10. オニノ チカラ
こいつは仲良くなれないだろう。
すべてが気にくわない。
馬が合わない。
生理的に無理だ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
自分のせいで中断されていた試験が再開された。
「忌助、あれはやりすぎだろ」
「そうかな? ああいうやつにはこれくらいしないとだよ」
「そういうものか?」
いや、ながつきがこれを仕向けたんじゃん。
本当にめんどくさい事をしてくれたな。
最初にできた友達がこれって本当なんでだよ。
その後はなにもなく進んでいき全ての生徒の試験が終わった。
このあと一時間の休憩後に発表されるらしい。
今日中に合格者がわかるということだ。
「そういえば忌助、聞いたか? 今年は
「十の名家? ってなんだ」
「なんだって。忌助もその一つなのに知らないのか?」
「ごめん、親とは仲悪くって」
「あー。十の名家は最初の鬼人を倒した子孫の事だよ」
「その話は聞いたことあるな、風馬から」
「そう、それで名字に数字が入っているのが名家なんだ」
「その名家を順番に言ってくれないか?」
「いいぞ。
「ふーん、覚えるの大変そうだな」
「そんな事ないよ。まぁ当主になるなら覚える必要があるけどね」
当主か。
誰がなるんだろうって言っても他の兄妹の名前は知らないしな。
別に誰がなろうと関係ないか。
「そうだ、ながつき――――」
「――――放送します。ただいま試験の結果が出ましたので発表いたします。整列してください」
「やっぱりあとでね、ながつき」
ながつきに聞きたい事があったけどいいか。
合格発表ってどうするんだろう?
名前を呼んでいく訳にもいかないよな。
「では皆さん、受験票を見てください。それに今から
まさかこの受験票にそんな効果があったとは。
自分の受験票には「合」と浮き出た。
あんなことがあったのに合格したんだ。
「次に首席合格者の発表です。首席合格者は一ノ瀬
首席での合格なのか。
何を基準にしているんだろう?
それに一ノ瀬って十の名家の一つの一ノ瀬だよね。
そんなにすごいやつなのか。
「忌助、どうだった? って言っても合格だよな」
「うん、まぁね。合格してなかったら師匠に殺されちゃうよ」
「師匠って誰なんだ?」
「師匠は紅蓮さんだよ」
「紅蓮ってあの鬼喰いのか?」
鬼喰いってなんだ?
師匠ってそんな2つ名がついていたのか。
あっ、でも前に獅子に鬼の死骸を喰わせてたことはあったな。
だから鬼喰いなのか。
「多分そうだと思う。前に鬼を喰ってたから」
「鬼を喰ってたって、その紅蓮って人が?」
「いや違う。武器が、師匠の鬼が食べてたからそれで鬼喰いって呼ばれてるんだと」
「なるほど、そういうことか」
ながつきはなにか合点がいったようだ。
そんな話をしながら受付の列に並ぶ。
最後尾だ。
そんな時に受付を済ませたらしき人が声をかけてきた。
「君が愛六忌助くんだね。あの鬼の子になったという」
声をかけてきた男は表情がない。
感情が読みとれない人だ。
ながつきが自分の前に立って代わりに相手をしている。
「これはこれは、一ノ瀬家当主継承権
とてもわざとらしい台詞を言っている。
ながつきは「一ノ瀬家は十の名家の中で1番偉く2番目と天と地ほどの差があるからね」と小声で教えてくれた。
要するに逆らうなって事だろう。
「君には話してないよ、
「申し訳ないけど人違いだと思いますが?」
「そうかい。それはすまないことをしたね」
人違いだと言うと暮夜は踵を返して校門をあとにしてった。
あの喋り方、態度、顔、どれをとっても仲良くなれる気がしない。
「人違いってなんだよ。まぁ関わらない方がいいのは事実だけども」
「いや、咄嗟に出たのがそれだっただけだよ。それより継承権二位って事は一位は誰なんだ?」
「あー、それは暮夜の一個下の弟だよ。なんでも物凄い才能があって、それでいて性格までいいらしい」
あっ、それって遠回しに暮夜が性格悪いって言ってるようなもんじゃん。
ながつきもなかなかの性格だな。
てか列が長いよ。
千人いるからしょうがないだろうけど。
「ながつき、なんでこんなに時間がかかるんだ?」
「ん? それはあれだよ。順位とどうすればもっとよくなるかを教えてくれるんだよ」
「なるほど、上達の秘訣か。でも自分たちってそんな言われることあるのかな?」
「いやー、ないだろうね。俺は本気だったしそれを直されたらたまったもんじゃないよ」
「それもそうか。なら気負う必要もないね」
「そういうこと」
そんな他愛ない話をしていて一時間くらいしただろうか。
受付をできる先生が増えて列が増える。
そして段々と列が短くなっていき垂れ幕に入ると、
「やぁ、忌助くん」
「どうも、玖郎さん。でもなんで最初は一列だったんですか?」
「それは忌助くんが懲らしめた子達の治療にあたってたからね。それと保護者に説明をね」
「なるほど、でもあれはながつきのせいです。それに玖郎さんだっ――――」
「――――別に忌助くんを責めてる訳じゃないよ。それに忌助くんには特に上達の秘訣とかいらないからね。それじゃあ正式に合格おめでとうございます。こちらが学校の決まり事の書いた紙です。よく読んでおいてください。次に――――」
「――――ちょっと待って。急にどうしたの?」
「ん? 普通に業務を済ませちゃおうと思ってね。
次にこの書類に必要事項を記入して一週間以内に提出してください。これで晴れて一週間後にはこの学校の一年生です。とこれで終わりかな」
「玖郎さんって学校の先生なんですか?」
「あながち間違ってないよ。正確には保健室の先生だけどね」
「だからあのいちゃもんつけた子たちの治療をしてたんですね」
「うん、正解。雨三家は主に回復面で優れているからね」
「ちなみに愛六家は何に優れているんですか?」
「それはね、〔合成霊術〕に優れているんだよ。例えばね、火の霊術から光の霊術を作ったりね」
「なるほど、〔合成霊術〕ですか。じゃあ右手には[青い炎]で左手には[赤い氷]。あわせて[
自分の二つの鬼能を合成すると紫色の水ができた。
禍々しく気持ち悪い。
これは成功でいいのか?
案外簡単だった。
『いいんじゃない。僕も感じるよ、新しい鬼能、[紫水]を』
なら〔合成霊術〕は成功か。
「まさか鬼の能力で〔合成霊術〕を作るとは凄い事をしたね」
「そんな事ないですよ」
「まぁ必要事項は伝えたし忌助くんが最後だからもう終わりだよ」
「わかりました。ありがとうございました」
玖郎さんにお礼を言ってから垂れ幕をあとにする。
外にはながつきが待っていてくれた。
「お疲れ、どうだった?」
「うん、なんか新しい〔合成霊術〕を覚えた」
「凄いな‼ どんなのなんだ?」
「それがまだ使ってないから能力がわからないんだ」
「なんだそれ、じゃあ使ってみるか。
先生、校庭を使用してもいいでしょうか?」
「どうした? 月くん」
「霊術の練習をしたいんです」
「わかった、見てよう」
「許可が出たぞ、忌助」
「うん、了解」
[赤い氷]と[青い炎]を合わせるようにして作り出す。
「紫水‼」
手から紫色の水を発生させて、ながつきが出してくれた木偶人形にそれをかける。
そうすると木偶人形が煙をたてて消滅した。
厳密には気体になったというのが正しいだろう。
[紫水]の能力は物体を気体に変える能力だ。
固体も液体もすべて気体にしてしまう。
ただ複雑な物質を気体にするには結構な時間をようする。
難点は生き物を気体化出来ないというところだ。
と夜叉丸が教えてくれた。
「どんな能力なんだ? 急に消えたぞ」
「夜叉丸曰く、気体に変える能力らしい」
「いやー、凄いね忌助くん」
「そうですか? 玖郎さん」
「さっき見せてもらったけど能力はわからなかったからね」
ながつきと玖郎さんは驚いてくれた。
でも優越感には浸れない。
これで入学試験は終了だ。
山小屋に帰るけど師匠は帰ってきてるかな?
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