第35話「不審」
ラングはクレアが疲労による眩暈で体のバランスを崩しその一瞬の隙を狙った。そして赤い光がクレアを襲う。
「こ、こんなことぐらいで…」
なんとか立ち上がろとし回避を試みるクレア。
「終わりじゃっ!ハァァァ!」
「うっ!」
手を床につきながらも体を回転させ、攻撃をかわそうとする。
…しかし完全に回避することは適わず、少し攻撃がかすってしまった。
「くッ…」
痛みが少し走る。すると…
「フ…フ…かっ…た…」
虫の息となったラングが最後の声を絞りだし、何かを言おうとしゃべりきろうとする前にそのまま床に倒れていった。
「えっ…?」
ラングが床に倒れたのをを見て少し困惑するクレア。
「クレア様!」
慌てて膝をついていたクレアを介抱しようとし駆け寄る執事。
「だ、大丈夫です」
そう言うとクレアは1人で立ち上がった。
「これは…」
床に倒れた暗殺者のラングを見つめ近寄るクレア。そして倒れたラングに触れる。
「クレア様!き、危険ですぞ!」
慌てて止めようとする。
「…死んでますわね」
「えっ…!」
「呼吸も動脈も完全に止まっています…一体これは…」
「勝ち目のない勝負と悟って自決したのでしょうか?」
「それはわかりませんが…とりあえず遺体を部屋から運んでください。後で調査班に遺体の身元を調べてもらうので丁重に扱って下さい」
「かしこまりました…しかしクレア様」
「何でしょうか?」
「お父様とお母様が出張でいない間あまり無茶をしないで下さい…クレア様が倒れた瞬間心臓が止まるかと思いましたよ」
心底心配そうな声でそうクレアに忠告する。
「あの程度の相手に私が殺されるとでも思ったのですか?」
「いえ…そういうわけではありませんが」
クレアはそう言われると溜息をついた。そして部屋を見渡す。
「ふぅ…しかし部屋が結構散らかってしまいましたね。汗もかいてしまったことだしシャワーを浴び直して今日は別室で寝ることにします」
「かしこまりました。すぐにご用意させていただきます」
そして夜があけ…今日はアイリのパーティー当日の日を迎えた…。
「エヘへ、ノエル楽しみだね」
「うん、そうだね」
家の前で2人で並んでいるノエルとアイリ。
「ノエルくーん」
メリッサ達が僕の家にやってきたようだ。
「あっみんな来たみたいだね」
パーティーの集合場所は僕の家の前だということでみんな家の前に集合してきた。
「おっすノエル」
「今日はよろしくねノエル君」
ジェシカとアレックスも一緒に来たようだ。
「よろしくアレックス、ジェシカ。え~とこれで全員かな?」
「うん、他の人にも声かけたんだけどみんな都合があるみたいで」
「そっか…まぁそれは仕方ないね」
大人数になるとを予想していたけど結局は初期メンバーの5人だけの参加となった。
「みんな緊張して行けないんだよ。考えてみろよ、王族の家だぜ?普通の奴なら遠慮するって」
「ま、まぁね…普通に考えたらすごいことだよね…」
改めて自分達が今から行く場所がすごいところだと考えさせられる。
「あっノエル君の妹アイリちゃんだっけ?今日はよろしくね」
メリッサがアイリに挨拶をする。
「はじめまして私アイリ!今日はよろしくね。ええと…」
「私の名前はメリッサだよ。ノエル君とは昔からの幼馴染なんだよ。よろしくねアイリちゃん」
「俺はアレックス。ノエルとはいつも学校でつるんでいるんだ」
「私はジェシカよ。よろしくねアイリちゃん。ノエル君とは同じクラスなんだ」
全員が皆アイリにそれぞれ自己紹介をする。
「うん、よろしく!ええとメリッサ、アレックス、ジェシカ!」
「アイリちゃんってノエル君とは違って結構明るい子なんだね」
「あはは…ま、まぁそうだね」
「えっ?ノエルっていつも学校だと暗いの?」
「う~ん、別にそういうわけじゃないんだけど…なんというか…ちょっと地味というかあんまり存在感がない?」
「ま、まぁ…確かに自覚はあるね…。あんまり目立つのは僕好きじゃないし…」
「ジェシカってわりと結構悪気がなくきついこと言うよね…」
「あっ!ごめんねノエル君…別にそういうつもりで言ったわけじゃなくて」
「あはは…いいよ大丈夫気にしてないから」
「でもノエルって結構先生から目つけられるよな」
「確かにそうねぇ…何でかしら?」
「いや、ほんとそこなんだよね。勘弁して欲しいよ」
そんな会話をしているうちに1台の黒い車がこちらに向かってくるのが見えてきた。
「おっ?迎えの車ってあれじゃねぇか?」
「ぽいわね」
そして僕の家の前にその車が止まり、ドアが開いた。
「お待たせしました」
車から1人の運転手が降りてきて挨拶をされた。
「あっ…どうもおはようございます。今日はよろしくお願いします」
そして挨拶をすると車の後部座席が開いた。すると…
「さぁ、みなさん乗ってください」
優雅に降りてきたのは王女ことクレア先輩であった。気品あふれるドレスに身を包み一般人とは違いオ-ラそのものが違った。
「あっ…ど、どうも…今日はうちの妹のためにありがとうございます。クレア先輩」
「うふふ…構いませんわ。私が好きでやったことですから」
「うわぁ…高そうなドレス。さすが王女様って感じね。私もちょっとはオシャレしてきたほうがよかったかな?」
「う、うん…(うわぁ…これじゃあノエル君と一緒に買いに行ったワンピースが霞んじゃうよ…せっかくオシャレしてきたのに)」
そしてみんなが迎えに来た車に乗りはじめ、クレア先輩の家に向かって走っていく。
「うわぁ…中も広いなぁ。こんな高級な車乗ったことないから俺ちょっと感動している」
内装はとても広く、そして高級感にあふれていた。
「あっ!冷蔵庫がある」
アイリが車の中にあった冷蔵庫を見つける。
「あら、アイリさん何か飲みますか?」
「ア、アイリ…ちょっとは遠慮しなよ」
「大丈夫ですよ」
そして冷蔵庫の中を開けてくれた。
「あっ私このグレープジュース飲みたい!」
「はい、では少々お待ち下さい。みなさんもどうぞ」
そう言うとグラスを取り飲み物を注いでくれた。
「あ…、すいません。なんか気使わせちゃったみたいで」
「うわぁ、これおいしい!家にあるのと全然違う!」
グラスに注がれたジュースを飲み感動しているアイリ。
「うん…ほんとだ。おいしい。すごく濃くて甘い」
「そう言えば見たことがない銘柄だけど、結構高かったりするんじゃない?」
「そんなことないですわよ…このジュースは確か1本3万フラルぐらいですので」
「さ、3万フラル…!」
大体近所のお店で売っているジュースは150フラルぐらいなので大体200倍もする値段だった。僕らとクレア先輩は住む世界が違うのだと少し思い知らされた。
「うわぁ…俺一気に飲み干しちまったよ。もうちょっと味わって飲めばよかった」
「大丈夫ですわよアレックスさん。パーティーの会場に行けばもっとおいしいものを用意してますから」
「ま、まじっすか!よーし気合入ってきたぞー。」
「あんた意地汚いわね…」
「あはは…あれ?」
僕はクレア先輩の方を見ると少し違和感を覚えた。クレア先輩はいつも綺麗な肌をしているのだが少し首元を見ると何やら赤い傷か何かが付いていた…。
(何だろう…首に赤い模様みたいなのがある。あれは一体…でも女性にそういうこと言うの結構失礼だよなぁ」
そう思いクレア先輩の首の赤い模様のことを言うのは止めた。
「ちょっとノエル君、クレア先輩のドレスがあまりにも綺麗だからってあんまり首元ジロジロ見ちゃ失礼よ」
「えっ?あの、いや…別にそんなつもりじゃ…」
どうやらジェシカに僕がクレア先輩の首を見ていたのに気付いていたようだ。
「だって、見てたでしょ?」
「いや…見てたっていえば見てたけど…変な意味で見てたわけじゃないよ!」
「あら…もうノエルさんったら…何だか恥ずかしくなってしまいました」
それを言われ顔を赤くしてしまい首元に手を当てるクレア先輩。
「結構ノエル君ムッツリなのね」
ジェシカに不本意な形で誤解をされてしまった。
「本当に違うんだけどなぁ…」
「あっ!あの大きなお家がクレアの家?」
アイリがそう言うと大きな敷地の建物が見えてきた。
「えぇ…そうですわ」
「すげー一体どれぐらいの敷地があるんだ…?」
さすがは王族が住む家、敷地の面積も桁違いに凄い。
「クレアっていつもここから学校に通っているの?」
「えぇそうですわよ。門から玄関までが遠いので基本は車移動ですわね」
「へぇー」
確かにこんなに敷地が広いと家の中ですら移動は大変そうだ。
「私てっきり昔はクレア先輩はお城に住んでいるかと思ってたわ」
「居住スペースは確かにありますが、フィールランド城は基本的にはお仕事で行くだけで住んではいないですね」
屋敷の門が開き敷地内に入っていく。そして今日のパーティー会場であるクレア先輩の家についた。
「さぁ、みなさん着きましたよ」
そう言うと運転手の人が降りてドアを開けてくれた。
「どうぞ」
「あっすいません」
そう言うと僕達は車を降りていった。すると降りた先にはクレア先輩と一緒によく見かける執事の人が待っていた。
「皆様、お待ちしていました。会場へご案内いたします」
「こんにちは、今日はアイリのためになんかパーティーを開いてもらっちゃって…」
「いえいえ、クレア様も今日の日を楽しみにしていましたので。今日は是非楽しんでいって下さい」
「はい」
「では、みなさん参りましょう」
「おー♪」
「うふふ♪アイリさんは元気ですね」
クレア先輩と執事の人を先頭に建物の中に入っていく。中に入ると内装はとても豪華で色々な高そうな置物もあった。
「うわぁ…なんかすごいな。ノエル」
「うん、なんか高そうな置物とかあるね」
「ねぇねぇノエル見て見て、なんか変わった置物あるよ」
少し目を離した隙にアイリは何か置物を触っていた。
「あっ!アイリダメだよ勝手に触っちゃ!すいません…クレア先輩」
「うふふ、かまいませんことよ。アイリさんの今触っている置物はそんなに価値があるものではございませんので」
クレア先輩がそんなに価値がないものというのは正直僕らの感覚とは桁外れだというのはさっきの飲み物のくだりでわかった。おそらく何百万フラルとかする置物なのだろう…。壊したら大変だ。
「ちなみにお聞きしますけど…この置物いくらするんですか…?」
「それは私が自分の趣味で作ったものですので0フラルですね」
「えっ…?」
「工作とか結構好きなんですよ私。子供の頃両親にプレゼントしたのを大変喜んでくれましたのでそこに飾っているのです」
何と言うか予想の斜め上の答えだった。
「なるほど、でも本当に売り物みたいですごいですね」
「そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます」
「ねぇねぇクレア!こっちのは?」
「あ…それは…」
アイリ先ほどとは別の隣に置いてある置物に触ろうとすると急に表情が曇りだした…。
「クレア…?」
僕もまずいと思ってアイリを止めようとしたのだが、アイリもそれを察し触ろうとするのをやめた。
「おーいノエル何してんだよ!早く行こうぜ豪華な飯が待ってるんだからさ」
「す、すいません…では皆さんをお待たせしては悪いので…行きましょう」
「あっ…そ、そうですね」
僕は先ほどのクレア先輩の表情が急に曇り出したのが少し気になったが、それ以上は聞かず僕達は会場へと向かった。
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