第23話「約束覚えてる?」

午前の授業が終わり昼休み。今日はアイリがお弁当を作り忘れたというので昼食は食堂で取る事にした。机の上の教科書をしまい、食堂に行こうとした。


「ノエル、お前は今日食堂か?」


アレックスが僕にそう聞いてきた。


「うん、今日はお弁当持って来てないから食堂に行こうかなと」


「俺も食堂行くから一緒に食おうぜ」


2人で食堂に向かい歩いて行く途中廊下でメリッサともう1人、よく一緒にいるジェシカの2人組に遭遇した。


「あれ?ノエル君とアレックス君も食堂組?」


ジェシカがそう僕らに聞いてきた。


「うん、そうだけど」


「私とメリッサも食堂なんだ。ねぇメリッサ?…ほらメリッサも誘いなさいよ。ノエル君のこと好きなんでしょ?チャンスよチャンス」


何やら後半の方はよく聞こえなかったがジェシカがメリッサのことを肘で体突いていたのは見えた。


「う…うん…そのさ…良かったらノエル君達も一緒にどう?」


「別に良いけど」


「良かった!じゃあ一緒に行きましょ!」


そう言うと4人で食堂に向かうことにした。


すると…


食堂前の食券機の前には中々の生徒達が並んでいた。いつもの光景なのだが最近はアイリのお弁当で昼食を済ませていたので食堂に並ぶのは久しかったりする。なので少し面倒臭かったりする。


「うわぁ…結構並んでいるな」


「うん…席大丈夫かな」


そう言うとジェシカが


「じゃあさ誰か2人で4人分席確保して置いてよ」


「えっとー、じゃあ誰が席を…」


「あっじゃあ俺が…」


すると咄嗟にジェシカが遮る様に…


「あ!じゃあノエル君とメリッサ2人で席確保して置いてよ!ノエル君とメリッサ何頼む?」


「何でノエルとメリッサ何だ?」


「いいからあんたは黙ってなさい!(ほんとアレックスは空気が読めないわね!)で…2人はメニュー何にする?」


「えーと…じゃあ僕…Aランチで」


「わ…私も同じので」


「はい!じゃあ2人共Aランチね」


そう言うと僕とメリッサは2人にお金を渡し、席を確保しに行った。しばらく一緒に歩いて行くと4人分のスペースがあったので確保する。


「あっここ空いてるから…確保しちゃおう」


メリッサと僕で無事4人分の席を確保し待つことになった。するとメリッサが話しかけてくる。


「ねぇねぇノエル君」


「ん?」


「今度の休日空いている?」


「今度って…今週の学校の休みの日のこと?」


「うん」


といってもまだ学校は始まった週の初日なのでなんとも言えない。


「ちょっと…まだわからないかなぁ」


「そうなんだ…まぁちょっと実はね。ちょっと前にジェシカと約束したの覚えている?」


「ちょっと前?」


(…いつのことだろう。そもそもジェシカと約束なんて何かしたかな?)


「もしかして覚えてない?」


「う~ん…」


「お待たせー。ちょっと探すの手間取っちゃった」


考えているとジェシカとアレックスがこちらを見つけ席にやってきた。ジェシカとアレックスが2つずつ料理を持ってきて僕らが確保していたテーブルに着いた。


「はい、ノエル君とメリッサのAランチおまちどう様」


僕らの前に頼んでおいたAランチを置いてくれた。


「ありがとう、アレックスとジェシカ」


「おう、ノエルとメリッサも席確保しておいてくれてありがとな」


「じゃあ、食べましょうか」


「うん、いただきます」


「ところで2人共何話してたの?」


皆それぞれ自分が注文した昼食にに手をつけはじめるとジェシカが会話を切り出した。


「あっそうそうノエル君があの時の約束覚えてないっぽくて」


さっきまでしていたメリッサとの会話の中でジェシカとした約束というのがあったがどうしても僕には思いだせなかった。そういうこともありちょっと気まずい。


「えーそうなんだ。あはは…まぁでも無理もないかなぁ」


「う、うんごめんねジェシカ。何か僕約束したっけ」


「まぁ約束って程でもないんだけどね。ほらお弁当の時のこと覚えてる?」


「お弁当の時…?」


お弁当の時?ここ最近お昼はお弁当だったので、言われても抽象的すぎてわからなかった。


「う~ん。全く…」


するとアレックスが…


「あぁ!俺思い出した。てかそれって正確に言うと俺とノエルの約束じゃないか?」


「まぁ、そうとも言えなくはないわね」


「アレックスとの約束…?」


ますますわからなくなってしまった。


「ほら、お弁当の時何かノエル君の恥ずかしいお弁当あったの覚えている?なんかお弁当にノエルダイスキってデカデカと書いてあったお弁当あったじゃない?」


そういえばちょっと前にそんなことがあった気がする。あの時は恥ずかしかったなぁ。


「でその時にさ、アレックスがそのお弁当を作った妹に会わせてくれって言ったの覚えている?」


「あっ…」


なんとなくだが覚えている。でも結局昼休みのあの時は今度アイリに聞いてみるって言っただけでその後アイリにも何も聞いてないし、みんなも何もその後何も言わないから結局約束はうやむやになったのは覚えている。でも結局あの後日僕がお弁当を忘れて、その後アイリが直接学校に来て騒動になってなんかそれでアイリの存在がばれたからあの約束はもうある意味果たしたようなものだと思っていた。


「ちょっと思い出してきたみたいね。でそのあと私がじゃあノエル君の妹の歓迎パーティーでもやって会おうよって言ったのよ」


「うん、思い出した。でもそのあと妹に聞いてみるって言ったよ」


「で…肝心のノエル君の妹の返事はどうなの?」


「それが…結局まだ聞いていなくて…」


「あっそうなんだ」


少し申し訳なく思った。


「ちょっと今聞いてみるね」


携帯電話をさっと取り出しアイリにメールをする。


「えっいいよ別に。今すぐじゃなくても…」


「まぁさすがにね…僕もそう言っちゃったし…ええと、今週の休みに学校の友達がアイリに会いたがっているんだけど一緒にパーティーやらないかって言ってきているんだけどアイリは大丈夫?…とこれでよし」


「そ、そう?まぁ無理はしないでね」


「うん、もちろん」


「ちなみにさノエル君の妹の名前何ていうの?」


「ん、アイリっていうんだ」


「アイリちゃんか…へぇ…。でさもう1個質問なんだけど良い?」


「何?」


「その…ノエル君の妹ってやっぱりあの時授業中に窓から入ってきた子?」


まぁ当然ながらあの状況で僕にお弁当を渡してきたから大体のクラスメイトが僕の関係者だというのは間違いなく気付いたはず。特にアレックス、メリッサ、ジェシカは僕に妹が出来たということを知っているのでアイリのことを妹だというのは知っているのは当然のことだった。


「うん、まぁ…一応そうだね」


僕は特にごまかすことなくジェシカの質問に対して答え肯定をした。


「やっぱりそうだったんだ…でもあの子歴史の授業中にノエル君にお弁当を渡した後、窓から飛び降りて出行っちゃたからすごいびっくりしちゃった。あの子って何か特別な訓練か何かしているの?」


さて、困った質問だ。さすがに聞かれると思っていたがどう答えるべきか。何か特別な訓練と言えば何の訓練と聞かれその訓練もまた何か考えなければいけなくなり嘘に嘘を重ねるということになり破綻しかねない。かといってヒューマノイドだということは絶対に知られてはいけないのでどうするか。


「いや別にそういうことをしていたっていうのは僕は特に聞いていないかな…」


「えっそうなの?でも4階の窓から飛び降りて普通に着地して平気そうに歩いてたんだよ?」


「う、うん…そうだね」


さてこのジェシカの質問どうやり過ごすか…。するとアレックスが口を開く。


「そう言えばお前の妹何か変わった服着ていたよな」


それだ!そう、服だよ。あの服と靴が何か特殊なもので出来ていて、それで学校の4階の建物の高さから飛んでいても平気だってことにすれば良いんだ!


「うん。じ、実はね…あの妹の服はねうちのおじいちゃんが今作っているもの凄い耐衝撃用の服と靴なんだよ!」


いいぞ、我ながらナイスアイディアだ。うちのじいちゃんが研究者って知っているから何も違和感がない。


「へぇ!ノエル君のおじいちゃんが作った服と靴なんだ…。すごいね…あの高さから飛び降りて平気でいられるなんて…。どんな素材で出来ているのか気になっちゃう」


「さ、さぁ…さすがにそこは企業秘密じゃないかな…?」


「まぁそうだよね。もし普通に発売されたらちょっと欲しいかも」


そんな会話をしているとアイリから僕の携帯にメールの返信がいつの間にか来ていた。


「あっ妹からメールが返って来ていた。ちょっと今見てみるね…ええと…」


メールの内容は、


うん!もちろんいいよ!ノエルの学校の友達に会えるって私楽しみ♪何か用意とかしたほうがいいのかな?


と書いてあった。まぁつまりはアイリの返事はOKということだった。


「どうだった?」


「うん、むこうはOKみたいだった」


「オッケー!じゃあ決まりね。メンツはノエル君は当然として…私とアレックスとメリッサあとは誰誘う?」


「えっ!あとはって…そんな大人数呼ぶの?」


「だってせっかくのお祝い事じゃん。ノエル君の妹も大人数のほうが喜ぶと思うなぁ」


「う~ん…」


さて、また困った。僕は精々この4人ぐらいだと思ったので家に来てちょっとした集まりだとおもっていたのだがそれ以上の人数となるとちょっとじいちゃんや家の大きさの事情もあるし困った。いいよと言った手前断るのも悪いし、さてどうするか。


「とりあえず家はそんな大きくないし、大人数入れるわけじゃないからこれ以上人を呼ぶってなるとちょっと僕の家でやるのはちょっと無理かなぁ」


「そっかぁ…私の家も無理だし、じゃあメリッサの家は?」


「家もちょっと…そんなに大きくないし」


「アレックスは…て無理よね」


「おい、何で俺だけ聞く前に無理なんだよ!いや…まぁ実際に無理だけどな」


「いや、何というかアレックスの家に女子が3人以上行くのがありえないかなって」


「どういう意味だそれ」


まぁ冗談はさておき場所をどうするかだ。結構な人数が集まれて飲み食い出来て騒げる場所となるともはや他人の家じゃ無理そうだ。


「いっそのことファミレスとかカラオケとかで集まってそこでやるか?」


「う~ん、まぁそれでも良いんだけどね…」


「隣、よろしいですか?」


みんなで場所決めをしていると、さっきから僕の隣が1つ空いていたのでそこに座りたい人が来たみたいだ。


「あ、すいません。どうぞ」


料理の乗ったトレ-を少しずらし、スペースを空ける。


「ありがとうございます」


しかし顔をあげると他の3人が少し驚いた顔をしている。


「ん?どうしたの…みんな」


そう思い席を譲った相手の方を向くとなんとクレア王女がそこにいた。


「え…あの…クレア王女様…ですか?」


「はい…そうですよ。ノエル・クスガミさん…」


普段会話をすることのないクレア王女が食堂で隣の席に来たというかなり不思議な光景に僕達は戸惑いを隠せなかった。

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