助。実は羅生門が現れた」
「羅生門ってあのか?」
噂だけ聞いていた羅生門というもの。
羅生門は上位の鬼のみ使用できる技で、大量の鬼を呼び出す能力らしい。
大量の鬼といっても鬼能の鬼はいないから気は楽だ。
「多分思っているのであっている」
「でもどうにかなるかな」
鬼能持ちがいないなら琥珀くんに修行してもらった時に散々相手をした。
だからそうそう負けるわけない。
「こい、夜叉丸。皆は下がってて自衛して」
広範囲遠距離技をしなくてはいけない。
でも広範囲遠距離技は成功率が物凄い低い。
そして羅生門を壊さないと際限なしに鬼がでる。
流石に消耗戦になったら勝ち目が薄くなる。
「先に羅生門からだな。紅蓮流剣術
刀を中空に横薙ぎ一線。
この技は「死」の応用で霊力で斬る技だ。
少し遅れて羅生門が崩れ落ちる。
この技はこんな崩れ落ちる技じゃない気が。
まぁ、これで後は羅生門から出てきた鬼だけかな。
パチッパチッパチッパチッ。
「いやー、凄い凄い」
「誰だ?」
鬼の間を手を叩きながら来た鬼。
見覚えがある。
あれは、
「私は熊童子。以後お見知りおきを」
「炎の型 昇炎乱華」
昇炎華を飛ばしまくる。
これで死んでくれれば苦労はしないんだけど。
「いきなり攻撃は物騒だと思いますよ?」
そりゃそうか。
でも熊童子の周りの鬼は倒せただけでも良しとするか。
「熊童子とやらがなんのようだ」
「あなたの首を酒呑童子さまに献上したいので首を差し出してください。無駄な争いはしたくないので」
「へぇー、なんか面白いことしてるじゃん」
「し、師匠‼」
いつのまにか熊童子の首に師匠が刀を当てていた。
そしてそのまま振りきる。
が、そこには熊童子の姿はなかった。
「流石に鬼喰いの相手はしたくないのでおいとまさせてもらいます」
「行っちゃった....」
「さぁ、忌助。残りの鬼を片付けろ」
「は、はい。鬼の型 氷結」
刀を横一線。
扇状に氷の槍を出して串刺しにしていく。
跳び跳ねて回避している鬼が何体かいるけど下は槍地獄になってるから落ちて死ぬ。
これで鬼のお片付けは終了だ。
「よし、お前らついてこい」
「どこに行くんですか、師匠?」
「お前は黙ってついてこい」
「....」
師匠が優しくない。
「あれが忌助の師匠の紅蓮さんか? かっこいいなぁ」
「そうだよ‼ あれが自分に剣術を教えてれた師匠だよ」
そういえばながつきは師匠の事憧れてたような。
かっこいいかな?
自分的には怖くて厳しい師匠なんだよな。
「そうだ、お前たちに言っておかないといけないことがある。この第一試練お前たちは通過した。これで終わりだ」
「「「「「えっ、え~~~‼」」」」」
「そんな驚く事でもないだろ。鬼が出てこの学校が狙われてるんだから」
「えっと....」
「紅蓮だ」
「紅蓮さん、なんで狙われてるってわかるんですか?」
「それはだな、鬼から聞き出したらからだ‼」
鈴の質問に優しく答える。
てか、少しドヤってる。
そうこう師匠が質問攻めにあっていると森の出口まで来た。
他の生徒たちもチラホラ集まっている。
「よし、もう1回探ししてくるか」
「また行くんですか、師匠?」
「あぁ。まだいるかもだからな。鬼が」
いや、鬼かよ。
生徒の方じゃないのね。
「忌助くんの師匠さんかっこいいね」
「そうッスね。優しいし」
なんか言ってる。
なんで師匠あんなに人気なの?
しかも鈴もかっこいいって。
いや、師匠はかっこいいし少しは優しいよ。
でも納得いかない。
否、納得したくない。
『えー、では皆さん揃ったようですね。今回第一試練は不慮の事故により鬼が出現しました。そして可哀想な事に何人かの生徒は亡くなりました。さて皆さん。次の試練はありますが自由参加です』
今の校長先生の言葉は不謹慎だ。
死者がでたというのにまだ続けるのか。
他の先生たちも戸惑っているじゃないか。
玖郎さんなんて抗議しちゃってるし。
でも自由参加か。
参加して上位の成績を残せれば楽だろうな。
「皆はどうする?」
一応聞くが皆は参加なんてしないだろう。
「えっ? 参加するだろ」
「私もそう思ってた」
「私もッス」
「僕も」
「....」
聞き間違えかな?
だって死者がでたんだよ。
自分は師匠が近くにいるから参加せざるおえないけど。
「じゃあ皆参加でいいね?」
「「うん」」
ということで受付をすませて解散した。
ほとんどの生徒が参加するらしい。
でも結構生徒の数が減ったよな。
「玖郎さん、被害はどのくらいですか?」
近くにいた玖郎さんに小声で聞いてみる。
「あまり知らない方がいいと思うよ。それに鬼以外で亡くなった生徒もいるから」
生徒の自分が知ることではないのはそうだな。
それに鬼以外か。
対人と悪霊だな。
そういえば悪霊は一体も見なかったな。
その分鬼が一杯で運が良いのか悪いのか。
「そうだ、玖郎さん。また人工鬼人が出ました」
「それは本当か‼ はい、たしか....
「ありがとう、後で調べてみるよ」
それだけ言い残し行ってしまった。
後なにか言わなきゃいけないことがあるような、ないような。
まぁ思い出せないから大事な事じゃないだろう。
第一試練が始まって一日で終わり。
長いような短いような。
次の試練の説明は一週間後。
それまでは普通に授業があるのが辛いな。
修行だってしたいのに。
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「いやー、いい収穫だったよ。
「はい、茨木童子さま」
「それでだ。楓くんと
「これはなんですか?」
「これは仲間を増やす為の物さ。それを◯◯◯◯◯に使ってきてほしい」
「かしこまりました、茨木童子さま。」
「仰せのままに」
「それじゃあ行ってらっしゃい」
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