第20話「背後」

映画館へと向かっていくノエルとアイリ。


「あっアイリ、映画館の中は静かにしなきゃ他のお客さんに迷惑になるから騒いじゃダメだよ」


「うん、わかった」


「えぇと、多分この辺だと思うけど…」


携帯を確認しながら映画館を探すノエル。


「あっあったあったここだ。」


フィールランドシネマシアターと看板には書いてある。中々大きい映画館だ。ここら辺の映画館では一番大きいらしい。


「じゃあ入ろうか」


「うん」


映画館の中に入りさっそくどの映画を見るか2人で決める。


「アイリはどんな映画が見たい?」


「う~んとね…面白いのが良いかな♪」


かなり大雑把な答えだった。そりゃ僕もつまらないよりは面白い映画のほうがいいけど。


「えーと今やっているのは、ハードデイズダイナマイトっていうこれは…アクションモノだね。あとは100年の恋物語…これは恋愛ものかぁ。ほかは…」


映画館もかなりの大きさで上映している映画の数もかなり多いため迷ってしまう。


「あっノエル、私これ見たい」


アイリが一つの映画をさす。


「どれどれ…仮面ストライダ-悪魔城の怪人大決戦…」


子供向けの特撮ヒーローものだった。たしかこれは夕方にやっているのを知っている。実を言うと僕もたまに見ているので知っている。結構アニメや特撮ヒーローは結構詳しいのだ。


「アイリ、これ子供向けのヒーローものだけどいいの?」


「うん、私これが見たい!これがいい!」


キラキラした目でこちらを見てくる。余程この映画が見たいのだろう。


「わかった。じゃあこれを2人で見よう。ところでアイリはこれ知っているの?」


「うん、知ってるよ。夕方やっているの私見ているんだーエヘへ♪」


なるほど、アイリはこういうヒーローものや子供向けのものが好みのようだ。普段の言動や行動などから推測されるにまだアイリの精神年齢はおそらく8歳~10歳程のものと推測される。ヒューマノイドという器という体のせいで僕と同じぐらいの年齢に見られるがアイリはまだまだ子供だ。だからこそ僕がしっかりしてアイリの物凄い能力やパワーを悪いことに利用されないように気をつけなくちゃいけない。


「えーと上映はもうすぐか…じゃあいまのうちにチケット買いに行こうか」


「うん」


チケット売り場まで歩いて行き、窓口のヒューマノイドドールがいたので話しかける。


「あっすいません、仮面ストライダ-悪魔城の怪人大決戦のチケットの大人2枚欲しいんですけど…」


「ハイ、カシコマリマシタ。オ席ハドコニイタシマスカ?」


「えーと…アイリどこが良い?」


「どこって?」


「映画を見る席だよ、選べるんだよ」


「そうなんだ。えーとじゃあね…ココ!」


アイリが指を指したのは真ん中よりちょっと前ぐらいの席だった。中々見るには良さそうな位置だ。


「じゃあC-45と46で」


「カシコマリマシタ。オトナ2マイC-45ト46デ3000フラルニナリマス」


財布からお金を出し窓口に渡す。チケット2枚を受け取りアイリに1枚渡す。


「じゃあアイリ行こうか。その券は映画を見るときに入り口で渡す必要があるからちゃんと持っててね」


「うん、わかった」


ロビ-の椅子に腰をかけ休憩する。するとアイリがキョロキョロまわりを見回していた。初めての映画館できっと物珍しいのだろう。するとアイリが…


「ねぇねぇノエルあれは?」


アイリに袖を引っ張られ聞かれる。


「ん?あぁあそこは物販コーナーだね。映画のパンフレットとかグッズとか売ってるんだよ」


「へぇ、じゃあその向こうのは?」


「あそこは軽食販売コーナーだね。映画館の中で食べれるお菓子とか飲み物を売っているんだよ」


「そうなんだ」


「何か買う?遠慮しないでいいよ」


「う~んとね…さっき食べたからいいかな」


ロビ-でそんな会話をしているとそろそろ上映時間が近づいてきた。時計を見ると上映時間の15分前と入るには丁度良い時間になっていた。


「アイリ、じゃあそろそろ行こうか」


「うん、映画って初めてでドキドキしてきた♪」


上映場所の番号を確認し歩いて行く。


「ええと…あったここだ」


上映場所に入り、席の番号を確認しながら進んで行く。


「C-45と…あっここだね。アイリは僕の隣の46だよ。じゃあ座ろうか」


「うん。うわぁ…それにしてもなんか椅子がいっぱい傾斜に並んでてすごい広いね」


子供向けの映画ということもあり子供連れの親子のお客さんもそれなりに多い。あとは大人だと特撮マニアっぽい大人や一人で来ている女性などもおり意外にも客層が様々だ。そして明るい部屋の中が徐々に暗くなって行く。


「あっ、アイリそろそろ始まるよ」


「ワクワク♪」


映画の開始のブザー音が鳴ると、まずは映画の予告が始まりいよいよ本編が始まる。内容は特撮ヒーローでどこからともなく現れる謎の正義の味方仮面ストライダー、今日も世界を脅かす世界征服を企む悪の組織と戦うというスト-リーだ。

そして…物語は中盤にさしかかり


「フフフ!かかったな!仮面ストライダー!貴様に葬られた怪人軍団を復活させこの悪魔城を貴様の墓場にしてくれるわ!」


敵役のドクロ博士というキャラが台詞を言う。


「何!?怪人軍団の復活だと!」


「蘇れ!仮面ストライダーに破れ無念で散った怪人達よ!


「キエエエエエ!」


爆煙と共に出てくる無数の怪人達。子供向けとは言え中々迫力ある演出だった。そして怪人軍団に孤軍奮闘で戦うストライダー。このままではやられるというところで…


「待てぇぇい!」


「ん!?誰だ?」


もう少しで仮面ストライダーを倒せそうな場面で別のヒーローの助太刀が入る。


「仮面ストライダー零!」


「あなたは…先代の…仮面ストライダー!」


どうやら仮面ストライダーの師匠が助けに来てくれたようだ。


「我が弟子よ、今助けるぞ!トゥッ!」


するとたちまち怪人達をバッサバッサと倒しにかかる。初登場のヒーローがめちゃくちゃ強いのと一緒でこういうのはおきまりだったりする。そんなに強いなら今まで頑張ってた主役達は何だったの?もうそんなに強いならお前一人でいいじゃんとツッコんではいけない…。


そしてドクロ博士がしびれをきらし、今度は自分自身が怪人に変身して戦う。


「行くぞ、我が弟子!今こそ合体技だ!」


「はい!」


「な、何をする気だ!


「お前の武器ドラゴンソードと俺のドラゴンバスターキャノン!今こそ合体させるとき時」


「こ、これは!」


すると仮面ストライダ-のドラゴンソードと仮面ストライダ-零のドラゴンバスターキャノンを合体させアルティメットドラゴンウェポンとなった。


「行くぞ!アルティメットドラゴンアタァァァック!」


「グギャアアアアァァァ!!!」


見事攻撃命中しドクロ博士が爆発して死んだ。世界征服の野望は見事2人のヒーローによって討ち破られたのだ。最初からそんな強力な武器があるなら最初から使えよ!とは決してツッコんではいけないのはお約束…。めでたしめでたし…というところで映画は綺麗に完結した。映画が終わり部屋の中が明るくなった。


「あー面白かった。途中どうなるか冷や冷やしちゃったよ」


満面の笑みを浮かべておりどうやらアイリは映画に満足してくれたようで良かった。


「うん、そうだね」


「やっぱ合体ってすごいんだね!ピンチの時こそヒーローは合体して協力しあうんだね!それにしても仮面ストライダ-に師匠がいたなんて驚きだなぁ!」


興奮冷めやらぬ感じでアイリがずっと映画の話をしている。こんなに喜んでくれたなら連れて来た甲斐があったというものでこちらも嬉しくなる。


映画館から出ると少し夕方前なので帰るにはまだ少し早い時間だ。


「ねぇ、ノエルこのあとどうする?」


「そうだなぁ…」


帰るにはまだ早い時間だし、せっかくなのでちょっと駅ビルの方に行って見たいと考える。


「駅のほうにショッピングモールがあったからちょっとそっちのほうで何か一緒に見ようか」


「はーい」


ノエル達が映画館から離れていくと遥か後ろから付いてくる人影があった…。


「ターゲットが映画館から出た…今のところ特に問題はない…」


無線で誰かだと連絡を取っているようだ。


「了解、最終的な現場の判断はそちらに任せる…」


「了解…」




駅の方に向かっていくノエルとアイリ。しかし、ノエルは気付いていないもののアイリにはすでに尾行されていることに気付いていた…。


「さてこの信号を渡ってと…」


「ねぇノエル…」


「ん?どうしたの?アイリ」


かなり神妙な顔で僕を呼んだ。


「さっきから誰かにつけられているの気付いた…?」


「えっ…?」


少し緊張が走った。


「いや、全く…どれぐらい前から?」


「わからない…けど映画館に入る前からずっと同じ気配を感じるの」


後ろを見るが全くそんなつけられている感じなどはしないが、おそらくアイリがそう感じるのならそうなのだろう。


「もしかして…ヴィオラル達の仲間っていう可能性は?」


「わからない…けど私を捕獲するなら尾行する意味はあまりないと思うし、違うと思う。こっちに攻撃する感じもしないしずっと監視しているだけみたい」


確かにそうだと思った。もしヴィオラル達の仲間でアイリを捕獲するだけなら尾行する意味があまりないと思うし、こんな人通りが多い場所でヴィオラル達も騒ぎは起こせないはずだ。


「どうするアイリ…?」


「私に任せてノエル」


そう言うと手を握り駅とは反対の方向へ向かい、人通りの少ないほうの道へと進んでいく。そのまま手を握り裏路地の方へと歩いて行く。


「(確かに誰か付いてきている感じがする…一体、ヴィオラル達じゃなければ何のために…)」


裏路地の閑散としたほうへと行きアイリと一緒にどんどん進んでいく。そしてアイリと2人で二手に別れ曲がり角にある壁に隠れた。


すると…


一人の黒いコ-トを着て帽子を被った男が路地裏に入り込んできた…。


「(あいつか…ん?待てよあいつは確か…そうだファミレスで…)」


顔は相変わらず良く見えないが間違いない…。ということはファミレスもしくはその前から着いて来たと予想できる。


そしてこちらの曲がり角に入り入ったところ、尾行してきた男の後ろにアイリがまわりこんだ!


「どういうつもり?私たちを尾行してきて」


アイリが黒いコ-トの男に強い口調で話しかける。


すると黒いコ-トの男が…


「何のことだね?私はただこの道を歩いてきただけだよ…お嬢さん」


「嘘ばっかり、ずっとついて来ていることにこっちが気付かないとでも思ったの?」


アイリがそう問いただすと男が観念をしたのか…口を静かに開いた。


「やれやれ…どうやら嘘は通じないみたいだな。ノエル・クスガミ君もそこにいるのだろう?」


僕の名前を呼んだ。どうやら僕のことを知っているようだった。


「どうして僕の名前を…」


僕は隠れていた角の壁から体を出した。


「さぁ、逃げれないわよ…何が目的なの?」


すると男が帽子を取ると落ち着いた口調でこちらに話しかける。顔から推測されるに40歳半ばぐらいの中年男性だった。


「はじめまして…」


果たしてノエルとアイリを背後から尾行してきたこの男は一体何者なので何が目的なのだろうか…?

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