第30話「殺意」
力に目覚めた日の朝。
いつもの時間…学校に行く前に朝食を食べるのだが相変わらず家族だけはテーブル、ラングだけは床で食事を取らされていた。
「おい!ラング昨日お前トイレ掃除ちゃんとやってなかっただろう!風邪引いたからって家事手抜くとかテメェ舐めてんのか?あぁ!誰のおかげで飯にありつけれると思ってんだ!」
「……」
下を向き黙るラング。しかしそれが気に入らなかったのか激怒した父親は…
「聞いてるのか!テメェ!!!」
コップに入っていた水をラングにかける。それを見て笑う母親と子供のカルーヤ。
「はい…ごめんなさい」
笑顔で謝るラング。
「…?」
「学校に行く前にちゃんとやっておきます」
「お、おう…わかればいいんだよ」
食事を済ませ、そのままトイレ掃除をしに行くラング。
「何だ…アイツ。いつもは反抗的な目をしてくるのに、今日は気持悪いぐらいの笑顔だったな…」
すると母親が…
「なんか昨日あの子夜中1人で笑っていたの聞いちまったんだよね…」
「はぁ…?夜中に1人で笑ってた?何でだよ」
「私が知るわけないだろ!…ったく本当に気持悪い子だね。金さえあればとっとと追い出しているのにさ」
今の朝の時間は本来は学校に行く登校時間なのだが、ラングは学校には行かず学校の方向とは別の道を歩いていた。繁華街でありこの通りはアルスティン王国の貴族達がよく使う道でもあった。
ラングが歩いていると庶民と貴族が何やらもめているようだった。
「お前が私の足をふんづけたせいで私の靴が汚れたではないか!これから大事な客人と会うというのにこれでは恥さらしだ!どうしてくれるのだ!」
何やらぶつかったせいで自分の高そうな靴が汚れて腹を立てている貴族のようだ。
「す、すいません…何卒お許しを…」
しかし商人が必死に土下座しているにも関わらず貴族の怒りが収まる気配がなかった。
「この私を怒らせてここで商売が出来ると思うなよ!お前の店なんて私の力でいくらでも潰せるんだ!」
「そ、そんな…ご、ご勘弁を…」
「どうしても許して欲しいか?」
「…は、はい」
すると商人はニヤリとした。
「ならここで裸になって3回まわってワンと鳴け」
「えっ…」
人間相手に要求することではなかった。もはやこんなクソみたいな奴は生きてちゃダメだとラングは思った。
「おじさん…」
「ん?何だ坊主?」
ラングは癇癪を起こしている貴族に話しかけた。
「許してあげなよ…こんなに謝っているんだからさ…」
ラングは最後のチャンスを貴族に与えた。
「はぁ?お前には関係ないだろ!子供はひっこんでいろ!」
まるで聞く耳を持たなかった…。
「そう…じゃあおじさんが裸になって3回まわってワンって鳴くんだね…」
「…何言ってんだ…コイツ…」
するとラングの目が赤く光り出し、目を合わせていた貴族の目がだんだん虚ろになってくる…
「おじさんが裸になって3回まわってワンって鳴くんだよ…」
「…あ…あぁ、そう…だな」
すると突然貴族が服を道で脱ぎだす。まわりにいた通行人達も何事かと思い振り返る。
「え…!?な、何を…」
商人は何が起きたか理解できずその場から固まってしまう。貴族は服を全部脱ぎ道で3回犬のようにまわって見せた。
「ワン!」
「ククク…」
ラングは笑いが止まらなかった。さっきまで偉そうに商人を恫喝していた姿とは偉い違いだった。
「あれって確かこのあたりの大きな屋敷に住んでいる貴族だよ!何やってるんだ…」
通行人からもドン引きされていた。
そして…裸になって3回まわっている貴族に最後にこう命令した。
「じゃあ…最後は自分の首を息ができなくなるまで絞めようか…」
「…はい」
すると道端で裸になった貴族が突然自分の首を絞め始めた。
「ググ…ガァ…」
息が出来ないようだ。
「な、何だ?急に首締め出して…」
「ちょっ…ちょっと普通じゃないわよ」
見る見るうちに貴族の顔色が悪くなり、そして…最後は呼吸が出来なくそのまま失神した…
「え…ど、どうしたんだ…」
商人は終始状況が理解できないまま頭が混乱していた。
「おじさん」
ラングが先ほど貴族に恫喝されていた商人に話しかける。
「え…な…何」
「良かったね。これでここで商売続けられるじゃん」
「え…」
ラングはそう言い残すと野次馬が出来つつある場所から去っていった…と同時に自分の力を確信した。
「アハハ、最高だねこの力は…。もっと早く素直になるべきだったよ、ククク」
ラングは決心した…。やるなら今日だと…。
そして夕方家に帰りいつも通り過ごす。
「ママ、あいつ今日1日中ずっとニヤニヤしっぱなしで何か気持悪いよ」
カル-ヤがお菓子を食べながら母親に言う。カル-ヤはいつも何かを食べておりブクブクと太っている肥満児だ。しかもラングよりも年上なのに母親のことを「ママ」と呼ぶマザコンだった。
「気持悪いのはいつものことじゃない」
母親がカル-ヤにそう言う。その後父親が仕事から帰ってきたようだ…
「おい!ラングはいるか!」
父親に呼ばれた。
「庭の雑草が多くなっている。邪魔だからとっとと刈れ」
ラングはそう言われ有無を言わさず道具を放り渡された。遅くなるとまたうるさいのでとっととやることにする。
そして、庭を狩っているとあることを思いつく。庭で雑草を刈りながら自分の道具を見つめる。
「そうか…これだ…ヒヒヒッ」
雑草を刈っている鉈を見ながらラングは1人雑草を刈り不気味に笑っていた…。
そして夜…
家族が寝静まった頃ラングは一人むくりと起きた…
(サァ…ラング…アイツラ…ヤッチャオウヨ…)
「あぁ…」
布団からゆっくり出て、屋根裏部屋からゆっくり足音を立てずに家族が寝ている部屋まで歩いて行く…。
ラングが歩いて行く先…そこは父親の部屋だった…。そしてラングの右手にはある物を握っていた。
ギィィィ…
父親の部屋のドアを開ける…。どうやら寝ているようだった。しかし寝たままでは面白くなかった。近くまで寄ってみる…。気持良さそうに寝ていた。ついさっきまで飲んでいたのか、酒の匂いがする。
スヤスヤと寝ている父親の肩をトントンと叩く…。
「ん…ん…うん…だ、誰だ…?」
目をこすりがなら暗い部屋で目を覚ます…。そしてしばらく経ちラングだと気付いたようだ。
「何お前勝手に部屋に入ってきてるんだ…!ったく一体何のようだ?」
すると父親はラングの右手に持っている雑草を刈る鉈に気付いた。
「何だ?鉈なんてこんな夜中に持ち出して…雑草刈り終わったならちゃんと道具を元の場所に戻しておけ」
「…まだ終わってないんだよ雑草刈り」
「あぁ?…ったく使えない奴だな本当にこの役立たずは」
「うん…だから今からやろうと思って…」
「…こんな夜中にか…?」
父親は不思議そう言った。
「じゃあ今からするね…ヒヒヒ」
するとラングは持っていた鉈を父親の方に向け…
思い切り振り下ろし父親の腕に刺した!
「い!痛えぇええええ!テ、テメェ!何しやがる!!!!」
父親の腕に思い切り持っていた鉈が刺さり腕から大量の血が噴出していた…。
「コ、コイツ…!良い度胸じゃねぇか!普段の仕返しってことかよ!いいだろう!また以前のように血反吐が出るまでぶん殴ってぶっ殺してやる!」
以前にもラングはこの父親に逆らったことがあるのだが、大人と子供では腕力が違うため返り討ちに合うのが関の山だったがラングにはもはや怖くはなかった。あの力があるから…。
父親は近くにあった酒のビンを持ちラングをこれで殴ろうとした。そして次の瞬間…ラングの目が赤く光る。
「な、何だ!こいつ目が赤く光って…」
そして次の瞬間父親は自分の体の異変に気が付いた。
「か、体が…う、動け…」
ラングの力により父親はピクリとも動かなくなってしまった…。
「雑草は邪魔だから刈らないとね…ククク」
「どうしちまったんだ…俺の…体」
「お前みたいなクズ…生きていちゃいけないんだよ…この世に存在しちゃいけない雑草だ。だから邪魔な雑草は俺が今から刈る」
ラングは父親の髪の毛を引っ張りまわし思い切りその顔面を殴り飛ばす…。
「痛ぇぇ!!」
思い切り殴ったおかげで父親の鼻が折れて鼻血が出てきたようだ。
「ざまぁねえぜ…雑草が…人間の言葉しゃべるんじゃねぇぞ」
その後も足蹴りや腹パンなどじわじわと嬲って行く…。
「ハァ…ハァ…た、助けてくれ…悪かった…これからはもう暴力は振らない…。お前の扱いもこれからちゃんとする…だから助けてくれ!」
するとラングはほくそ笑んだ
「ククク…最後に命乞いか…お前まさか謝ればこの状況で自分の命が助かると思っているのか?」
「なっ…」
父親は絶望した顔になった。
「本当にお前馬鹿だな。もういいや…これ以上雑草としゃべることはない…」
そう言うと動けなくなった父親に鉈を突きつける。
「た、助け…!」
「くたばれクソジジイ!」
そして、思い切り鉈で首を切りつけ父親の喉を斬りそのまま殺した。
「アハハハハ!ざまぁみろバーカ」
首から出た返り血で真っ赤になりながら父親の死体を足蹴りしながらそう言った。
すると…父親を思い切り殴ったせいで部屋が響き、何事かと思った母親と子供のカル-ヤがこちらに来た。
「ちょっとあんた何して…!」
母親は部屋の惨状を見て腰を抜かした…。首元を思い切り斬られ部屋で絶命している父親と、その返り血を浴びにやけてこちらを見るラングの光景が視界に入った
「ママ…どうかした…の!」
子供のカル-ヤもこの惨状に腰を抜かした。人間というのは本当に恐怖に怯えると声が出なくなる。
「クソババアとデブ…一緒に死ね」
「ひっ!こ、こっちに来るなぁぁぁ!この人殺しィィィ化け物ぉ!」
「ママ!怖いよ!助けてぇぇぇぇぇ!」
母親と子供は逃げようにもラングの力によりその場から一切動けなくなっていた。
そして…
ラングは2人をそのまま恐怖で顔が染まっていく2人を鉈で惨殺した…。2人を殺した後、家にあった金目の物をとりあえずかき集める。それが終わると…
「もうこの家に用はねぇ…」
そう言うと家を出るための荷物をまとめ家に火をつけ、そのまま里親の家を後にした…。家は赤い炎で燃え上がっていた…。まるでラングの復讐の成功を祝福するかのようにも見えた。
「さて…これからどうすっかな…」
虐待をしてきた家族に目覚めた力を使って復讐を果たしたラング。彼は一体この先どこへ向かおうというのか…。
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