第24話「王女ではなく先輩として」

クレア王女が僕の名前を呼んだ。かなりびっくりした…。この学校にクレア王女が通っているの知っているだが学年も違う上に普段会うこともなく、ずっと遠い存在の人だと思っていただけにいざ隣に座っているとなると緊張してしまう。


「な、何で僕の名前を…」


「あら?お忘れですか?一度お会いしたことがあると思いますが…?」


そういえばそうだった…確かにクレア王女とは一度学校の庭園で話をしたことがある。僕がお弁当を忘れてアイリがこの学校に届けに来たとき、結局そのまま帰らずお弁当を一緒に食べてその後、アイリがどっかに行き探す時にクレア王女で出会った。


「えぇ…あの時は妹がなんかお世話になったみたいで…」


「いえいえ、とても面白い方でしたわ♪」


「あ…そ、それはどうも…」


すると隣に座っていたメリッサに肩をトントンと叩かれた。


「ノエル君ってクレア王女と知り合いなの?」


「う、うん…まぁ一応」


「ところで…先ほど何か皆さんで楽しくお話をしていたようですが…一体何の話をしていたんでしょうか?よければ私も混ぜていただけませんか?」


「えっ…!?」


僕はクレア王女の提案に少し驚きを隠せなかった。


「あら?何か都合でも悪いのでしょうか?」


「え…い、いや別にそんなクレア王女が気にするような大した話ではないですよ」


するとクレア王女が…


「それと…ノエルさん。お願いなのですが、そのクレア王女とここで呼ぶのはやめていただけませんでしょうか?」


「えっ…」


「確かに私はフィールランド王家の一族の王女なのですが、ここでは皆さんと同じ生徒であり学友なのです。なのでクレア王女ではなく、クレア先輩と呼んではいただけないでしょうか?これはノエルさんだけでなくノエルさんのまわりのお友達も同様にそう呼んでいただけませんでしょうか?」


「あ…は、はいわかりました。ク、クレアせん…ぱい…」


少したどたしいがちゃんと「クレア先輩」と面と向かって言えた。


「うふふ、ありがとうございます♪では改めてお聞きしますが一体何の話で皆さんと盛り上がっていたんでしょうか?」


余程気になるのかクレア先輩はまた聞いてきた。まぁどうせ本当に大した話ではないので別に構わないのだが。


「今度うちの妹にみんなと会いたいから集まってなんかパーティーか何か開こうって話を実はしていて…」


「ノエルさんの妹さん…?というとアイリさんのことでしょうか?」


「そうです。でどうせなら大人数でやったほうが盛り上がるんじゃないか?ってことで話をしていたんですけどみんなそんな自分の家に大人数は呼べなくて…どうしようかなって話をしていたところだったんです。そうだったよね?ジェシカ」


「う、うん」


試しに話しを振ってみたがどうやらいつも明るくてコミュ力も高いジェシカもこの状況に緊張していたようだ。


「なるほど、そうだったんですね」


「はい」


するとクレア王女が人指し指をおでこに付け何かを考え始めた。


「何か私も力になってあげたいのですが…んーそうですね…」


「あぁ別にそんな良いですよ…僕達だけで何とかしますから。クレア先輩は気にしなくて…」


「そうです。こうしましょう!」


する突然手をポンと叩き何か閃いた仕草を見せた。


「?」


「私の家でアイリさんの歓迎パーティーするというのはどうでしょうか?」


一瞬時が止まった。クレア先輩もといクレア王女が自分の住んでいる家に僕ら一般庶民を呼ぶ…?僕は思考が停止してしまった。


「え!?」


「ゴホッゴホッ!」


アレックスはさっきのクレア先輩の一言で食べてた料理を喉に詰まらせてしまったようだ。


「ちょっ!ちょっと大丈夫アレックス?」


胸を叩き水を飲み、食べたものを流すアレックス。無理もない。突然自分達が勝手にやるパーティーをフィールランド連合王国の王女の住んでいる家でやるとなれば食べ物の1つや2つ喉に詰まらせるのが普通っていうもんだ。


「あの…今なんと…?」


もしかしたら聞き間違いだったかもしれないのでもう1度聞いてみる…。


「えぇ、ですから私の家でアイリさんのパーティーを開くというのはどうでしょうか?」


どうやら僕の聞き間違いじゃないらしい。


「我が家でしたらたくさんのお友達が呼べるので。いかがでしょうか?」


さてどうするか…。無下に断るのも悪いし。さすがにクレア先輩の家でアイリのパーティーを開くというのはさすがにちょっと気が引ける。そもそも何でクレア先輩はそんな提案をしたのかも意味不明だ。


「う~ん…いやそのー」


うまく言葉が出なかった。


「実は私、もう一度アイリさんとお話をしたくて…是非私もそのアイリさんに会うパーティーに参加したいです。なので私の家でそのパーティーをやるというのは我ながら名案だと思いますが?ダメでしょうか?」


クレア先輩が突然そんな突拍子もない提案をした理由が少しわかった。でもクレア先輩とアイリは一体どんな会話をしたのか検討もつかない…。


「う~ん…ちなみにみんなはどう思う?」


アレックス、ジェシカ、メリッサはクレア王女ことクレア先輩の家でアイリのパーティーを開くのをどう思っているのか聞いてみる。


「俺はどっちでも…みんなに従う…かな?」


「私は別に…みんなが良いなら」


「わ、私も…かな?」


何という全員が他人任せな返事…。みんな断りにくいのか曖昧な返事だった。


「ということはみなさん賛成ということでよろしいのでしょうか?」


クレア先輩が満面の笑みでこちらに聞いてきた。


「ア、アイリ本人に聞いてみないと…」


「そ、そうよね!主役のノエル君の妹の意思を尊重しないとね!」


僕はさっと携帯を取り出しアイリにメールをして聞いてみることにした。


「確かに主役のアイリさんの意思が一番重要ですわね」


「ちょっとメールで聞いてみますね…ええとそのパーティーやる場所の候補としてクレア王女の家で……これでよしと」


メールを打ちアイリ宛に送信をした。するとものの数分で返信が返ってくる。返信されてきた文章を見ると


’もちろんOK!クレアの家私も行きたい!’と書いてあった。


「でノエルさん。アイリさんのお返事はどうでしたか?」


まわりに返信の内容を見せた。


「ということはOKということですね!ウフフ…今度の休みが楽しみですわ。お食事などは全てこちらで用意させていただきます。では次の日曜日のお昼時にノエルさんのお家に集合して家の者が迎えに行きますので」


結局アイリのパーティーはクレア先輩の案で行く事が決まった。


キーンコ-ンカーンコ-ン


「あら…お昼休みが終わりのようですね。では私はこれで失礼いたします。ごきげんよう♪」


嵐のように去っていってしまった。


「どうする…?」


アレックスが小声でそうみんなに言った。


「どうするって言ったって…まぁ行くしかないんじゃない?」


「うん…でも服とかちゃんとしたの着ていかなきゃいけないのかなぁ…」


全員が気が少し重くなり、片付けをして教室に戻った。


そして学校が終わり帰宅する…


ガチャッ


家に着き玄関を開けると同時にアイリが走ってきた。


「おかえり~♪」


アイリが玄関に迎えに来てくれる。


「ただいま」


「エヘへ♪ノエルありがとうね。次の休みノエルの友達に会うのとっても楽しみ♪」


アイリはやたら嬉しそうだった。でも僕は少し気が重い。何せやる場所はこの国の王女のクレア・フィールランド王女の家でやるのだから。


「うん、そうだね(まぁ僕はかなり緊張と気が重いの方が割合高いけど…)」


「今日は夕食奮発してアイリ頑張っちゃうよ♪」


「ありがとう。期待しているね」


「うん!期待してて!」


アイリはそう言うとキッチンの奥へと再び戻って行く。さて僕もアイリに恥ずかしい思いをさせたくないからちゃんとクレア先輩の家に行くためにちゃんと準備しておかないと…。服装とかってちゃんとしたほうがいいよなぁ…みんなどんな服着ていくんだろう。やっぱりちゃんとした場所に行くわけだからタキシードみたいなの着ていったほうがいいよなぁ…。家にあったかな?あとでじいちゃんが帰ってきたら聞いてみよう。

僕は自分の部屋に戻り、クレア先輩の家に行く準備を考えることにした。

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