第26話「一緒にいかがですか?」
「アイリーちょっといい?」
家に帰り、さっそく先輩に言われたリスト作りをするためにアイリに好きなものを聞いてみる。
「いいよー」
「実はさ…今度アイリのパーティーをクレア王女の家でやることになったじゃん?」
「うん」
「でそこでアイリの好きなものとか用意したいから聞いてくれって頼まれたんだけどいいかな?」
「もちろん、いいよ♪何でも聞いて」
アイリの許可を得たのでさっそく聞くことにした。紙には聞いて欲しいリストがあったので順番どおり聞いていくことにする。
「じゃあ行くよ…えーその1…好きな食べ物は?」
「う~んとねーお菓子全般」
「お菓子全般と…その2、好きな曲は何ですか?」
「仮面ストライダーのオープニング曲!」
「その3、好きなタイプは?」
「ノエル以外の男の人には興味ないからノエル!」
「強いてあげるなら?」
「強いてでもないかなぁ」
「まぁとりあえず僕と…その4好きなテレビ番組は?」
「ワクワク島のクマ夫くん!」
「ワクワク島のクマ夫くん…?あぁあの人形劇かぁ。僕が小さい頃からやってたけどまだやってたんだね…ワクワク島のクマ夫くんと…」
同じようにどんどん質問をしていく。そしてついに最後の質問が来た…
「え~とこれが最後だよ。結婚するならどんな人が良いですか?」
「もちろんノエル!」
「えーまた僕…?しょうがない…僕とこれでよし、終わった。ありがとうアイリ」
「ううん、全然良いよ気にしないでいつでも呼んでね」
質問を終えたので書いたリストをチェックしてみる。
「…これはちょっとでもまずいな…」
リストの回答を見てみると食べ物や好きなTV番組などは良いのだが好きなタイプ、恋人にしたいタイプ、結婚するならなど恋愛系の質問は全部僕か僕に関連するものであった。
「これクレア先輩に渡すんだよなぁ…これ見たらアイリが重度のブラコンだと思うよなぁ…どうしよう…」
普通の人間の感覚なら何だこの兄妹気持ち悪いって思うのが普通のはず。いっそのこと回答を変えてしまおうか?
「でも嘘の回答を渡すのもなんか悪いし…しょうがないか」
僕は開き直りこのリストをそのまま渡すことにした。
そして次の日…
「ええとここだよなぁ…」
昼休み、先輩に言われたリストを昨日アイリに質問して出来たため今2年生の教室に来ている。しかし、教室を見渡す限りあの先輩の姿が見えない。
「いないなぁ…。しょうがない、出直すとするか…」
姿が見えないので教室を後にしようとした。すると…
「あら?こんにちはノエルさん」
後ろから声をかけられた。
「はい…?あっ!」
クレア王女ことクレア先輩だった。
「何かうちのクラスご用でしょうか?」
気さくに声をかけてくれたもののやはり少し緊張する。
「いや…あの…実は昨日2年生の先輩にアイリのパーティーで好きなものとか用意するから聞いてきてくれって言われてその…紙を渡されまして、出来たので教室まで行って渡しに行こうかと思ったんですけど、その先輩が見当たらなくて…」
「なるほど…それなら私が頼んだことだから私が直接預かるわね。ご苦労様」
「わかりました。ではこれを」
そう言うと僕はクレア先輩に紙を手渡した。
「はい、確かに」
「じゃあ、僕はこれで…」
「あっ…ちょっと待ってください」
教室から離れようとするとクレア先輩に止められた。
「はい?まだ何か」
「お弁当一緒に食べませんか?」
「えっ?」
いきなり昼食を一緒に誘われ僕は少しびっくりする。
「ぼ、僕と…ですか?」
「えぇ、そうですよ」
さてどうしたものか…断るのも悪いし、かといって断る理由も思い当たらない。ここは穏便に事を進めるためにクレア先輩のお誘いを受けておくべきか…。
「あの…ノエルさん?」
「ま…まぁその…僕なんかで良ければ…ハハッ…こ、光栄ですよ」
ここはクレア先輩の昼食の誘いを受けることにした。
「まぁ、嬉しいですわ。ではさっそく行きましょう」
「じゃあ僕教室に自分のお弁当取ってきますね」
「はい、ではここでお待ちしていますので」
自分のお弁当を取りに教室に駆け足で戻る。クレア先輩を待たせるわけにはいかないからだ。教室に戻りカバンから自分のお弁当を取り出す。すると…
「お…!ノエル今戻ってきたのか?一緒に弁当食お…」
アレックスが僕を昼食に誘おうとする。
「ごめん!先約があるから!」
アレックスが言葉を言い切るか言い切らないぐらいに僕は断りを入れ、その場から走って教室を出て行った。
「なんかすげー急いでたけど…どうしたんだ?」
走って行きクレア先輩が待っている教室の入り口へ戻る。
「お、お待たせしました」
「あら?走って来られたんですか?別にゆっくりで良かったのに」
「いや…なんか待たせるのも悪いかなと思いまして…」
「うふふ…そうですか。では屋上でみなさんが待っているのでそちらへ行きましょうか」
「…みなさん?」
「えぇ。同じ学年の友人達ですわ」
少しほっとした。クレア先輩と2人っきりで昼食を食べるのはさすがに緊張するし、何よりまわりの視線が怖い。
クレア先輩と一緒に屋上に行くとこの前アイリと一緒に学校の庭園で見かけた女子の先輩方がいた。
「すいません、お待たせしました」
クレア先輩が一言屋上で待っていた友人達に謝った。
「いえ、大丈夫です。お気になさらずに…ところで一緒にいるその男子生徒は誰ですか?見たところ1年のようですが?」
「あぁ、こちらこの学校の後輩のノエルさんという方で私が昼食をご一緒にとお誘いしました」
「はい、1年のノエル・クスガミと言います。今日はクレア先輩に昼食を一緒にとお誘いいただきまして…」
「なるほど…わかりました」
「よろしくお願いします」
するとその女子生徒の中に見知った顔の人がいた。
「あっ…!先輩ここにいたんですか?」
昨日アイリのパーティーのために好きなものリストを聞いて渡してくるよう言ってきた先輩がそこにいた。
「ん?あぁそうだ。クレア様と一緒に昼食を取るためにここで待っていたのだ」
「今日昼休みにリスト作ったので渡そうとしたら教室にいなかったので探しちゃいましたよ」
「そうか。それは悪かったな…期限は明日までだったからゆっくりで良かったのだがな」
「早めのほうがいいかなと思って。あっ…リストはクレア先輩に渡しといたので大丈夫です」
「はい、確かに受け取りました」
するとその先輩に僕が渡したリストを見せた。
「す、すいません…クレア様。本来は私の仕事だったのですが」
「構いませんわ。さぁ皆さん一緒に昼食をいただきましょう」
「はい、いただきます」
一同各々各自持参してきたお弁当を広げた。見てみるとみんなかなり豪華なお弁当で、なんというか自分のお弁当を出すのが少し恥ずかしかった。
「そういえばノエルさんがお弁当を持ってくる間作ったリスト少し見せてもらったわ」
「何か間違っていたとことか、わからないことがあったら遠慮なく聞いてください」
「では私も少し目を通させてもらおう…ふむふむ」
クレア先輩達は僕が作ったリストに目を通す。すると先輩方は少し表情を曇らせた。
「…本当にちゃんと聞いたのか?」
「はい…一応…」
「…なんというか君の妹は…ちょっと趣味趣向が子供っぽすぎるというか?」
「そ、そうですね…」
「好きな食べ物はお菓子全般、好きな曲は仮面ストライダー、好きな番組はワクワク島のクマ夫くん…」
「あら、かわいいじゃないですか」
クレア先輩のフォロー?が少し入る。
「それよりももっと気になるのが…好きなタイプはノエル、好きな芸能人はいないけどノエルが芸能人になったらノエル、恋人にしたいタイプはノエル、結婚するならノエルってこれは…」
一番聞かれたくない所を突かれ少し変な汗が出てくる。
「なんか犯罪の匂いがするわね…」
「重度のブラコンなんでしょうかね」
「うっ…」
一緒に昼食を共にしている先輩方のきつい言葉が胸に刺さる。確かにそう思われても仕方ないのだが…
「いいじゃないですか?兄妹仲が良いというのは」
またクレア先輩のフォロー?が入る。どうやらクレア先輩は少し一般の人とは価値観が結構ずれているようだ。まぁ王族なので当たり前といえば当たり前なのだが。
「まぁ…そうなんでしょうけどこれは仲が良い以上の関係が私にはこのリストの回答から感じられるのですが…。まぁ良いか…だがこれなら十分用意できますねクレア様」
「えぇ、そうですわね」
「あの…あんまり気を使わなくて良いですよ。そんな…元々はこじんまりとやる予定だったので…」
元々は僕のまわりの知り合いでアイリとみんなでちょっと話をする予定のつもりだったのだが、いつの間にかクレア先輩が加わりこんな大事になっている。
「そうはいかん。クレア様が直々に家でやるパーティーなのだ。クレア様のためにも恥をかかすわけにはいかない」
「はぁ…そうですか」
「これを見る限り音楽は十分CDで用意できるでしょう。食べ物も十分近所で揃えられます。あとは…」
クレア先輩と綿密な打ち合わせがいつの間にか始まってしまった。そして僕もついでに聞きたいことがあったのでこの際だから聞いておくことにした。
「あの…すいません」
「どうした?」
「その…服装というのはどうすればいいですかね?やっぱりちゃんと正装とかしていったほうがいいんでしかね…?」
「別に服装はこちらで特に規定はしていない。普段着でも構わないし、正装で来たければ別に構わない」
「そうですか」
特に規定はないとのことなので安心した。
「あの…あとは呼ぶ人数なんですけれど…これから増える可能性も」
「それも構わん…大体200人までは余裕で出来るパーティーを開けるようこちらも予定している」
「に、にひゃく…?」
どうやら僕が想定していた以上のパーティーにこれはなりそうだ…。さすが王族、僕ら一般庶民が考えているパーティーとは規模が違った。
「あら?もうこんな時間ですわ」
時計を見てみると昼休みがもうすぐ終わる時間に差し掛かっていた。
「続きは授業の終わりにでもしましょう」
「そうですね。では私たちはこれで行く。何かあったらまた私に連絡するが良い」
クレア先輩達はお弁当を片付け、屋上を後にしていこうとした。
「なんか、200人も出来るパーティーなんて…だんだん緊張してきたぞ…」
そう独り言をつぶやき僕も屋上を後にした。
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