第7話 ビラ貼り
翌日、俺と違って校内で悪名を轟かせていない神流川が先生に名簿と入会届の用紙をもらいに行った。俺が行きたかったのはやまやまだが、連日の問題行動が先生の耳に入っていた場合かなり印象が悪いので仕方なく神流川に任せた。神流川が用紙を受け取ってくると俺たちも入会届を記入する。そして神流川が俺に用紙を渡す。
「これは君が持っててくれ」
「でも神流川が手続きとかするんだろう?」
すごい事務能力にたけた会員が現れない限り今後も先生との手続きは神流川がする以上、神流川が持っていた方が便利だと思う。が、神流川は首を横に振った。
「あの先輩……ああ、炎村先輩も君にこの紙を託したんだ。それに、君がこの同好会の中心であることには変わらない」
「そうか、ありがとう」
俺はありがたく用紙を受け取るのだった。
「なら今日は一年生の教室の方にビラを貼りにいこうではないか」
「そうだ、ビラで思い出したけどビラどうなった?」
俺たちはお互いビラを作ってこようということになっていた。が、正直言って俺にイラストや画像編集の才能はなく、かなり無難なものになってしまった。
俺は少し緊張しながらビラを見せる。
『超能力研究会会員募集中
超能力に興味がある方、最近学校で超能力騒ぎを起こしている真壁に興味がある方、それから超能力者が使えるという方などなど募集中!
もちろん何となくの方も大歓迎です。
連絡は二年三組真壁盈、神流川奏まで』
「……何というか、微妙だな。途中の笑いを取ろうとしているけど特におもしろくない感じまで含めて」
「嫌なこと言うな」
図星だったのでその言葉は心に刺さった。正直俺もおもしろいとは思っていない。
「じゃあ神流川はどうなんだ?」
「これだ」
『超能力研究会会員募集中
普通の学校生活はつまらない。自分には秘められた力があると感じている。自分は正当に評価されていない。もっと自分には輝ける場所があるはずだ。
などなど、一つでも当てはまる方はぜひお越しください。
きっと新しい自分が見つけられるはずです。
連絡は二年三組真壁盈、神流川奏まで』
「いやいやいや」
あふれ出るうさん臭さ、隠そうともしない怪しさ。超能力研究会の時点ですでに怪しいというのにもっと怪しくしてどうするというのか。
「何が不満だ。印象に残るし興味も相当惹くはずだ」
「いや、だから怪しいって」
「多少怪しいぐらいの方が超能力者も来やすいだろう。怪しい宗教は超能力と密接なつながりがある」
神流川は主張するが、自信満々というよりは無理押ししている雰囲気を感じなくもない。
確かにカルトの教祖になるには宙に浮くぐらいのパフォーマンスは必要かもしれない。だが、俺たちがカルトじゃないことはすぐ分かるし、そもそも超能力者が宗教っぽいと思って来たくなるのかは不明だ。
が、一方で俺の書いたビラがつまらないことも事実だ。本当はすごいいい感じのビラがあればいいのだが、現実は現実である以上、その中でどうにかしなければならない。
「仕方ない、とりあえず両方貼ろう」
「……そうだな」
神流川も折れた。こうして平凡なビラと怪しいビラを同時に貼るという結論になったのである。
そんな訳で各教室の前にビラを貼っていくこと数分。一年生の反応は微妙にうさんくさそうだった。微妙に、というのは我々が二年生であるため表だっては何も言わないのだが、どう見ても遠巻きに怪しんでいる感はある。俺たちが帰った後には俺たちの悪口が言われてもおかしくない。
俺も出来るだけこっそりとそんな一年生たちの様子をうかがったが、ぱっと見超能力が使えるのを隠していそうな雰囲気の人はいない。やはりこの学校には超能力者はいないのだろうか。そもそもこの広い世界に一定数の超能力者はいるという確信はあるが、この学校内にいるかは不明である。
早くも俺の心が折れそうになっていると、一人の女子が遠巻きにしている輪の中からこちらへ近づいてきた。おどおどしている様子ではあるが、俺たちが怖いというよりは俺たちにしゃべりかけることで周囲に目立ってしまうのが怖いという様子であるのが微妙に嫌な気持ちになる。
「あ、あの……」
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